【小説】恋の幻想
雨が降っていて暗くなっている時間だった、駅で雨が上るのを待っているのか、女の子が居た。
雨に打たれたのか、泣いているのか、瞳の周りには大粒の水が浮いている、服も濡れているみたいだ。
空はもう既に日は落ちて、暗いカーテンの様な雲が覆っている、道沿いの家や商店は明かりをつけて、帰り道を指し示してくれている。
泣いている女の子は女の事言ってももう高校生位だ、制服は着ていないので何処の学校かは分からない。
独身男が女性に声を掛けるのは如何かと思ったが、途方に暮れている様子に声を掛けてみる。
「傘貸そうか、これ以上濡れたくないでしょ。」
「ありがとうございます、傘は良いです。」
「ここに居ると夜になると変な奴が来るよ、早く帰った方が良い。」と諭す、こっちは随分年上なんだからな。
「家に帰りたくなくて。」困っっている様子で、空を見上げる、親と喧嘩でもしたのかな。
「親と喧嘩しても、謝れば許してもらえるから帰ったら。」おじさんに言われたくないだろうが、説得をして帰さないと、夜になって危なくなる。
「帰れないんです、持ち物は全部持ってきたし。」これは説得に時間が掛かりそうだ。
独身と言っても一人じゃないから、家に連れて帰って話を聞こう、この子が変なおじさんに付いて来る無防備な子だったらね。
「行くところ無いの?」何処か行く所が在るなら、送って行ってやろう、そう思って聞いてみる。
「行く所なんか。」そう言ったところで涙を溢す、自分が泣かせたのじゃ無いのに、じろじろ見られている。
「俺の家に行く?濡れてるから。」それ以上は言えない、警戒して来なかったらそれまでだが、こっちは気になるのだから聞いてみる。
「行きます。」ほんの少しの迷いと共に答えが返って来る、おいおい良いのか知らない男だぞと考えながら、傘を差しかける。
電灯の明かりで照らされた道を2人で家に向かう、『この子は俺が良い人間だと思っているのかな無防備だ』この子が悪いわけでは無いが、イラっとする。
家に着くとヤッパリ電気が付いている、また来てたのか、帰った途端にもう一つのイライラが募る。
ドアを開けると女がいる、もうあの女としか考えられない、元婚約者の彼女だ。
「なんでここに居るの?」いつもの事ながら聞いてみる。
「だって10年も付きあってきたんだから良いでしょ、それよりその子はあなたの相手には若すぎるでしょ。」返してくる。
「ごめんなさい、奥様には迷惑ですよね。」と女の子。
「これは奥様じゃないんだよ、昔婚約していた女、勝手に婚約破棄しただから、幻想だと思って良いよ。」
「止めてよ、幻想なんかじゃないんだから。」言いたい放題だな。
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