モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年― 感想

大阪中之島美術館にてモディリアーニの展覧会を観に行きました。前回の個展は2008年に国立新美術館と国立国際美術館で開かれていたので、個展としては14年ぶりの展覧会になります。

今回の展覧会の感想を端的にいいますと……1800円出すほどの展覧会ではないです。別のものにお金を使ったほうがいいです。

いままで、展覧会についていろいろな意見を出しましたが、さすがに「観ないほうがいい」などという感想を出したことはありませんでした。しかし、今回の展覧会ではその禁じ手(?)を使おうと思いました。

まずはどのような展覧会であったかを説明します。
本展は、以下の3部構成になっています。

①初期作品とカリアティッドの素描
 モディリアーニがアーモンド型の目や顔を描くようになったきっかけの「カリアティッド」の素描と、それ以前の作風の絵画
②同時代の画家による近代美術作品
 主に日本の国公立美術館が保有している近代絵画
③モディリアーニの晩年の絵画作品
 モディリアーニの1916年から1920年に亡くなるまでの絵画

さすがに、③は観る価値があります。特に今回展示された裸婦像3点が最大の見所ですね。モディリアーニの作品としては傑作の部類に入ります。また、テートが所蔵している《小さな農夫》もかなり素晴らしい作品です。服のほつれや汚れ、それと汚れのない顔との対比は見事です。写実的では全然ないんですけど、肖像としての完成度が高いんですよね。ここがモディリアーニ絵画のすごさです。

③だけで1,000円なら是非おすすめしたい展覧会です。①の初期作品を含めて1,200円でもまあまあおすすめですね。ただ1,800円はさすがに高すぎますね。例のコロちゃんの影響を考えても、です。

①は点数が少なすぎます。モディリアーニはこのころ、直線的なのに表現主義的な作風の絵画を残しているんですよね。いまでいうなら、エゴン・シーレを思わせる作品です。この時期の絵画にもなかなか見応えのある作品があるんですけど、それがまったく展示されていませんでした。いらないといわれればいらないんですけど、カリアティッドの素描もごくわずかでした。

代わりにサントリーから寄託されているポスターや吹田にある国立民族学博物館の仮面などが展示されています。ブランクーシの石膏の彫刻もありましたね。でも、「これ、モディリアーニに関係あるんですかね?」と思わざるを得ないほど多く出品されていました。「身内」のものを展示してお茶を濁している印象ですね。

②はピカソ、アンリ・ルソー、パスキン、キスリング、国吉康雄、松本竣介など、モディリアーニと同時代もしくは死後に活躍した画家の絵画がたくさん展示されていました。時代も国籍も活躍した場所も全然違う画家の作品が、モディリアーニが位置づけられているエコール・ド・パリの画家と同じ部屋に並べられているのは不可解です(注)。モディリアーニの絵画を観に来たひとにとっては不要ですね。

近代美術について興味のないひとにとってはいいのかもしれません。でも、別にそれぞれの画家の一級品と呼べるものは少なかったので、これで近代美術を概観するというのは無理がありますね。それならば、○○美術館展に行ったほうがいいです。ていうか、美術鑑賞に「近道」なんてものはなかなかあるもんじゃないですよ。

①が少なく、②がやたら多く、③がまあそこそこの点数という構成でした。モディリアーニの画風と直接関係のない絵画が間にたくさん挟まれていて、途中で何の展覧会に来たのか本気で忘れてしまったぐらいでした。それだけバランスの悪い構成でしたね。

展覧会は残念なものになってしまいましたが、ただ、中之島美術館が開館して初めての特別展な訳ですから、これはこれで仕方がない部分はあります。オープンしたての飲食店のサービスがよくないのと同じようなものです。

注:そもそもエコール・ド・パリそのものが、同時代にパリで活躍した画家という雑なカテゴリなんです。だから、エコール・ド・パリの画家を並べられたところで知識として得られるものは少ないですね。それだったら、モディリアーニが影響を受けたであろう、古典主義や象徴主義、分離派の画家を並べたほうが分かりやすかったでしょうね。

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