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九州ツーリング その1 出発


3/27(月)朝4:30
準備のために起きる。

まずは髪の毛を三つ編みに。
これで風に吹かれて
バサバサになるのを防ぐ。

暑すぎない程度に服を着て
次に台所の片付け。
最後に洗濯物干し。

わたしがいない間
気持ちよく使えるように。

帰って来たら
すぐに着られるように。


夫も起きてきた。

「おはよう」と挨拶しあう。
朝ごはんを食べる。

息子が降りてきた。

『〇〇ちゃんは?』
「まだ」

息子に聞かれて、娘を起こしに行く。

予想はしてたけど、起きない。


バイクの荷物の最終チェック。
ここでフェリーチケットを思い出した。

第六感か虫の知らせか。ふと何かが降りてきた。
神様、教えてくれてありがとう!


もう一度、起こしに行く。
起きない。


夫がピースのさんぽから帰ってきた。

『〇〇は?』
「何度も起こしてるけど、まだ起きないの」
『・・・行くの、止めるか』

出た!いつものやつ。
夫がすねた。

娘を起こしに行く。

「起きて!いつものやつ出たよ!!
 パパすねてるよ!起きて!!
 行くの止めになっちゃうよ。いいの!?
 みんなに迷惑かけてるよ!
 起きて!!起きてったら!!!」

起きない。
布団をひっぺがす。

それでも起きない。


これ以上、夫の機嫌が悪くなると困るので
先に出かける予定を変更して
娘を起こしてみんなが出発するまで
見送ることにした。

夫は『もう行かなくていいよ』と
パソコンの前で仕事を始める。

起きて!起きて!と体をゆさぶる。
反応がないので、体中を叩く。

「起きて!!
 とにかく体を起こして!
 車にだけ行ったらまた寝ていいから!!」

起きない。


『いいよ。行かなくて』と夫の声。
「そうやってすねないで!」とわたし。

何日もかけてずっと準備をしている夫は
みんなの協力が感じられないとすねてしまう。

車を綺麗にし、ピースを洗って
旅先で必要なものを全て車に載せる。

いつも旅先で必要なものは
何でも出てくる。完璧だ。

想定される場面への想像力が優れているのか。
「必要なものがない」ということがない。

当日混まないうちにさっと出たいのだ。
そのために全ての準備を済ませている。

それが、いつもこのやり取り。


いつもこうなるのが情けなくて
だんだん怒りが込み上げてくる。

「起きて!!
 いつもこのやり取りで
 パパと夫婦喧嘩になるんだよ!

 旅行の前にこんな雰囲気になって
 楽しく旅行できる?

 わたしも朝からこんなに怒るの
 嫌なんだけど!!」


起きて!起きて!!と
体中をバシバシ叩くこと数十回。

娘がようやく体を起こした。


このやり取りが毎回あまりに嫌で
家族旅行に行かなくなってしまった。

唯一スムーズに行けるのは
娘が寝る前に出発すること。

娘は旅行の前日は
2時まで起きて準備をしている。

そのタイミングで車に乗って
車で寝れば起こさなくていい。

どうしても早く行きたい時は
そうやってしのいでいる。

でも、夫は本当は夜は寝たい。
だから今回は早く出なかったのだ。


日はすっかり昇っている。
わたしの出発もかなり遅れてしまった。

仕方ない。
このまま置いてはいけない。

娘の荷物を車に運び
運んだことを娘に伝えて
ようやく自分の支度を始めた。

自分の荷物を玄関まで運んだ頃
怒りで顔つきが変わっている娘が
横を通り過ぎて行った。


怒りたいのはわたしの方なんだけど。


急ぐ旅じゃないからいいけど
スタート、気分悪いなぁ。

やっぱり何人かで旅行すると
こうやって色々あるなぁと
早く一人旅がしたい気持ちになった。


先に出る。

「先に行くね!」

夫に声をかけて
バイクが置いてあるところまで行った。

準備をしていると
先に3人の方が車で出て行った。


無事に出られたんだ。


ホッとして自分の準備を進める。
実は、ここからが大変だった。


バイクのカバーを外す。

あっ!カバーどこに入れるの?

バイクカバーを車で
持って行ってもらえばよかった!!

もう行ってしまった。
背中のリュックに詰めるしかない。


パンパンに膨らんだ荷物を
初めてバイクの後ろに縛る。


どうやったら外れない?

高速道路で落としてしまう様子を
想像して怖くなる。

リュックの腕を通すところを
バイクの下側に回してみた。

胸の辺りの留め具を下側でつないでみる。

ピッタリだ!
これでバイクにリュックが背負えた。

腰ベルトも下に回して留めてみる。
これもピッタリ留まる。

これだけでもう
荷物は落ちなくなった。

後は、クルッとひっくり返って
タイヤ側に荷物がいかないように
買ってきた紐でしっかりと縛る。

塩梅がわからず四苦八苦する。

途中で紐が外れないようにしっかり縛る。


リュックの胸の留め具のせいで
リュックがかなり前側に固定されてしまった。


これで乗れるのか?


不安が募る。
でも、これ以上方法がない。


カバーでパンパンになった
小さなリュックを背負い
観念して、バイクにまたがることにした。

またげない。

後ろが荷物で高くなっているので
いつもより高く足を上げないと
シートに座れない。

右膝を曲げる。
膝がぎりぎりシートの上を通るくらい足を上げて
右手で足の甲を持って足先を持ち上げた。

なんとか右足がバイクの向こう側にいった。
でも、足の付け根がつってしまった。

大腿骨のあたりをしばらく押さえる。
これが毎回なのは辛い。


どうする?


どうしようもない。
ようやく痛みがおさまった。



次に、ハンドルに手を置いてみる。


近い!
これで、走れるの?


いや。
正直、走れる気はしなかった。

体がこんなに前に来ていたら
背中が立ってしまう。

そして、背負っているリュックと
後ろの荷物が当たる。

背中はむしろ反らさないといけない。


これは長距離は走れないな。


荷物を車に積んでもらえばよかったと
心の底から後悔した。


でも待って。

長野に行けないってことは
九州も行けないよね。


この状態をなんとかしないと
旅には出られないってことじゃない?


自分で自分をなだめて
ようやくエンジンをオンにしたのだった。





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