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【小説】SNSの悪夢

「奥さん、旦那さんは自分は悪くないと言ってましたよ。」部屋に入ると調停員が話してくる。

そうだろうね、だって無言だっただけだから、悪いとかは思っていないからね。

私も結婚していた時期??じゃ無かった一緒に暮らしていた時期には普通なのかなと思っていた。

普通でないと解ったのは、友達に結婚生活の話をした時からだ。

「結婚して、今ラブラブで一番いい時期だね、羨ましいよ。」と学生時代から仲のいい友達に言われた。

ウーン、ちょっと違うかな??だって我が夫は仕事に集中すると、話さなくなる。

「家はね、仕事に集中すると話さなくなるんだよね。」友達には夫の職業や名前は言ってない。

物凄く有名って訳では無いが、テレビも出たりする時が有るから、サインとか言われたら面倒なのだ。

「話さなくなるの??新婚なのに???仕事ってそんなに忙しいの??」聞きたい事が沢山有るらしい。

「まあまあかな。」出て行ってからの仕事量は知らないが、ずっと仕事をしている訳じゃ無いだろう。

「仕事がそれ程忙しくないのに、話もしないの、そんなのモラハラじゃない。」仕事の忙しさはハッキリと知らないけど、モラハラなの??

「モラハラって、話さないだけでモラハラって言うの??」聞いてみた。

「エ~、知らないの~、今時は無視したりしてもモラハラなんだよ、話をしないんでしょ??」モラハラの定義は知らなかったが、無口になるだけで、何も話さない訳では無い、でも面倒で話を合わせた。

「そうか~、モラハラやったんかな??」友達に併せて口に出す。

「そうだよ、浮気とか有ったりしてね、今時新婚でも浮気する男が居るんだから、倫理観皆無だよね。」浮気って事もあるのか。

そこで私の頭にひとかけらの疑念が湧いた。

もしかしたら、彼は私の事を体のいい家政婦だと思ってるのでは?彼は浮気をしているのでは?

考えてしまうと、その考えが正しく思えて、頭の中から去る事は無い。

それからの事だ、私がSNSで彼を批判して、一緒に住んでいた家を離れたのは。

離婚までは考えていなかったけど、彼の方が離婚したいなら、私だって一緒に居たい訳じゃ無い。

だけど、この調停は上手くやってしまおう、彼からお金を取られるのはまっぴらだ。

離婚調停なんて初めてだけど、調停員が自分に同情的かどうかで、私の立場は変わってくる。

哀しそうな顔で、彼の悪口は止めて、それでもモラハラだと証明する必要がある。

今の所、調停員は彼よりも私に同情的になっている、私って女優なんじゃないか?

どうでもいい事を考えながら、調停に臨んでいた。


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