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5年前の昨日、 空へ旅立ったあなたへ


5年前に命を絶った友人へ書いた手紙です。


   🍀   🍀   🍀


さちさんへ

あなたの名前はさち
わたしの名前はさちこ

同じ"さち"だったよね。


同じなのは名前だけじゃなく

子どもを産んだ年齢。
第一子が男の子だったこと。
息子の誕生日が2日違いだったこと。

あなたとわたしは10歳違いだったので
10年前のわたしと同じ時間を
あなたが過ごしているような
そんな気がしていました。



5年前の昨日。
あなたは自分の命に別れを告げましたね。

わたしは
次の日の朝、つまり今日。
朝の9時過ぎ、役所に電話をした時に
そのことを聞きました。

あなたに
「わたしの友だちを会わせたい。」と思い
役所の保健師さんに
相談するための電話でした。



あなたがもうこの世にいない。


それがどういうことなのか
初めは意味がわかりませんでした。


もういない?
2日前は
あんなに元気になったと思ったのに?


2日前
あなたはネットサーフィンをして
『うつ病から生還した人』を
探してみたと言ってましたね。

わたしは
うつ病から生還した友だちがいたので
「あなたに会わせたい」と
その人やその人のご主人や役所の人に
相談をしている最中でした。


「今、相談してるからちょっと待ってね。」


どうしてそうひと言
メールを入れなかったのでしょう。

同じように
うつ病を克服するためのヒントを
同じように必死に探していたのに。


あなたのその元気さに
わたしはうっかりしてしまいました。

「大丈夫」と。


元気な時ほど、自死を実行しやすいこと。

あなたが亡くなってから知りました。


あなたのその元気さは
危ういサインだったのに
そこに気づかず心配すらしなかった…

自分の無知を激しく悔いました。



去年、あなたのことを
noteに書き綴りました。


昨日はあなたの命日で
レクイエムのような音楽を聴きながら
あなたのことを想っていました。

夜、ピースが立ち上がって
じっとわたしの腕につかまって…

耳が下がって頭が丸くなっているので
「撫でて欲しいんだな」と
頭をずっと撫でていたけれど
ピースはずっとつかまったまま
じっとしていて。


一緒に空を見上げました。


その時は
「どうしていつもみたいに
 はしゃがないんだろう?」
って不思議に思っていたけれど
ピースもあなたのことを
一緒に悼んでくれてたんだなと
後で気づきました。


ピース、いつもありがとね。


そう。
さちさんは知らなかったかもしれないけど
仔犬を拾ったのです。

息子がピースと名付けました。

さちさんは空からずっと見てて
知ってるかもしれないね。



去年ずっとうつ病に苦しんでいたこと
あなたと同じ病いにかかっていたこと

あなたと同じように
「わたしはいなくなった方がいい」
と思っていたこと

生きていることは
迷惑をかけてしまうことだと思っていたこと


いなくなろうとした時
さちさんが助けてくれたんでしょ?

だってあなたのご主人の顔が
浮かんだもの。


さちさん。
あなたのご主人は毎年
あなたの息子さんの写真を
送ってくれるのです。

一度、絵本を送ったら
絵本より高そうなお菓子が
「御礼に」って送られてきたのよ。

困っちゃってそれから
「うかつに物は送れないな」
って思ったの。笑


良い人だよね。
幸せだったよね。

ご主人のために…なんて
いなくならなくて良かったのに。

入院して
病気に専念すれば
ご主人だって安心して
また一緒に暮らせたかもしれないのに。



今、気づいたけど
あなたがパニックの発作を起こした日。
1月4日でしたね。

わたしが「ゴミ屋敷で孤独死したい」って
願望に取り憑かれるようになったのも
1月4日だった…

ビックリした。偶然なのかな?



去年の2月。
あなたがいなくなった日が近づくにつれて
わたしも同じように「いなくなる」選択を
したらどうしようって。

しない方がいいんだろうけど
幸せも楽しさも感じられなくなって
感情が凍ってしまっていた間
自分がとっさに何をするかわからなくて
「いなくならない」という自信がなかったの。



今までに2回
死のうと思ったことがあってね。

死のうと思った時
頭に浮かんだ人のことを想うと
死ぬことはできなくなったから

「今回も死ぬとしたら
 誰の顔が頭に浮かぶのか?」

って考えたら
初め、誰の顔も浮かばなくてね。

あぁ。
「今回は死んでしまうかも」って思ってたの。


そうしたらそのうち
あなたのご主人の顔が浮かんでね。

そしたら「死ねない」って思った。


さちさん。
あなたがわたしを守ってくれたんでしょ?

