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「うるさい! 」「うっせぇわ! 」は英語やスペイン語でなんというの?

日本の若者の間を中心に『うっせぇわ』という曲がとても流行っているので、耳にしたことがある人も多いはず。もとは「うるさい」という形容詞ですが、英語やスペイン語で相当する表現はなんでしょうか?じっくり考えてみましょう!

『うっせぇわ』の曲とは

2020年10月にリリースされ、瞬く間にYoutubeでの再生回数がうなぎのぼりとなったヒット曲です。2021年3月中旬時点で再生回数9千万回越えなので、一億回に到達するのもすぐでしょう。現役女子高生シンガーAdoの圧倒的な歌唱力と耳に残るキャッチーな曲調で聴くものの心をつかみます。

社会現象になるほど人を惹きつける一番の理由は歌っている世界観です。毒々しく、攻撃的。

『無理を通せば道理が引っ込む』の現代社会で、「これ以上、無理です!」と今まで黙っていた人が、思いっきり振り切れて凶暴化していく感じ・・・。

社会の歪みで最大限までたわんだエネルギーが、一気に炸裂しているような曲調です。それはまるで、静かに沈み込み続けたプレートが跳ね上がって起こる地震のよう。

ネガティブパワーが全開です。

でもそれは、正常化へのプロローグというか、発散されるべきエネルギーともいえます。だからこそ、若い世代を中心に共感を呼ぶのだと感じています。パンデミックで強いられる我慢も限界で、社会に蔓延する鬱々した感情にもマッチしてるんですよね。

『うるさい』、『うっせぇわ』は形容詞

「うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ!!!!!」と畳み掛けてくるすごみある曲なのですが、もとは形容詞の『うるさい』です。この主な意味するとろは、『音量が大きくて、腹立たしい、邪魔に感じる』など。

でも、それ以上の意味をもって実際、使われています。

「うるさい!」の英語表現は"Noisey!"ではない

「うるさい!」と誰かに向かって言う時、ただの大きな音量をあらわす形容詞ではない、状況描写以上の攻撃性、凶暴性そして相手を黙らす威圧感があります。

そう、知っての通り、「うるさい!」の同義語には、「静かに!」「黙れ!」があります。それぞれニュアンスと効果が異なります。

静かに!=形容動詞(静かだ)→相手のうるさい行動を諌める効果
黙れ!=動詞(黙る)→相手の行動に直接関与しやめさせる効果

よく、先生が教室で、うるさい生徒を注意するとき、

「そこ、うるさい!静かに!」

と、言ったりしますよね?

英語だったら、"Be quiet, please!"(静かに!)
スペイン語でも、"¡Silencio, por favor!"(静かに!)

こういった表現が妥当です。わざわざ、うるさいという状況については、ふれる必要があまりない感じ。そもそも、うるさいから、静かにしてほしいわけで。そして、Pleaseというときに、上から圧をかける感じです。(下からのお願い口調では決してないです。)

一方、日本語表現の場合、「うるさい!」だけで、"Be quiet!"(静かに!)から、さらに踏み込んだ"Shut up!"(黙れ!)の意味までカバーしています。

また、音量の大きさを表す形容詞として「うるさい」を英語やスペイン語に直訳しても、noisy(英語)やruidoso(スペイン語)では、状況描写以上の効果は全く期待できません。

形容詞「うるさい!」が動詞命令形「黙れ!」の意味で使える理由

これは、日本人の感覚に大きく依存する部分があります。それは、誰かがうるさいと感じるこをすることが、社会的な悪としても捉える土壌があるからです。

「うるさい」→まわりに迷惑→罰すべき対象

日本の社会では、まわりに迷惑をかけない存在であるというのが、重要視される度合いが高い気がします。集団プレーを重んじる文化なので、そうなりますよね。

一方、個人プレーの多いスペインでは、騒々しい人は多いので、思考回路が若干違う印象です。

「うるさい」→誰でも騒いじゃうときもあるよね→お互い様なので許容

日本語で、「うるさい!」と言い放つとき、それは、「おまえは私だけでなく社会にとって迷惑なことをしている!」と暗に伝えているようです。そして、代弁者の立場で、社会を味方につけると、迷惑をこうむっているのは、自分だけではないと正当化もしやすくなります。

これは、「黙れ!」とは異なります。こちらは、一対一でむきあう、個人的かつ直接的な表現です。そして、具体的に相手に「黙る」ことを命令しています。

一方、「うるさい!」には、相手の行動に直接関与することなく、我慢しているという立場から、自分の手を汚さずに、「おまえが悪い!なんとかしろ!」と言っているようなもので間接的かつ威圧的です。

その点、「うっせぇわ!」の歌詞の語彙センスはすごいなと思います。これが、「黙れ!黙れ!黙れ!」だと、社会を巻き込む力が弱まる気がしませんか?

まとめ

実は、もう何年も前から、「うるさい!」表現にスペイン語や英語表現にない奥深さがあって面白いなと思っていました。ここにきて「うっせぇわ」の歌で、『うるさい』という形容詞の持つありえないほどの凶暴性が炸裂したので、これまでの考えをまとめてみました。

Adoの完全にキレた感じの歌声に込められた意図をくんで、「うっせぇわ」の歌詞英語字幕付きでは、Fワードをプラスしてしっくりくるようです。スペイン語も同じですね。

うっせぇわ=Shut the f*** up!(英語)=¡Cállate la p*** boca!(スペイン語)

状況描写の形容詞ひとつある「うるさい」が、「うっせぇわ」になった時点で、ここまでぶっ飛んだ意味合いになるって、すごい!

別の言語にすることで顕著に分かることってありますよね~。

トリリンガル的思考での表現考察でした。





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