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アウシュヴィッツで人間を考える

先日、アウシュヴィッツ強制収容所を訪れた。
歴史に興味がない人でもアウシュヴィッツのことは聞いたことぐらいあると思う。ここは第二次世界大戦でナチスがユダヤ人を迫害し強制労働をさせた場所、そして何十万という人が命を落とした場所である。

帰国前に絶対に行かなければと思い、日本人の友だちと訪れることにした。
その日はめちゃくちゃ寒くて、気温は-3℃、体感温度が-7℃、雪も降ってるっていう過酷な環境の中アウシュヴィッツに向かった。英語ツアーに参加したけどほとんど外を回る感じだったのでほんまに防寒した方がいいです。

アウシュヴィッツの周りはほとんどなにもなくて、ゆったりとした田舎の中に急にだだっ広い収容所があってそれが悲壮感を際立たせてた。
ツアーが開始されて第一収容所の有名な門をくぐる。

「働けば自由になる」

壮絶な歴史の舞台になったとは思えないようなところだった。
ガイドの方の話を聞きながら建物の中の展示を巡っていく。かなりショッキングな展示も多かった。第二収容所のビルケナウにシャトルバスで移動する前に休憩時間があった。寒い体をスープで温めながら色んな事を考えた。
ガイドの方が解説してくれたことは本で読んでいてすでに知っていたことが多かった。でも本で読んで歴史として理解するのと、実際に現場を見るのはかなり違った。受け入れがたい、目をつぶりたくなるような事実を目の前にして、全てを真に受けていたら自分が壊れてしまうような気がして、壁一枚挟んで自分を守りながら見学することしかできなかった。

ビルケナウに着いた。ここは第一収容所と違って建物内の展示はほとんどなく、広い敷地を自分の足で歩きナチスが証拠隠滅のために破壊した跡地などを見た。

ビルケナウの線路

収容所まで伸びる線路やガス室の跡を見るのは正直かなりきつかった。収容所が解放された1945年からまだ100年も経っていない。自分がこの時代にユダヤ人として生まれていればここに来る可能性もあった。たった80年ほど前にここで惨事が繰り広げられたことを信じたくなかった。
私と同じ人間が、同じ人間に対して、これだけのことができてしまう、人の恐ろしさも感じた。
色んな人に想いを巡らせてみたりもした。当時のユダヤ人はもちろん、監視役の親衛隊、ガス室で労働させられたユダヤ人、それを見ていた当時のヨーロッパの人々、ヒトラー。何も知らない自分にもどかしさを感じた。一人の考えでこんなにたくさんの人を動かせてしまうことが怖くなった。

過酷な見学になったけど、大学生のうちに行くことができて本当によかった。まだまだ知らなければならないこともあるし、伝えていかないといけないこともたくさんある。

アウシュヴィッツは単に歴史を学んで亡くなった人への追悼を示すだけの場所ではない。二度とこんな歴史を繰り返さないために今の自分がどんな行動をすればいいのか、人間とはどのようなものなのかを考える場所だった。


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