ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」観ました
ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を観劇しました。
キャストは古川ロミオ、葵ジュリエット、三浦ベンヴォーリオ、平間マキューシオ、渡辺ティボルト。
※2回目観劇の感想はこちら。
観てから気づきましたが、私、ロミジュリのストーリー詳細を知らなかった。
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舞台は中世のイタリア、ヴェローナ。対立するキャピュレット家のジュリエット、モンタギュー家の跡取り息子ロミオが、互いの素性を知らずに恋に落ち、周囲に引き裂かれ、それでも神の前で永遠の愛を誓い、結ばれて。
両家の争いのなかでキャピュレットの甥ティボルトがロミオの友人マキューシオを殺し、ロミオは復讐としてティボルトを殺してしまう…。その罪でロミオはヴェローナから追放され、一方のジュリエットはハリス卿と政略結婚させられることに。
ジュリエットは神父の知恵を借りて「まるで死んだように眠る薬」を飲み、周囲に自分は死んだと思わせる。ロミオに「実は24時間後に目覚めるから、隙を見て一緒に逃げよう」と知らせを出して。
けれど、ロミオのもとには「ジュリエットが自ら命を絶った」ことだけが伝わってしまい、ジュリエットの亡骸を前にロミオは毒を飲み自殺。直後に目覚めたジュリエットもロミオの短刀で胸を刺し、愛する人の後を追う。
この悲劇の結末を目撃した両家の大人たちは、ついに和解。
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まあこんなもんだろうという認識だったけど、意外に(と言ったらシェイクスピア大先生に失礼か…)もっと深みのある物語でした。
キャピュレットの甥ティボルトは一族の跡取りにして、実の叔母であるキャピュレット夫人と不倫関係にあり、なおかつ若く美しいジュリエットに恋をしている。おいおい、手近なところで済ませすぎだろ…。
キャピュレット夫人はというと、「私は美しかったから、この身体を抱きたがった夫と結婚させられた。けれど本当の愛を知ったのは他の男に抱かれたとき。そうしてあなたが生まれたのよ」と、キャピュレットが実の父親でないことを娘に曝露。確かに美女で歌もうまいが、股だけでなく口もゆるゆるである。
そのキャピュレットも、酒、ギャンブル、女遊びに明け暮れて、家は借金だらけ。その負債を肩代わりしてくれるというパリス卿に、娘ジュリエットを嫁がせようとするんだけど、当然嫌がられる。そこでしっとりバラード歌うんですけど…娘が3歳のとき、血がつながっていないことに気付いて首をしめようとした、とか、それでもお前を愛している、とか…いやいやいや、どんな愛だよ、この物語のだいたいの不幸の元凶、あなたじゃない?
いや~、キャピュレット家の皆様、人生ハードモードすぎる。つらい。ミュージカルではキャピュレットのイメージカラーが紅で、愛憎劇がより印象付けられます。
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一方のモンタギュー家はどうでしょう。お坊ちゃま、ぬくぬく育ってます。お父様もお母様も息子への愛がおおらかすぎる。
ロミオ坊ちゃまにはベンヴォ―リオ、マキューシオという「ダチ」がいて、ケータイで呼び出してもケータイを見ない、街で諍いが起こってもその場にいない、女の子と過ごすこともあるけれど「本当の恋を知らない俺」に酔いしれる…背ばかり大きくなってもいまいち頼りない、一族の大事な跡取り息子の、もはや子守りをしています。
とはいえ、彼も両家の争いを失くしたいと思っているし、だから喧嘩もしたくないし、ちゃらちゃらした女遊びに乗り気なわけでもない、そんな心優しく美しく真面目なロミオ。身分を隠して訪れたキャピュレット家の仮面舞踏会で、ひと目でジュリエットに恋をして、ちゃっかりそのハートを射止め、キスまでする。あれ、坊ちゃん手早いよ、大丈夫?
