コーポレートガバナンス・コードが社外取締役に求める要件と会社側の説明責任

20210203 「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第24回)では「ESG要素を含む企業の持続可能性」「投資家と企業との対話(企業年金基金と企業との利益相反)」がメインテーマでした。

CGコードに沿った内容で、一層、「資本コスト」「事業ポートフォリオの見直し」や「見直しのプロセスの実効性」「CEOの選解任」が強調され分かり易くなった印象です。

■つまり、社外取締役の求められる要件も大きく変化し、極論すると、CGコードやガイドラインが守れていない≒社外取締役が全く機能していない。との印象を与えてしまうリスクがあるという事です。

これまでは、会社側も社外取締役にはこれまでの経験値や専門性のみを期待しているとの説明がなされてきて、投資家も会社もそれでいいよねって言った雰囲気がありました。

■その一方、CGコードやガイドラインは、そのような考えを明確に否定していて、社外取締役も経営側の立場として、「資本コスト」「事業ポートフォリオの見直し」や「見直しのプロセスの実効性」「CEOの選解任」について積極的に議論できる能力を求めています。

このような議論をすると、「なんか綺麗ごとを言っているな」というご意見もあるかもしれません、ただ、関西電力など、何か問題があったりして「指名委員会等設置会社」を選択した場合は、まあいいじゃないかというロジックは完全に否定されます。

理由は社外取締役の人数の絶対数が社内よりも多くなる。そして、経営を監視する絶対的な責任がある。というこれまでCGコードやガイドラインで説明されてきた当たり前の事に対してその言い分は対抗できなくなるからです。

■例えば、特にエネルギーセクターでは、プロジェクト毎の資本コストがどうなっていて、何が上手くいっていないかという事を自分で考えるというアナリスト的な能力がマストになってくる。ROEを自分で計算できなくても判断できる能力です。

■また、大局観も求められます。エネルギーセクターでは原発を含めて日本全体のエネルギーコストがどうなって、サプライチェーンがどうなっているのか。化学セクターでは、プラスティクがどれだけ成果に貢献していて、どのような削減が可能なのか、リサイクルするためにはどのような方策が有効で、何が無意味なことか。

水素社会に関してその限界に係る基礎知識と理論的なバックグラウンドなど個人の意見ではなく、科学的に導き出される数値やロジックを理解する能力です。これには会計、高校生程度の物理や化学の知識も一部必要となります。これまでの経験値があるからいいよね!?というレベルからより高い水準の能力が要求される。

■また、会社側もこれに沿った説明義務が生じます。

■例えば、今週コスモエネルギーHDの説明会では、その悪い方が露呈しまいました。

現在のコスモエネルギーは自己資本が充分でない、なので増配できないというのは、会社と市場で共有されているファクトです。数年前から風力発電への投資を加速化させており日本でもトップクラスの一角で、ESG的な観点からも見直され始めて好印象でした。

■ところが、先日アブダビでの石油権益への積極化を発表したその説明が最悪でした。当然CGを理解しているセルサイドは説明会で噛みつきました。

今は石油ではなく寧ろ再エネにすべき。自己資本のない会社が、何故化石の両流に対して追加で出資をするのか?という当たり前の質問に対してクリアに説明ができませんでした。

■その後、会社に真意を問いただしたところ、風力と石化の上流権益では資本コストのハードルレートに2倍程度の差異を設けているとの回答がありました。私の方からは、「次回以降そのように回答しないとまずいですよ。」とアドバイスしておきました。

■このような基本的な質問にすら回答できない≒想定問答集を作っていない≒(内部の)経営陣に資本コストの意識がない≒社外取締役が全く機能していないという印象を与えてしまう。

■極論すると、CGコードやこちらのガイドラインが守れていない≒社外取締役が全く機能していない。との印象を与えてしまうリスクがあるという事です。

以上。

https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20210215.html?fbclid=IwAR2ihLNimButog18joEgrG4DOp_Q4zU3gKUXesjV9W6Mnuj1IhgIPc5nWnQ


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