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しごとの話_コトブキッチン②

開かずのシャッター

5年ほど前までは古本やさんの倉庫として使われていた場所。
その後商店街の物置として使われ、いつしか壁に雨漏りのあと、カビの臭い、落書きだらけのシャッターは腐食してつかいものになりませんでした。
ドロボーも素通りするほどの荒れっぷりの物件でした。
この物件に決めた理由は、シンプル。
会社の隣の空き店舗だった、というだけです。

飲食店に見学に行く

もちろん、飲食店なんて初めての私には何を準備すれば良いか、どこに何が売っているのかもわかりません。
設計は“この人しかいない!”という決め打ち状態だったのに、あとは飲食店をしている友人に尋ね尋ねです。
みんな本当に親切で、厨房器具、仕入れ先、保険、食品の賞味期限など、もうなんでもかんでも教えてくれました。
極めつけは、同じくらいの坪数の友人のお店のキッチンにお邪魔して、設計士が寸法を測り、導線を確認し、必要そうなものをピックアップさせてもらいました。営業している飲食店の厨房には、沢山の知恵が詰まっています
長ければ長いほど。
最低限の動きで、動きやすく、厳選された必要なものしかありません。

起業の相談で飲食店をしたいという方には、やりたいと思っている規模やジャンルのお店で試しに働いた方が良いですよ、とオススメしています。
嫌がるお店のかたもいらっしゃるとは思いますが、その場合はお客さんとしてでも。飲食店を始めてからは、他の店舗の提供方法やサービス、価格設定などとても参考になる情報が溢れていると思います。
自分でトライエラーも必要ですが、いろんなお店の良いところを参考にすることで短縮できることもあると思います。
なんでも全て一人で抱え込む必要はないのですから。

ショーケースの物語

ガスコンロ、オーブン、流し台、冷蔵庫、冷凍庫、製氷機・・・。全てを見学したお店と同様に揃えた私。
恥ずかしながら、しばらくは業務用ガスコンロの火の大きさに恐れおののき、小さいはしっこのやつしか使ったことはありませんでしたし、オーブンもパンを焼きだしてから・・・そう、開店して2年後の話なのです。
製氷機に至っては、3ヶ月ほど誰も使わない氷をただひたすらつくり続けるという孤高の物体と化していました。

そんななか、出会ったショーケースのお話を。
ショーケースって高いのです。新品だと中古車くらいの値段がします。じっとしているのに、高いのです。

そんな、ショーケースは友達のところからやってきました。
その友達は、私が関わっているこの街に生まれ育って、高校生のときによその街へ引っ越しました。偶然、飲み会で出会い、今私がいる場所のひとつお隣の通りに住んでいたことが判明しました。
随分前その人に「いつかお総菜屋さんをする」と話したところ、「古いショーケースがあるから、あげる」と言われていました。
本格的に準備をするなか、どうにもこうにも手が出ないショーケースをもらいたいと連絡すると、そのショーケースを持っている理由を教えてくれました。

そのショーケースは、今はここから30kmほど離れたその友達の住んでいる公民館、的な家の外に置いてありました。
古い古いショーケースです。
実はもともと、私が関わっている街の和菓子屋さんにあったもの。
和菓子屋さんが廃業するとき、友達が引き取っていたものだったのです。
そう、この街で育ったショーケースだったのです。

そんなおじいちゃんショーケースを故郷に迎え入れることができたのも、意味のあることでした。

今もなお、ウンウン言いながら、お惣菜を冷やしています。
年の割には元気です。


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