九州ツーリング その10
四国の高速を走っている。
高知から遠ざかり
愛媛に向かっている。
トンネルが多く
街は時折りしか見えない。
今日の行きたいところ。
四万十川の沈下橋。
前に一度、車で通ったことがある。
四万十川は、水がとろんとしていた。
底が見え、水面は時折りきらめいていた。
あまりの透明度とゆるやかな水の流れに
そんな気がしたんだろう。
水の表面張力が高いと言えば
伝わるのかな。
とろんとしている川面。
その水をもう一度見たかった。
静かに流れるというより
水という物体におおわれているような
そんな川面。
それを欄干がない沈下橋で
水面のすぐ近くまで寄って
じっと見つめていたい。
あの水のとろみは
川の高低差が少ないから起きるのでは?
どこに行けば
流れすら感じないような
あの水に出会えるのか。
さっきの道の駅で
四万十川を上流に向かって
上がっていこうと決めていた。
まずは、高速で行けるところまで。
四万十町中央インターで下道に合流。
R56を南下する。
すぐにまた高速の入り口が見えたが
今度は入らずに直進する。
全て高速は何か違う気がする。
少しは、その土地を走りたい。
その後のR56は快走路だった。
カーブ、路面良し。
気持ちよく走り抜ける。
道が工事中になり、車が並ぶ。
道の駅が見えた。
道の駅 なぶら土佐佐賀
新しい道の駅のようだ。
建物の脇にバイクを停める。
お手洗いを借りて
エネルギー補給にとお菓子を出した。
幼馴染が持たせてくれたお菓子。
ありがたくいただく。
餡が甘くて美味しい。
もなかの皮がパリパリだ。
友だちの気持ちを
ありがたくいただいているような
そんな気持ちになった。
看板の足元のコンクリートにもたれて
休憩をしていた。
目線を上げる。
昨日行った川は
とろんとしていなかった。
川は当たり前のように
とうとうと流れていた。
今日の青空なら
四万十川の水は青くきらめくだろうか。
急ごう。
R56に戻った。
海沿いに出た。
長い砂浜が見える。
ここが幼馴染の言っていた浜辺かな?
高知に着く前に見た砂浜ほど
大きくはない気がする。
でも、せっかくなので
バイクを停めて写真を撮った。
また、車の流れに乗って走る。
こうやって走ると眠たくなってしまう。
午後2時台。
いつも眠くなる時間帯だ。
暖かいのも眠けを誘うのか。
空気がやさしく体を包み込んでいる。
実は、この辺りの景色の記憶がない。笑
なんとかバイクを走らせて
車の後にくっついて走ったみたいだ。
覚えていたインターの名前が見えた。
この後、すぐに川が見える。
見えたら手前を右折。川沿いを走る予定。
県道342号線の看板を探す。
探したけど、看板は見当たらず
橋を渡り始めてしまった。
橋を渡り切る。
渡りきったところで右折。
すぐにバイクを停める。
四万十川。
ようやく来られた。
スマホを取り出す。
目の前の公園で
中学生くらいの女の子が
2人ブランコに乗っている。
一瞬、娘のことを思い出した。
スマホで調べるが
こちら側では無理そうだ。
もう一度、あの橋を渡るのか。
あの事故を思い出したが
勇気を出し、気をつけて向きを変えて
元来た道へと戻った。
橋をもう一度渡る。
気をつけて渡りきった先で左折する。
不安がよぎるほど、頼りない。
堤防の上を走る。左は四万十川だ。
川面が遠すぎて水の様子がわからない。
水はとろみを帯びているのか。
道がさらに細くなってきて
あまりにも不安で、堤防を降りてしまった。
降りた先の道をとりあえず走る。
勘だ。もうわからない。
とりあえずアップダウンして
どこか家の前を通り過ぎ
ふと、大きな道に出た。
R441。
走ろうと思っていた道だ。
当て勘で走った方向が合っていたらしい。
そして、これまた勘で左折した。
合っているのかわからない。
なんとなくそう思って走り出してみた。
悩む時間が短くなってきた。
川沿いを走る。
車はほとんどいない。
砂のせいか、少し道は白いが
道幅はあり、気持ちのよいカーブが続く。
四万十川の支流をさかのぼる。
川の流れを確かめる。
後方に流れていっている。
間違いなく上流に向かっている。
大丈夫だ。
しばらく走っていたら
一つ目の沈下橋の看板が見えた。
佐田沈下橋
上流の方が川幅は狭い。
こじんまりとした沈下橋を目指していた。
もう少し上流に行こう。
左折すると見えたはずの橋を
通り過ぎて先に進んだ。
川沿いや山あいをしばらく走る。
知らない道は時間の流れを遅くする。
だいぶ走った気がする。
目的の橋を過ぎてしまったんじゃないか?
左に県道が現れた時
さすがに停まってスマホを見た。
その先のトンネルを抜けて
ようやく目指していた橋まで来た。
高瀬沈下橋
ここが有名かどうかはわからない。
前に来たところではないと感じた。
ここは川面に近いだろうか。
川幅は小さいか?
ゆるやかな下りの終わりにバイクを停めて
ゆっくりと川の方を向いた。
橋が高い。
イメージしていた橋とは違う。
ヘルメットを脱いで
橋を歩き始めた。
下をのぞいて川面を見る。
青くない。
昨日の方が青いくらい。
水がとろんとしていない。
特別きれいというわけでもない。
あの場所は四万十川のどこだったんだろう。
もう一度見たかったあの水面は。
周りを見る。
向こうまで歩いて振り返る。
ゆっくりと歩いて
バイクの方に戻って行く。
車が来た。
橋の広がったところでやり過ごす。
川の上にわたし一人。
ここに来たかったんだろうか。
川の流れはあまり感じない。
たぷんとたまっているような川面。
風の音が一番耳に残る。
静かに川を見つめる。
しばらく川面を見つめて、目を上げた。
バイクに視線を向けた。
行こう。次の場所へ。
足摺岬へ…これから行けるだろうか。
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