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守ってきた伝統が変わってしまう悲しみ

実家の父と話をしていて思ったこと。

古くからの伝統を守り続けてきた人たちが、次の世代にバトンを渡したときに感じる悲しみがある。
その伝統が丸ごと、1ミリの違いもなく守り続けられることはそうそうなくて、世の中の変化とともに形を変えていく。手書きの名簿がコピーになるようなことも含めて。
そうすると、バトンを渡し終えた人たちは、今までずっとこうやってきたのに…そこに価値を感じる人たちがいるのに何故軽々しく変えてしまうのだ!と怒るのだ。でも、その怒りの裏側にあるのは悲しみだ。

自分たちが大切にしてきた物。代々受け継がれてきた物。
ずっと変わらない、変えるのには関わる人すべてを納得させるような確固たる理由を用意して、勇気をもって、時間をかけなければと思っていたことが、一瞬で変わってしまったことへの驚きや空虚さもあるかもしれない。そして、代々苦労して守り続けてきた価値を理解されなかった悲しみは大きいだろう。

でも、30年前と比べて、今の時代の変化のスピードは段違いに速い。対応していこうと思ったら、悠長に構えていられない。伝統を守りつつ、変わっていかなければならないこともきっとあるのだ。それを引退した、30年前に現役だった人たちが理解するのはとても難しいのだと思う。

その事を、できるだけ言葉を尽くして父に説明しながら、最後には
「どちらにしても、もう世代交代したのだから、受け継いだ人達が一生懸命考えて決めたことなら受け入れるしかないのでしょう。だったら考えて悲しんだりイライラしたりすること自体無駄だから、もう距離をおいたほうが良いのでは」
と、冷たいことを言ってしまった。
ちょっと厳しかったかな…と思いつつ、でもそれ以外にどんな言葉をかけられただろうと、今も考えている。

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