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九州ツーリング その24 島原


2023年4月の旅を綴っています。

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大雨の中、バイクで走っている。
もはや暴風雨と言っていいかもしれない。

前の車のブレーキランプしか見えない。

熊本港へと県道51号線を走る。
もう半泣きだ。

止めて、高速に戻ろうか。

島原に向かいたかった。

すでに天草から北上するルートは
諦めている。

熊本から一気に西の島原へ。
1時間で行くフェリーがあった。

それに乗れば、すぐに島原に着く。

どうするよ。

問うているのは、自分に…だ。
ここは危険だから。

半泣きなのはそのせいだ。


行き先の看板が雨で見えない
信号の色もわからない
路地から出てくる車を視認できない
たまに吹く突風がバイクを傾けてくる

見えるのは、前の車だけ。
今の頼りは、ブレーキランプの赤色だけなのだ。

前の車がいなくなったら諦めよう。

2台いたはずの車が一台だけになった時、決めた。
前に先導車がいなければ、ここは走れない。


前の車について行く。

赤いランプが消えたら、加速
赤いランプがついたら、減速

突っ込まないように、気をつけて車間を取る。
でも、あんまり離れるとランプが見えないので
それなりにくっついて。

コバンザメのような気分だ。
そんな悠長なもんじゃないか。

海に近づいているのか、風が強くなってきた。
周りにさえぎるものがなくなってきたのか。

雨のしずくで視界が歪み
ただただ前の車について行っていたら…



ついに、前の車が消えた。


前には誰もいない。1人だ。

Uターンするしかないか。

そう思った時…


橋が見えた。

小さな橋だ。
横風に気をつけて、橋を渡った。

勘のようなものが働く。

港が近い。

その勘は当たった。

本当に港に近かった。
誘導するおじさんが誘導灯を振っていた。

着いたんだ!

心の底からホッとした。


2人いたので、そのうちの1人に近づく。

『12:30に出航する高速フェリーだよ。
 あんた、神奈川から来たんかい』

バイクのナンバープレートを見て
驚いたように話しかけてくれる。

『俺、去年まで〇〇に住んどったんよ』
地名が近くて可笑しくなる。

嬉しくなって相づちを打つ。

出航時間をもう一度聞く。
調べた時間と違ったから。

フェリーは2種類あるらしい。
おじさんの教えてくれたフェリーは
出航が遅くて着くのは同じくらい。

高いのかな?

聞いてみると、そんなに変わらない。
なら、ゆっくりしてから乗ろう。

指定の場所にバイクを置き
ずぶ濡れの姿で、施設に入っていった。


なるべく雫を落として、受付へと向かう。
教えてもらった時間で予約をする。

お昼を食べる時間がありそうだ。

聞くと、レストランがあった。
今日は路肩でおにぎりは食べられそうにない。

屋根のある所で、お腹を膨らませねば。

レストランに入っていった。

窓際の席を選び、メニューを見る。

熊本ちゃんぽん?

昨日、熊本お好み焼きを食べたのを思い出す。
多くないか?そのフレーズ。

ちゃんぽんは長崎じゃないのかな?
熊本にもあるのかな?

