見出し画像

第20話 サチコが名古屋の銭湯「出口湯」で、でらととのった話

こんにちは。サウナのサチコです。

今回はちょっと気合いが入っています。そして投稿するのもちょっと緊張しています。だって出口湯のご主人が見てるから(笑)

粘土もイラストも記事も、自分の持てる力を全部出しました。粘土の出来はともかく、記事に綴ったことはすべて真実であり、私が感じたことのすべてです。だから皆さんどうぞ、最後まで読んでくださいね。

さて

前回の記事でお伝えした通り、サウナのサチコ、大阪に続いて名古屋にも行ってまいりました。もちろん今回もバイト先の会社が交通費を出してくれました。やった!

夕方、仕事を終えてホテル(自費)に着いた私は、とても緊張しておりました。だってこれから私のフォロワーさんである、出口湯のご主人に会いにいくからです。もちろん面識はありません。お話したこともありません。「9月の初めに寄らせていただきます」というコメントを送ったのが初めてでした。ただ、何日の何時に行くとは言っておらず・・・。ほら、サチコのファンやストーカーがどこかで待ち構えていると怖いでしょ。そこは用心しないと。

「出口湯」は1911年(明治44年)創業。

今年で109年になる銭湯です。サウナはありません。ですから今回は銭湯のサチコということで。

名古屋駅から地下鉄に乗って10分ほどの今池駅で降り、そこから15分ほど歩きました。方向音痴の私でも迷わず行けるわかりやすい場所に出口湯さんはあります。ご主人に会ったらなんて挨拶しよう、何を話したらいいんだろうと頭の中がぐるぐるしているうちに見えてきました、「出口湯」の看板が。

画像1


絵で描くとポップに見えますが、実際は渋〜い銭湯です。看板にあるドリームバスってなんだろう。バイブラバスって? 考えている私の目の前に、常連風のおじさんが自転車を停めます。そして男湯の暖簾を颯爽とくぐっていきました。私も後に続きます。もちろん私は女湯ですが。

入るとすぐに番台がありました。でもそこに座っていたのは・・・奥様。ご主人じゃない。想定外の出来事に、私はあっという間にテンパってしまいました。奥様と目が合って「こんにちは」・・・と、言ったと思います(それすら覚えていない)。どうしよう。いきなり「サウナのサチコ」ですと名乗るわけにもいかないし。迷った末に出た言葉が、

「タオルを貸していただけますか」でした。

「何枚ですか」と聞かれ、

「2枚、お願いします」と答えました。

番台の横にはちゃんとコロナ対策の透明なシートがあり、そのシートの隙間から奥様がタオルを渡してくださいました。テンパっている私は、なぜかこのタイミングで、

「あの、埼玉から来たんです。インスタを見て。サウナのサチコです。ご主人がフォロワーさんで、」

これらのことをどういう順番で言ったか覚えていませんが、頭に浮かんだ単語を並べまくりました。奥様は笑顔で応えてくださり、とにかく私は自分の支離滅裂な話が通じたことにホッとしました。そしてようやく奥様の顔をちゃんと見ると・・・目が大きくて綺麗な方。声も優しくて、私のイメージにある「番台のおばちゃん」とはまったく違う。かわいいし、若い・・・。汗だくの自分が恥ずかしくなり、早速お風呂をいただくことにしました。

下足箱に靴を入れ、脱衣所のロッカーに荷物を入れました。よく見ると下足箱もロッカーも年代物で、初めて見る形のものばかり。あとで写真を撮らせてもらおうと考えていたところで、はたと気づきました。

お金、払ってない。


タオルをもらう時に財布を出したのに、慌てて自己紹介するうちにすっかり忘れていました。これじゃインスタ詐欺だ。いや落語だ(蕎麦屋の主人に今何時と話しかけて代金をごまかす話)。脱ぎかけたスカートを慌てて腰までたくし上げた私は、バタバタと番台まで駆け寄り、奥様に未払いであることを謝りました。すると「え、そうでしたっけ?」と奥様も忘れていたようで、二人で笑いました。改めて入浴料とタオルのレンタル代を支払おうとすると「タオルはお金をいただいていません」と奥様。私だけ特別なのかと思って聞いたら、「他のお客様にも同じように無料でお貸ししています」と言われました。なんというサービス。

このタオル、帰りに買いたいな〜と思って広げると、そこには「出口湯」の文字はなく、「○○ガス」のような我が家のタオルにもある文字が入っていました(笑)

ガスタオル片手に扉を開くと、まず目に入って来るのは濃い青色のタイルのお風呂が3つ。一番奥が普通のお風呂、真ん中が電気風呂。手前がお風呂と寝湯です。ドリームはこれだろうか、いやバイブラかなと思いながら、まず体を洗い、寝湯に浸かって見ました。ジェットバスです。気持ちいい。窓から外の光が差し込みます。この明るさが銭湯の良いところ。でもあれ? 壁に不思議なものがあります。これです↓

画像2

ひつじ?

