「少年たちの2週間」

2013年5月のことです。作者・尾田栄一郎さんの体調不良を理由に、「ONE PIECE」が2週間休載となることが発表されました。

そのときの尾田さんのコメントに、「少年達の2週間がどれ程長いか承知してます」という一言があって。当時の私は、この言葉に、雷に打たれるような衝撃を受けた。

大人になった私たちの、1日、1週間、1カ月、1年は、あっという間に過ぎてしまう。

今だって、1年前の今頃のことをまるで昨日のように思い出せるのに、もう1年経っている。1年前の今頃、社員旅行でバリに行き、人生で最高!って思える時間を過ごして、仕事へのモチベーションがググッと上がったあの数日のこと、夕焼けの色も、日焼けの痛さも、風の湿度も覚えているのに、私は気が付いたら会社を辞めて、日々だらだらしているわけで。

漫画についていえば単行本派なので、3カ月か4カ月に1冊新刊が出るのを、はじめは「そんなに待てない」と思っているのに、いつのまにか書店に並んだ新刊を見て「あれ、もうそんなに経ったっけ?」と驚く。

でも。漫画家として、プロとして、大人として。尾田栄一郎さんは、メインの読者ターゲットである「少年」たちの感覚を、失っていないのだ。新しい週刊少年ジャンプを読める月曜日を、1週間待ち焦がれるその気持ちを、少年時代に経験し、大人になってからその尊さを理解して、漫画家として今なお彼らと同じリズムを生きている。

そういえば、私自身も昔はそうだったと、彼の言葉で思い出した。漫画が大好きな女の子だった、あの頃のこと。2013年5月26日に、それについて書いた文章があるので、供養がてらnoteにも残します。

このときは、自分が書籍とはいえ編集者になるなんて思ってもみなかったな。演劇にここまでハマるとも思っていなかった。

どんな仕事でもそうだろうけど、たぶん「クリエイティブ」な世界では特に、プロになるより、「ただの読者」としての感覚を持ち続けることのほうが難しい。セオリーはいくらでも頭に入れることができるけど、イチ消費者として、作品を心待ちにする気持ち、純粋に作品を楽しむ気持ちを失ってしまったら、いいものづくりはできないと思う。

私はりぼんっこだったので、毎月発売日には急いで家に返ってランドセル置いて、1ヶ月のおこづかいの半分の小銭を握りしめて自転車に乗って、本屋さんに行って、紐でくくられてるのに下のほうからりぼん取って、おうち帰ってきて、大事に大事に読んでたなあ。1ヶ月は長すぎて、おんなじ号を何回も何回も繰り返し読んでた。

りぼんだけでおこづかい半分なくなるから、単行本なんて買えなかったし、はじめて買った単行本が何だったかももう覚えてないけど。ときめきトゥナイトは数ヶ月かけてお金ためて集めたし、スラムダンク買ったときは1万円以上する買い物なんてほとんどしたことがなくて、まさに清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ちだった。

あの頃よりも少し値上がりしている単行本を、今は何の躊躇もなく、電車乗ってる間になんか1冊読むかな、なんて軽い気持ちで買えるようになってる。漫画を軽く扱うようにはなりたくないけど、でも、私は、スタバのコーヒー1杯飲むより、漫画買って、漫画家さん応援したい。

小さい頃は買えなかったけど、宝物を手に入れることはできなかったけど、今の私には漫画1冊420円なんて安いもんだなと思える程度の経済力はあるのだ!社会人として社会の歯車になったのならば、労働の対価として得た金を市場にばらまかなくてなんとする!歯車が経済まわさなくてどうする!
というわけで今年は漫画買いまくってやる。

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