ロミオは自己肯定感が高いほうの人間なんですね。自信家ではないんだけど、初めて本気で恋に落ちて、自分の思いをストレートに行動に移してしまえるし、すぐ近くでさりげなくフォローしてくれるベンヴォ―リオたちがいるから、安心してぽやぽやできちゃうんだと思う。
ベンヴォーリオとマキューシオのバランスもいい。マキューシオはちょっとヤンチャでチャラチャラしてて女の子の扱いも心得てる感じかな。仲間うちで一人はいる、新しい遊び、新しい世界を教えてくれる人。皮肉なことに、マキューシオが殺されて、ロミオはきっと初めて「憎しみ」という感情に出会う。平間さんは古川ロミオ、三浦ベンヴォーリオに比べたら小柄だからか、運動量が多くてキャラが出てるなあと思いました。
ベンヴォーリオはいい兄貴。ロミオと肩を並べ、てはいるけど、その心に抱えてるもの、痛みを、自分のことのように捉えてロミオを気遣えるひと。ジュリエットの死、ロミオの死を前にしたときの、ベンヴォーリオがロミオを思いやる姿は胸に響きました。2つある、ナイフを拾うシーンとか、最後に仲間たちの肩を抱く後ろ姿とか、よかった…。三浦涼介さんはビジュアルもぴったりハマってました。
イケメン好きとしてはモンタギューが熱かったです。彼らの友情は爽やか。青のイメージカラーをまとっていて、衣裳がデニム生地ベースで、かっこいい。軽やか。キャピュレットとは対になるデザインで、うんと爽やか。
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こういう、ロミオとジュリエットの恋の背景にあるものが、結構しっかり描かれているんだなあと今更知りました。しかし、知ってしまうとより苦しい。
ジュリエットと逢瀬を重ねながら、二人結ばれれば争いのない未来を築けるかもしれないと夢見るロミオ。ロミオの腕の中で、自分を純粋に、深く愛してくれる人に出会えたことを喜び、彼との恋があれば何もいらないと人生をかけてしまうジュリエット。
うーん。悲劇色が強すぎた。お互いに恋して惹かれあっているけれど、その胸の内にあるものは、お互いが見つめている先は、実はすれ違っているように思えて。ロミオは新しい感情に出会って、前に進もうとしていて、だけど「死」に囚われはじめてもいる…。「死」がつきまとうことで、彼が覚悟を持って生きられるようになったことが際立ってた。でもジュリエットは自分の境遇から逃げようとしてるだけに見えちゃう。その幼さが美しくもあるとはいえ。
それに、私も、今更、思春期の恋愛ものを見て、私も恋したい!とか、きゅんきゅんする〜!とはならない。恋だけじゃやってけないわって吐き捨てるほど、冷めてもない。
ので、モンタギューが熱かった(また言う)。彼らの絆がかなりいい。ロミジュリは若い役者さんが多い演目なのはわかってたけど、なるほどこれは熱い。ロミオ、ベンヴォーリオ、マキューシオがそれぞれWキャストなので…8パターンあるの…?それぞれ全然違う関係性になるんだろうし、いやあ熱い。
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ストーリー以外のこともいくつか。
葵わかなさんのジュリエットは、小柄で純粋で、でも自分をしっかり持ってて、むず痒くなるくらいピュア。守ってあげたい、と、一緒に戦おう、の両方の思いを抱かせてくれる強い女性…なだけに、結末はいっそう悲しい。初ミュージカルとは思えない、歌うまかったし、歌声の透明感がすごかった。衣装も髪型も可愛いかったな〜。
古川雄大さんは背が高い!すらっとしてる!顔がちっちゃい!そして顔面がいい!美しい!オーラ…というのはそこまで…いや、今回の「若造」らしい、あえての役作りなのかも知れませんが、スタイルがいいとそれだけで武器になる、と改めて思わされた。舞台の隅っこにいても、あっあそこにイケメンいる!ってわかるもん。
朝チュン描写があったんですけど、これ推しでやられたら鼻血出すな…と思った…。しかもパンツ一枚でベッドから出てくる。前のシーンではけてから急いでズボン脱いだんだなあと思っちゃうし、舞台上で急いでズボンはいてる姿を見せられると、なんか微笑ましくて笑ってしまった。
時代設定はかなり気になったな…。近未来のイメージらしいのだけども、喧嘩するときはナイフだし、教会の懺悔の時間があったり、政略結婚してたり…。アレンジするならするで、全体で矛盾なくしておかないと、後から加えた要素だけ浮いちゃう。
「ケータイ」って言い方も、すでに古い感じがするし。ロミオは友達から連絡が来ててもケータイ気にしないし、ジュリエットはケータイ持ってないから連絡も来ないのに、街を追放されたあと、なぜかふと「はっ!ケータイがない!」って気づく。いや、いま君がケータイ気にする理由ないじゃんか、と。
男性キャストで一番よかったなって思ったのは三浦ベンヴォーリオ。優しい男だった…。女性なら葵ジュリエットもよかったけど、乳母役のシルビア・グラブさん。包容力のある声がすごく好きで、ストーリーのなかでも歌唱力でも、頼りになりすぎる乳母だと思いました。
悲劇というほど重くはなく、恋のハッピーエンドとも言えない物語。イケメンがたくさんいて、ダンスと歌が楽しくて、「死」の演出も舞台ならではで大好き。それぞれ別のキャストの公演も観れる予定なので、どう印象が変わるかも楽しみ。
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