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授業を抜け出して

中学の授業を抜け出して目指していたのは保健室だった。

「体調が悪い」と言えば、合法的に教室から抜け出せる。何を思って教室から抜け出したかったのか全く思い出せないのだけれど、中学3年生の1年間の間、割と頻繁に保健室を訪れていた気がする。

教室に居たくないと言っても、だからと言って授業時間中に落ち着いていられる居場所なんて、学校内にそうそうないのだ。遅刻早退、欠席というほどではない、でもなんとなく心がざわつくようなとき、保健室はシェルターだった。

当時、保健室登校という言葉はまだなかったと思う。それでも、特に理由もなく保健室に通う生徒は私だけではなかった。養護の先生によっては、具合が悪いのでないなら教室に戻りなさい!と厳しく追い返す先生もいたけれど、3年生の時の養護の先生は、いつも笑顔で迎えてくれて、まあ座りなさいよと言って椅子を勧めてくれて、お茶を入れてくれた。時には「内緒ね」と言っておやつを出してくれたりもした。揺れ動く思春期女子の心を、おおらかに受け止めてくれた。

あの時何の話をしたのかも、全然思い出せない。クラスでの出来事、先生やクラスの男子の愚痴、家族のこと、進路のこと、何でも話せるような安心感があった。それはまさに語り場で、カウンセリングルームで、居場所だった。時には同じクラスの友人と2人で授業を抜けていくこともあったのに、叱られたことは一度もない。恵まれていたなと思う。

そういう場が学校にあったらいいなと思うし、そこで安心感を感じられない子たちにも、どこかにそういう場があって欲しいと思う。今パステル教室を通して関わっている子どもたちにも、そんな気持ちで接している。

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