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命の響きに触れた夜(後編)

相手が私に問いかける。
アタマで聞いてカラダに問う。
アタマの私とカラダの私。
まるで2人の私がいるかのようだ。

ため息から蘇る

深いため息をつこうとして口が無意識に「う」の形になる。
ふーっと息を吐く。
カラダの感覚に目を向ける。
するとカラダに何かがたまっていくような重たさを感じた。

ふと違和感が生まれた。
ため息ってカラダが楽になるイメージがあるのに
なんで楽にならないんだろう。

違和感を抱えたままで何度かふーっと息を吐く。

そして気づいた。

深呼吸って「はー」だよな。
温泉につかったときのような
思わず出てしまうような吐息。

どうしてふーっと吐いているのか。
自分に問うて思い当たった。
息を吐いた音が相手の耳障りにならないようにと
無意識に息をひそめていたのだ。

そこから数珠つなぎのように大切なことに気づいてしまった。
ひそめた呼吸は今に始まったことではなくて
子どものころからしていたことなんだと。

ただそのままをなぞって伝える

驚愕する。
どうしよう。
動揺する。

そこではっと思い出す。
ルームに分かれる前に主催者の方が
「カラダの実況中継をします」
と説明していたことを。

そうだそうだ。
いま自分に起きていることをただなぞるように伝えよう。
すこしお腹に力を入れて自分の軸を確かめる。

「頭がちょっと酸欠で、胸がどきどきしています。
ため息を…いや息をすることで
耳障りにならないかなって遠慮して
無意識に控えてたことに気づいて。
驚いています。」

カラダから力が抜けた。
十年単位で積み重ね固めてきた力だった。

相手はただ聞いてくれている。
安心した。

多少の遠慮はまだあれど、私はなんどもため息をついた。
胸が開いていき、おなかが温かくなるような時間だった。


全編


▼ごはんと暮らしのエッセイです▼

インスタばなー


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