実習で聞いた忘れられない「五感に届けるケア」のこと~桃の香り
こんにちは。今日は、看護学生の頃に聞いて忘れられない、五感に届けるケアのことを紹介したいと思います😊
それは、病院での実習のときのことでした。
指導者のおおもと、看護部長さんから、こんな話を聞いたのが、20数年以上たったいまでも忘れられません。
看護学生は、ケアの勉強のため、患者さんを1人受け持たせていただくことが多いのです。
以前に同じ学校から実習に来た男子学生が、食欲がとても落ちている患者さんに、「患者さんが好きな、フルーツの桃の香りを感じていただく」ケアを計画してきたそうです。
その患者さんはとても喜んで、確か・・・その後、食事を少し食べることができた。という話だったと記憶しています。
看護部長さんは、こう話されました。
「食欲がない患者さんに、好きな桃の香りを感じていただく。といった、五感に触れる、学生のすばらしいケアにとても感動しました。そんなケアを計画してきた学生は初めてです。みなさんも受け持ち患者さんに、どんなケアがいま必要なのか・・・考えて実習にあたってください」
もう、それはそれは、嬉々として、伝えてくださったのです!
もうあれから、ずいぶんと時が経ちました。なのに、すごくすごく、こころの底に残っていて、何かの折に、わたしの中に浮上してきて思い出すんです。
どういうことなんでしょうね。
生きる力に働きかける、ケア
これはいわゆる、「ケアというものの、本質」に近いこと・・・だからなのかもしれないな、と思うんです。
ナースのケアは、患者さんやわたしたちがケアを提供する方の、生きる力に働きかけることを大きな目的としています。
例えばそのために、看護学生が計画するケアは、こういったことが一般的です。
「カラダを清潔を保ちたい、さっぱりしたい」欲求って、大きいですよね。これが満たされると多くの人はホッとします。それに、清潔はいろんな予防にもつながるので、患者さんの心地よさと安全を守るための重要なケアなんですよ。
たとえば、自分で動くことが難しい患者さんの身体を、あたたかいタオルで拭いたり、足浴という、入浴出来ない時のフッドバスケアなどがあります。
なので、この清潔を保つためのケアは、学生でも指導の下で出来る、「基本のキ」なので、ほとんどの学生が毎日のように計画します。
「桃が好き」と、好きな食べ物を聞いて、病院では食事に出ない「桃」を持参して、桃を感じて楽しんでもらって、食欲の回復にもつなげることが出来たら・・・というケアを考えた学生。
好きな桃の香り。ということもあったかと思いますが、食欲が本当にない自分のために学生がこんなに考えてくれた。という、患者さんのことを思った気遣い、、、
そこに患者さんがとても喜ばれて、生きる力を高めることや「少し食べてみようか」につながったのだと思いますねー。
確かに、なんてフレッシュなケアなんでしょう!
学生が計画する受け持ち患者さんのケアで、「桃を持参する」ということは、簡単そうでいて、通常ほんと、なかなか思いつくことすらできません。
思いついたとしても、それを計画してみよう、は、かなりハードルがあるんですよォ・・・💦
たとえば、こんな感じです。
患者さんのケア計画は毎日、まずは学校の先生、その次に、病棟の指導者さんにOKをいただいてから、ようやく指導のもとで行うことができる~というステップが必要です。
なので、ケア計画を毎日立ててから実習に出向きます。
そこには「なんでこの患者さんに、そのケアが必要なの?どんな目的があるの?」という、根拠も書いておく必要があるので、必然的に、テキストや参考書を参考にしながらケア計画を立てることになるんです。
看護学生が、実習期間中は睡眠時間が少なくなる、忙しい、という理由はこのことが大きい・・・
そういったこともあって、食欲がない患者さんに「桃とか、患者さんがすきな食べ物を持参する」といった、テキストには基本的に載っていないケアを計画することは、ワタシ的にけっこうハードルが高く感じるのはよく分かる気がします。
ですが、この桃のケア計画は、自分の枠を飛び越えたところからの、「本質のケア」そのもの、だと思えます。
だから「ほんとはわたしも、そんなケアがしたい!😊」と憧れを感じるので、この話が忘れられないんだな、と自覚しています。
人と自然をむすぶ、五感に届くケア
さて、その後のわたしは、おもに働く人や学生の健康サポートを経験してきました。ではありますが、「生きる力に働きかけるケア」の部分は、共通しています。
現在わたしは、通信制大学でランドスケープ・デザインを専攻しています。人と自然のつながりの中で、「生きる力に働きかけるケア」を目指している道中です。
自然は五感でとらえるもの、そのものなので、そういえば・・・と、この話を思い出して書いてみようかな、と思いました。
そうそう、桃も植物という自然でした^m^
ナースのわたしが、人と自然を結ぶ、ランドスケープ・デザインの中でどんなケアを考えていくことが出来るのか・・・年々気後れしやすくなり、感じる必要はないかもしれない妙な戸惑い(;´∀`)と同時に、やっぱりとてもわくわくしています。
さて先日、昼休みにビル街を歩いていたら、やさしい秋風に乗って金木犀が香ってきました。その時、そういえば、以前10年住んでいたアパートの入り口に金木犀があったなあ、と思い出しました。
あの金木犀の木はどうしたかな、今頃咲いているのかなあ、と懐かしく思い出しました。まるで、あのときにタイムスリップしたように・・・
金木犀の香り、今年はもう感じましたか?
みなさまの秋が、豊かなみのりの秋になりますように😊