見出し画像

デザインチームの存在価値が一気にあがったときの話

突然ですが質問です。

あなたのその仕事は、会社や仲間に必要とされていると言えますか?その仕事は、あなたのミッションと一致していますか?あなたの仕事の存在価値を他チームの人が説明できますか?

すべてをできていると答えられる人はとてもすばらしい環境でお仕事をされてると思いますが、自信をもって答えられない人も多いのではないでしょうか。僕も現職ではまだまだ自信を持って答えられるような状態ではありません。

今回は、2ヶ月前に退社した前職デザインチームの出来事ではありますが、存在価値が一気にあがったときの話を書こうと思います。

デザイナーの存在価値とは?

そもそも、デザイナーの存在価値ってどんなものでしょうか。会社は、お金という大きなコストを払って、デザイナーを雇っているわけですから、なにかしら価値を感じて、それを求めているはずです。

とはいえ会社によって求められる役割は違うでしょうし、チームがもっている裁量によっては、できることも違うと思います。ちなみに僕が前職に入社した当時のデザインチームは、ひとことで言うと「見た目を整えるオペレーターチーム」でした。

そんな「見た目を整えるオペレーター」チームの特徴はこんな感じです。

・超具体的な細かい指示依頼がくる
・ラフ通りに仕上がってないと差し戻される
・褒められるところがいつも装飾部分
・かんたんな作業と思われている
・これにデザインあててって言われる
・マーケティング的な話をすると嫌がられる
などなど

とにかく見た目を整えてくれる人達と思われている状況なので、下手に違った視点で提案すると嫌がられることもありました。なんなら、そのまま言った通りに作ってくれとストレートに言われることもしばしばありました。

もちろん見た目を整えることもデザインチームの役割のひとつなので、これも大事な存在価値だと思いますが、せっかくのデザインチームなのに、これだけではもったいないと感じていました。

僕が思うデザイナーの存在価値は、ユーザー視点をもって技術を組み合わせた課題解決の提案、そしてそのアイデアを具体的なカタチにできることだと思っています。カタチにすることだけを求められているのは、やはりただのオペレーターになってしまうわけです。

とはいえ、自分たちが勝手にそんなことを思っていても、周りがそう思ってもらえていないうちは、どうにもならないので、まずは地道に自分たちが何をやっているか、どういうことができるかということを地道に伝えるような努力をしていました。ただ、なかなか思う通りのスピード感で浸透するにはいたりませんでした。

そんな「見た目を整えるオペレーターチーム」が、あることをきっかけにデザインチームの存在価値を一気に高めることになります。

存在価値を高めたきっかけとは

当時こんなことがありました。メイン事業とは別に創業以来初めてとなる新規プロダクトの立ち上げ企画が進んでいました。そのとき、メイン事業の業務に影響が出ないようにということで、残念ながら社内のデザインチームのリソースは使わずに外部リソースを使って進めるということで話は進んでいました。

そのときプロジェクトメンバーに入ってはいませんでしたが、外から見ていてもデザインを装飾と捉えて外注しているのは明らかでした。開発先行でプロジェクトは進行し、いわゆるデザインがあたっていない骨組みの状態から外注のデザイナーさんへディレクターが依頼を出し、数週間経ってカタチになったものが納品されました。そして、それをみんなで見ました。

それはだれが見ても、苦笑いするような残念な仕上がりでした。この一連の流れを、すべて外注先のデザイナーさんのせいにするのは簡単ですが、これはプロダクトのコンセプトや設計部分を曖昧にしたまま進めた結果というのと、なによりデザイナーが入るタイミングが遅すぎた結果だと僕は思っています。この結果は、ちょっとしたボタンのかけ違いなんかではなく、デザインというものを軽視した結果であって、必然だったと思います。

さて、この結果を踏まえて、白羽の矢が立ったのが、我々デザインチームです。決して気持ち良い依頼の流れではありませんでしたが、必要とされているのであれば全力で対応しようと思ったことをよく覚えています。

作業を着手するにあたり、まずその時点で目に見えているものは一旦無いものとして考え、まずは機能を理解したうえでのメニュー構成、ターゲットを理解したうえでのUI設計、ユーザビリティを考慮した画面設計などを対応させてもらいました。開発担当者の方には無理難題を投げかけて、何度も困らせたりしましたが、プロジェクトメンバー全員の力を合わせて、なんとか無事リリースまで漕ぎ着けました。(この詳しい話は別の機会に書こうと思います)

もちろんデザイン担当者が変わっただけでうまくいったなんて思ってませんが、このあとの周りの見る目は大きく変わりました。このプロジェクトに関わったメンバーにはわかりやすくビフォーアフターを見せられることができましたし、デザインの力とデザインの必要性を強く感じてもらえる良い機会になりました。

きっかけは自分から作ったものではありませんが、このときにすぐ対応できる準備をしておけたことがチャンスを掴めたひとつの要素だと思っています。

存在価値を高める方法

この一件以降、デザインチームの潮目は大きく変わり、案件が動く前には必ずデザインチームに話がくるようになりました。デザイナーとしてはどう思う?デザイナーの意見は?というように聞かれる機会もとても増えました。

これこそが、デザイナーがそこに存在している意義であり、企業からしたら価値なんだと思います。チームの存在価値を高めることと、周囲メンバーの信頼を得ることは表裏一体です。実績を積み重ねて、僕たちはここまで出来るんですよと見せるしかありません。

あともうひとつ具体的な存在価値を高める方法としては、とにかく裁量を持っているメンバーにデザインの力を見せつけることです。偉い人にデザインチームの付加価値を見せつけてやりましょう。 言い方が悪いかもしれませんが、見える部分で判断する人には、目で見てわかる形にして見せつけることが一番効きます。

デザイナーは形にするのが得意なので、その造形にばかり視線をとられがちですが、そのアウトプットに至るまでにはいろいろ調査し課題背景を理解して、仮説を立てたうえで形にしているはずです。ターゲットに対してどうアプローチすることが課題解決の最適解なのかを考え、それを目で見られるもので表現し、それをわかりやすく偉い人たちに説明してあげましょう。

最後に

僕の仕事のモチベーションは「人に求められていること」です。どれだけハードなしんどい仕事でも、人に求められていることがはっきりしていれば、たいがい頑張れます。あなたにやってもらいたい、あなたと一緒にやりたい、あなただから安心して任せられる。そんなことを言ってもらえるだけで、僕はその人のために意地でも期待に応えたいと思います。

企業がデザイナーに求める役割は10年前とは比較にならないほどに大きくなってきています。経済産業省が2018年に発表した「デザイン経営宣言」をみても、デザイナーの活動領域が広がってきているのは明らかです。デザイナーが手だけ動かしている時代は遠い昔の話です。

これまで以上に企業がデザインというものに投資をしやすい環境になってきています。つまり、それはデザイナーへの高い期待値であり、企業が求める存在価値となり、それはデザイナーへのプレッシャーにもなるわけです。

デザイナーの皆さん、デザインというものが企業価値をあげるために必要とされるこの時代にデザイナーとしていられることをチャンスと捉え、このプレッシャーを楽しみながら、もっともっとデザイナーの存在価値をあげていきましょう!