「あなたは生きて!」って。


あれから一年経って…

さちさん。
わたしは今も生きています。



どうして、うつ病から生還できたのか。

あなたとのやり取りから
うつ病のことを学んでいたから。

だから生還できたのだと
一年経って気がつきました。


自分の様子が変だと感じるきっかけ
サインになる言葉や行動

死に近づく兆候
そこに至る思考回路

そして行動にうつす心理とタイミング。


あなたの話をずっと聞き
メールでやり取りをして
あなたの変化や気になる言葉を
ずっと書き留めていたわたしは
知らない間にうつ病に
とても詳しくなっていたのです。

その知識が、その経験が
わたしをうつ病から生還させてくれた。


それはあなたが教えてくれた全てでした。



あなたの役に立ちたいと
あなたの支えになりたいと
その一心で
あなたの心に寄り添っていたけれど
結局、助けてもらったのは
わたしの方だったのですね。


あなたは空から
いつもの笑顔で笑って見ているのかな?

助けてくれて本当にありがとう。



昨日、ご主人にお花とお菓子を送りました。

お花は、さちさんあなたに。
お菓子は、息子くんに。

5歳になるんだよ。
大きくなったよね。きっと。


あなたは毎日見守っているのかな?
ご主人は笑顔で暮らしているかしら?


さちさん。わたしね。

あなたが不安に思った時に
いつでも迎え入れてくれる場があって
「不安だ」と話せる人がいる場を
作りたいって思ってね。

この5年。
心に漂わせていたらね。

あなたの住んでいた近くに
そんな場が必要だと
昨年の夏に役所の人が言ってね。

「誰か運営してくれませんか?」って
募集されていることを教えてくれた人がいて

「やってみたいです」

って手を挙げたの。


場所も探さないといけなくて
なかなか見つからなくて
去年の夏には間に合わなくて
「来年の夏にまた応募しよう」って
そう思っていたらね。

年末、突然降って湧いたように
素敵な物件が見つかって。


あなたがいつでも来られるような場を
あなたのように
子育てを不安に思った時に
いつでも話しに来られる場を
作りたいと思っています。



出産をきっかけに"産後うつ"になる確率は
出産前に
うつ病になったことがある人の方が
うつ病になったことがない人より
ずっと高いってことを

妊娠中から母親も知って
サポートする周りも知って
役所も把握して
それで出産に備える。

それが当たり前の世の中になるといいよね。


さちさんが自分で気づいて
出産後2週間で
自分で役所に電話してSOSしたこと。

生後1ヶ月で
自ら母子入院を決めて入院したこと。

本当に聡明なあなたらしい決断で。


その後もずっとうつ病と闘って。

そして、生後半年になったのを
確認したかのような時に
少し元気が出たタイミングで
その力で自ら命を絶ってしまったよね。


だから、わたしは気をつけたよ。
うつ病は治りかけが一番危ないんだって
あなたに教えてもらっていたから。

結局、あなたも知ってると思うけど
わたしはうつ病の治りかけで
バイク事故に遭い
死ぬことが物理的に
できなくなってしまった。


だって左手が動かないから
紐は結べないし
身体が思うようにならないから
どこか遠くにも
行けなくなってしまったから。


昨日、親戚の花屋に
お花をお願いしながら
その話しをしたら

「娘ちゃんがあなたを守ってくれたんだね」

って言われてびっくりしたの。


たしかに。

「娘が後ろに乗ってなかったら
 鎖骨も肩甲骨も折れなかったのに。」

ってよく思っていたから。


あの日、初めて娘を乗せて
夕日を見にバイクで出かけたのは
わたしが
『うつ病で命を絶たないために出かけた』
ということだったみたい。


わたしはあなたに助けてもらって
娘にも救ってもらっていたのね。

本当にありがとう。



そろそろ、朝が明けてきたみたい。

一年経って
あなたにこんな報告ができるくらい
うつ病から遠ざかってきていることを

あなたに
御礼とともに伝えたいと思います。


改めて。

さちさん。ありがとう。
これからも見守っていてね。



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