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九州ツーリング その9


4/4(火)
今日、幼馴染の家を発つ。

朝、朝食の前に荷造りをする。
幼馴染と一緒に朝ごはんを食べた。

たくさん話したな。

不思議なほど親の話をしてしまった。
なぜだろう。

同じことを昔もしたらしい。

子どもを産む前にも
会って話していたそうだ。

今は介護の前に話している。

『前にも言ったけど
 お母さんと話したほうがいいよ』

幼馴染はそう言った。

前もそう言ってくれたのか。

だから、親と対峙できたのかな。

どうしてこの子には
こんなに話せるんだろうと
不思議に思いながら
朝ごはんの時も話してしまった。

ここに来る前、実家に寄り
父母と話した言葉が忘れられないんだろう。

この旅は、ずっとこのことを
考えてしまうのかな。


9時半頃出ると言ったのに
結局11時を過ぎてしまった。

荷物をバイクに積む。
紐でしっかり固定する。

なぜか荷物が増えた気がする。
どうして背中のリュックが
こんなにふくらんでいるんだろう。

お土産を昨日、宅配で自宅に送った。
これで荷物は減ったと思ったのに。

幼馴染にお菓子を手渡される。
実家でも渡されたことを思い出した。

旅先で食べよう。

10年に一度しか会わないのに
会えばその時間がすぐ埋まるのは
子どもの頃を一緒に過ごしたからなんだろうな。

団地にいた頃の友だちで
今やり取りをしているのは
この子だけだったんだと気づいた。

「親の話ばっかりしてごめんね。
 色んなヒントもらえてホント有り難かった」

お礼を言うと

『楽しい旅を。気をつけて』

と幼馴染は笑顔で言った。


ありがとう。楽しかった。

また来たいと思った。


空は青い。
今日まではツーリング日和だ。

住宅街で暖気は音が響くので
早々に出発した。

少し大きな道に出る時に
ふとメーターを見たらガゾリンがなかった。

あれ?入れなかったっけ?

幼馴染の家に行く前に
ガゾリンを入れようと思っていたはずなのに。

記憶を呼び戻す。

。。。

入れた記憶がなかった。

入れるつもりが
家を探すのに必死になり過ぎて
忘れてしまったのかも。

夕方は疲れてくるんだなと
改めて実感する。

今日、無事にホテルに着けるんだろうか。


停まってガソリンスタンドを探す。
高速の入り口前にあった。

ここならちょうどいい。

道を頭に入れて走り出す。
初めはよく覚えられる。

わかりやすい頭に笑ってしまった。

スタンドでガソリンを入れ
高速に入る右折レーンに入った。

道路を緑色に塗ってくれている。

最近見かけるようになった。
親切な表示だ。

安心して緑の道を走り、高速に乗った。

加速車線でスピードを上げる。
本線を走る車を確認する。

いない。

安心して本線に入った。


すぐにトンネルに入った。

トンネルは苦手だったけど
(閉所恐怖症なので)
横風がないので安全な場所ではある。

今日からの旅を思う。

今日から5日間走る。
そんなに毎日走ったのは
それこそ19の時以来か。

右手もつのかな。

長野から関西の実家。
実家から四国のここまでは
間に実家で休む期間を設けたので
連続して走ってはいない。

実家からここまで走るのに
2日連続で走ったが
手の握力は落ちているものの痛みはない。

走っていて気をつけたことは

ずっとアクセルを持たないこと
信号待ちで手首のストレッチをすること
走っている時も定期的に右手を離し
右手を休ませること

右手を離した時に
右太ももを手のひらで叩くと
こりがほぐれることがわかった。

高速だと、少し加速しておいて
右手を離す。

エンジンブレーキで減速する間に
右手のひらで太ももを叩く。

後ろの車が追いついて来ないうちに
またアクセルを持って加速するといった具合。

これで、現状よりは悪化はしない。


長野に向かう時
無理な姿勢で走ったため
右手の握力が無くなってしまった。

箸で食べ物をつかむのがやっとだったが
その頃よりは良くなってきている。

結局、右手次第だから。

遠く離れた地でギブアップしても
助けに来てもらうことはできない。

1人で何とかしないといけない。

そんなことを思っていたら
トンネルの出口が見えてきた。

白く光る点がだんだん大きくなる。

まぶしい光に包まれた瞬間
おおわれていたものから解き放たれた。

空だ!