雨に濡れて冷たくなっていたので
温かい麺類が食べたく
疑問を頭の端に避けて、ちゃんぽんを頼んだ。

ぼんやり外を見ていると、来た!
熊本ちゃんぽんが。

熱々でレンズが曇った

美味しい❣️格別だ✨

この後まともに食べられないかもと思いながら
はふはふと麺をすすった。

体の中から温まった。

よかった。これでまた頑張れそう。

明るい店内
でも、外は暗い


結果オーライだけど、大変だったな。

さっきまでの雨を思い出す。
目が悪いのも影響している。

晴れていたって看板は近づかないと読めない。
雨の日、読めるわけがなかったんだ。

無茶だったんだろうか。
それとも、妥当な選択だったのか。

終わった今となっては、どちらとも言えない。

ただ、間違いなくこの旅一番の
恐ろしい天気だった。

高速が安全ってこういう意味だったのか。

新たな知恵を身をもって学んだ。

その後は、時間までのんびりと過ごした。


フェリー乗船の時間が来た。
雨に濡れる覚悟で、またひと通り装備をつける。

バイクのところに行く。
雨は小降りになっていた。

『乗船デッキは滑るから危ないですよ』

事前に教えてもらっていたことを思い出す。
濡れた鉄板の上。滑るに決まっている。

『はい!どうぞー!!』
係の人に声をかけられる。

ゆっくりと前に進む。

アクセルは急に開かない。
右手のブレーキも極力使わない。

じわっとアクセルを開けながら
船の中に入って行った。


指示された場所にバイクを停め
客室部分へ登って行った。

カッパを脱ぎ、椅子に腰掛けて
ホッと息をつく。

無事に熊本を発てるんだな。

窓から外を眺めた。

空は曇っている

どこを走ろう。

心は先に、普賢岳へ飛んだ。
普賢岳も楽しみにしていた道だった。

山に突っ込んで大丈夫なのか?

阿蘇は諦めた。
でも、正解だったと思う。

だって、高速を走った時
阿蘇の姿は全く見えなかったから。

普賢岳も見えないんだろうか。

正面は見えないが、天草の方は見えた。

裾野…しか見えない

元々の高さがわからないので比較できないが
山は雲におおわれているような気がする。

天草も通らなくて正解だったんだ。

自分の判断を褒める。

普賢岳はどうかな。

前方なので見えない。


鳥…!!


鳥が飛んでいるのを見つけて
甲板に行ってみた。

何の鳥かな
船についてきている!

けっこうな速度を出している船に
たくさんの鳥たちがついてきている。

それが面白い。
しばらく眺めてしまった。

雨は止んできたかな
少し空が明るい



船内に戻り、この先のルートで悩む。

フェリーは島原半島の東の真ん中に着く。

そこから本当は半島を突っ切る形で
山の中に切り込んでいきたいのだが…

難しい場合、右回りか左回り。
どちらが、より安全なのか。

いくら考えてもわからない。

観光案内所で聞くか。

最終的に出た案は「人に聞く」だった。笑
知っている人に聞いた方がよい。

船を降りたら、すぐに出発せず
島原の観光案内所を訪ねることにした。



下船のアナウンスが流れた。

やはり雲でおおわれている


いよいよ島原上陸だ。

雨は降っていない様子。
熊本の雲から抜け出て来たのか。

それでも念のためカッパを着て
バイクのところに降りて行った。

ポツンとひとり待ってくれていた


慎重に下船し、観光案内所を探す。

しまばらの文字

ここかな?

バイクを停めた。

相棒をパチリ

中に入ると、案内所には
若いお姉さんしかいなかった。

道を聞いて…わかるんだろうか。

不安がよぎりながら、恐る恐る聞く。


「今日の天候で一番安全な道はどこですか?」

『今日は山は雲の中なので…北側でしょうか』


なんとも心もとない返事。

信じていいんだろうか。

不安が募る。

が、地元の人なんだから。

若い女の子だって、地元のことは
ある程度知っているはずだ。

彼女の言葉を信じることにする。

北側の海沿いを走ろう。

島原半島を左回りに半周することに決めた。


出発する。
空は曇っているが、雨は降って来ない。

『島原城』

看板が見えて、走り過ぎながら
矢印の方を見てみた。

カッコいい!!!

交差点の隙間から一瞬見えた島原城は
堂々として迫力があった。

ゆっくり見学したいなぁ

そう思う気持ちを押さえて、先を急ぐ。
今日の宿は、長崎なのだ。

島原城に後ろ髪を引かれながら

次に来た時は、絶対寄るぞー

心の中で叫びながら、島原の町を
走り抜けて行った。



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