猿に見える人もいるそうです。皆さんは何に見えますか?

いつもならお風呂に入りながらサウナのことしか頭にない私ですが、この日は違いました。ここに来るまでのことを思い出したり、壁のひつじやタイルの花の絵、蛇口の形、打ちっ放しの天井を見たりして。ゆったりと時間が過ぎて行きます。そうしているうちに小さな男の子を連れたお母さんが入って来ました。そのタイミングで私はお風呂を出て、髪を洗うことにしました。

画像3

私の後ろで親子がお風呂に入っているのがわかります。鏡にちらっと、お母さんが男の子を抱いている姿が映っています。男の子の背中にお湯をかけてあげながら、そのお母さんが歌をうたい始めました。

大きな栗の木の下で あなたと私


これがすごく上手で、切なくて。思わず髪を洗う手が止まりました。


たのしく 遊びましょう


しかも、「遊びましょう」のところから、男の子も一緒に歌い始めるんです。お母さんの優しい声と男の子の可愛い声が、お風呂の中で響きます。


やめて。

泣いてしまう。

画像4

これがどこかのスーパーマーケットでの出来事だったら私も泣きません。でもお風呂はダメ。

あぁ、これが銭湯なんだな、と思いました。

これまでいろんなサウナを訪れて、どこのサウナにどんな特徴があるとか、何があるから行ってみたいとか考えて来ましたが、銭湯は違う。番台に座る優しい奥様がいて、話して笑って、掃除の行き届いた清潔なお風呂があって、そこに入ってあったまりながら考え事をして、他のお客さんが来たら場所を譲って、そのお客さんが家のお風呂みたいに歌い出す。

何があるからじゃなくて、当たり前のことが、普通にたくさんあるから、銭湯なんだ。また行きたくなるんだなと思いました。


このあと苦手な電気風呂にも入りましたが、体の奥底からブルブルして来てすぐに出ました。電気風呂がお好きな方は満足できる電気量だと思います(この説明でいいのかわからないけど)。

お風呂から出たら奥様が「何か飲んでいって」と声をかけてくださいました。「インスタを見た」というと、番台の前の冷蔵庫から好きな飲み物を1本サービスしてくださるそうです。私はコーヒー牛乳にしました。奥様の許可をとって、ロッカーの前でパチリ。

画像5

一応「37」のロッカーにしたんですが、

画像6

ここだけ数字が消えかけていました。サウナーが頻繁にきてる?(笑)

コーヒー牛乳片手に、あちこち見て回りました。壁に貼られたポスターや、古くて大きな体重計など。ぜひ、出口湯さんのインスタも見てください。下足箱の写真なども全てあがっています。

このあと、奥様とちょっと話しました。「主人がインスタを見せてくれたから知ってます。粘土を作っている方でしょう」と言われた時には、感激しました。私のことを奥様も知っていてくださったという嬉しさと、夫婦でそういう会話をしているという微笑ましさに。ご主人に会えなかったのは残念ですが、それでもすごく近くに感じました。このお風呂と奥様のおかげです。SNSって素晴らしい。出会うはずのない人と出会える。出口湯に来てよかったと心から思いました。

あ。


大事なことを忘れていました。出口湯といえば看板犬。フレンチブルドッグのテツとマルです。いつもは夜にご主人と出口湯にやって来るそうです。夜にきていたら、番台に立つ二人に会えたかな。なんて。

画像7

似てなくてすみません。インスタ見ながら一所懸命作ったんですけど、これが精一杯です。特にテツ(向かって右の黒いワンちゃん)、もっと可愛いのにごめんね。

ホテルに戻った頃、ご主人からインスタを通してお礼のコメントが届きました。やりとりを終えてスマホを閉じた時、出口湯での時間が蘇ってきて、胸がいっぱいになりました。サウナは外気浴で「ととのう」けど、銭湯は家に戻ってから「ととのう」と知りました。

入浴料 440円

滞在時間 1時間くらい


次はご主人とテツとマルにも会えますように。

出口湯さん、大変お世話になりました。一人でも多くの方が出口湯さんを知って、足を運んでくれますように。

画像8

サウナのサチコ(銭湯のサチコ)より






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?