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後輩①

 狂気を目の前で感じた事はりますか?

 人に自慢出来ることがあるかと言われると一つだけ思い当たる事がある。それは友人等々に恵まれている事でる。青春時代は恋愛そっちのけで、というか、土俵に上がる事ができなかっただけであるが、友人と遊び呆けていた。身内の見解だからなのかもしれないが僕の友人は個性的で面白い人が多いと自慢出来る。ある時、人に言われた事が今でも記憶に残っているが、「佐田はゲテモノを引きつけるよね」と言われた。その人曰く、僕の心が広過ぎて変人をめちゃくちゃ受け入れているらしい。人の友人を馬鹿にするなと思ったが、半分は僕の事を褒めてくれいると受け取ったので我慢した。やはり、心が広かったのである。

 少しずつ小出しで友人の話をできればなと思う。これは会社員時代の後輩の話である。彼は僕の3年下の後輩であったが、僕よりも先に退職してしまった。彼の特徴としては、一つの事に集中してしまうと他の事が手に付かなくなるタイプである。一つ腹が立つのは彼は自分の事を話すときに「マルチタスクが苦手なんですよね」と言ってくるところである。なんか腹が立つ。中学生みたいな幼い見た目でマルチタスク出来ない奴がマルチタスクっていうんじゃねえよという謎の理不尽な怒りである。

 ただ、一つのことに集中できるという事は短所でもあり、長所にもなるんじゃないだろうか。まあこの全ての事象は一長一短理論は世の中のほとんどの事に当てはまるとは思うが、彼は好きなものを一週間以上食べ続けるのである。要するに毎日晩ご飯がボロネーゼらしい、いや上手いけども、僕みたいな食べる事が好きな人間は理解できない。いろんな物を食べたいのだもの。ある意味毎日同じ物を食べるという事は食費なんかは、浮かすという意味では食べないという行為を除けばトップレベルの節約方法ではあるのかな。そのくせ彼はマッチングアプリをフル稼働させていて何人もの大人の関係の女性のお友達がいた。この件で彼と話をした時に「彼女とは作らないの?」と聞いたが、「飽きちゃうんですよね、状況によって会う人を変えたいんです」と言っていた。なんだ、こいつ。激烈おち○ぽじゃねえか。なんで性欲はテイスティングしまくるんだよ。横文字使えよ。あれ、僕嫌いかもこの人と当時思った記憶がある。

 彼と仕事をしていた時に彼が大きな失敗をしたそれは、新規の契約が取れそうなお客さんに契約直前で断られたのである。何が起きたのかというと、お客さんに見積もりを提出し、その結果をしつこく聞き回ったようだ。これだけ聞くとガッツがあるような感じだが、しつこさが限界突破をしていた。担当者が現場で仕事をしていたらしく電話に出られず1日10回以上彼は電話をかけていたらしい、しかも1回のコールも留守番電話にならないのをいい事に30秒以上かけていたのである。狂気が凄い。しかも担当者が女性の事だったので怖くなってしまったらしい。そりゃそうだ、誰だって携帯がなり続けるのは怖い、メリーさんだってそこまではしない。


 結果的に契約も無くなり上司にしこたま怒られた彼はさすがに凹んでいた。「まあ、次回からは気をつけなよ」と声をかけると彼はおもむろに「そうですね、次は電話かかってきた時にはどんな状況でも出てれるようにします」と言った。あれ、時空が歪んでんのかなと錯覚した。どうやら狂気の電話をしている途中に相手から一度連絡が来ていたらしい、その時電話に出れなかった事を反省しているようであった。こいつやべえなと思った僕は無言で笑顔を作りその場を去った。さらに怒られたすぐ後、怒ってきた上司が「新規会議」を噛み「チンチキ会議」と言ったと腹を抱えて笑っていたのである。本物の狂気を感じた。

 よくよく振り返ると僕は彼の事を好きだったのかは不明だが、会社に入社して初めての同じ部署の後輩だったので、可愛がってはいたのである。僕よりも先に会社を退職し、ついに僕も彼の後を続く事になった。来週久しぶりに会うのだが狂気度が上がっていない事を祈るばかりである。

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