どこまでも突き抜けるような
青い青い空。

左前方を見ると
街の上を走っているのがわかる。

いくつかの街を
ワープするように通り過ぎている。

桜をあまり見ない。
終わりかけのようだ。

やっぱり暖かいんだな。

南国高知はやはり暖かかった。


昨日行った川の上を渡る。
ここまで連れてきてくれたのかと
改めて幼馴染に感謝の気持ちが湧く。

この旅で昨日のように
両親のことを考える時間が
これからたくさんあるんだろう。

予感のようなものを感じながら
川はあっという間に後方に消えていった。

高速を走る。
風は暖かい。

今朝はズボンを一枚減らした。
そうか。そのせいで荷物が増えたのか。

マイナス2度だった長野とは大違いだ。
陽射しも明るく、とても暖かい。

遠く、四国まで来たことを実感した。


高速を降りた。

お昼はここで食べる。

道の駅を探してあった。

道の駅かわうその里すさき

いい天気!!


かわうそはいない。
昔、この辺りにいたのかな?

2階の食堂に上がり、メニューを見る。

その土地のものが食べたい。

須崎の特産物がわからないまま
メニューに須崎の文字がある丼を頼んだ。

須崎カンパチ丼

美味しかった♪


この辺りはカツオが有名で
毎日のようにカツオをご馳走になっていた。

カンパチも有名だったんだろうか。。

こうやって旅行客は
だまされていくのかな?とひとり笑いながら
広い座卓で美味しくいただいた。


実は19の時。
出発が昼になってしまい
最後、宿にたどり着けなくなって
野宿をした。笑

室戸岬で知り合った人は
九州に帰るところで
幼馴染のお父さんに誘われて
一緒に泊めさせてもらっていた。

その流れで午前中は桂浜へ遊びに行き
散々遊んでから出発して足摺岬まで行ったから
宇和島にたどり着けなかったんだ。

結局、宿をキャンセルして
どこかの公園でテントを張って
わたしにテントを貸してくれた。

お兄さんは
公園のベンチで寝るよと言って
わたし1人、テントで寝かせてくれた。

20代だったんじゃないかな。

たまたま苗字が同じで、笑
お兄ちゃんのような気分になって
懐いてしまったが、とってもいい人だった。

その2日間
2人で走る楽しさを知った。

先導してもらった安心感からか
その区間の景色をよく覚えている。

もう一度走りたいと願った道も
その間にある。

いよいよなんだな。

昔を思い出しながら
同じ境遇にいることに笑ってしまった。


このままだと今日のホテルには着かない。

もう少し手前で宿を取ることも考えたが
そうすると、明日がキツい。

明日は熊本まで行こうとしている。
今、高知なのに。


そんな理由から、昼食後は
これから走るルートを念入りに調べた。

行きたいところは
四万十川の沈下橋と足摺岬

走る方向が違う。

足摺岬に先に行くと
沈下橋は戻る形になり、行きにくい。

でも、先に沈下橋に向かったら
足摺岬には…行けないかもしれない。

どちらかひとつとしたら。

考え方を変える。

どちらかしか行けないとしたら
どっちに行きたい?

頭の中で反すうし…

沈下橋に決めた。

足摺岬には19の時に行っている。
来たかったら、また来ればいいんだ。

室戸岬ではゆっくりできた。
それで満足しよう。

南阿波サンラインを思い出す。
また来たいところが増えるって幸せなことだよ。

沈下橋を目指すことにして
食堂を後にした。


とにかく時間が足りないので
R56高速道路無料区間を走ることにした。

トンネルが多く
またしてもワープしている気分。

この区間にも
いい街、いい道路はたくさんあるんだろうな。

真っ直ぐ速く走れる高速は
移動する時に距離を稼げるけど
全て通り過ぎてしまうなぁとしみじみ思った。

『この区間、峠になってて走ると面白いよ』

そう幼馴染が教えてくれていたのに。

そういえば
砂浜の写真が撮れなかったと話したら
ここなら撮れるかもと教えてくれていた。

あの砂浜も通り過ぎて
しまっているんだろうか。

全部の街、全ての道は走れない。

そうわかっているはずなのに
もったいないと思う気持ちと
先を急ぎたい気持ちとが行き来する。

トンネルは周りが見えないから
こうやって色々考えてしまうんだろうか。

走れなかった峠
見られなかった砂浜を断ち切るように
視界を前に向けた。

出口が見える。
光がふくらんでくる。

後悔はしない。
次に来る楽しみを増やしているだけだ。

そう言い聞かせながら
高速を飛ばして先を急いだ。





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