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アニメイベントをサービスマーケティング目線で見てみた

「サービスマーケティング」という言葉をご存じでしょうか?
サービスマーケティング(または、サービスマネジメント)は、消費者の購買行動を促進したり、好感度や満足度を高めるためにとても必要な活動です。
しかし、サービスマーケティングを正しく理解している中小企業の経営者は少ないと思います。
今回は、息子と参加した「進撃の巨人10周年記念イベント ATTACK FES」での残念な出来事を事例に、サービスマーケティングの重要性について説明します。


サービスとは、顧客にベネフィット(便益)を与える行為

「サービス」と一言に行っても、様々なものがあります。値引きサービス、ケータリングサービス、接客サービス、ファンサービス、などなど。
日常では多義的に使われている言葉なので、具体的な概念については知らない方も多いかと思います。
アメリカでのサービス・マーケティングの第一人者であるラブロックとライト(2002)は、「サービス」を以下のように定義しました。

サービスは経済的な活動であって、価値を生産し、ある時と場所においてサービスの受け手または所有物に対して望ましい変化を生むというベネフィットを提供するもの

近藤隆雄(2003),「サービス概念の再検討」,経営・情報研究 多摩大学研究紀要 7 1-15,

 つまり、価値を創造し、顧客に利益・利得(便益)を与える活動を「サービス」と言い、このようなサービスを提供するための仕組みを作ることを「サービスマーケティング」と言います。

顧客に満足してもらうためには、顧客の行動や経験をしっかり把握し、適切なサービスが提供できるように設計することがとても大事です。

イベントのグッズ購入に至るサービスの設計と分析

では、グッズの売店で商品を購入するまでの一連の顧客経験がどのようなものであるか、見てみましょう。

①会場入り口付近
エレン、ミカサ、アルミンなどの主要キャラクターだけではなく、たくさんのキャラクターがフラッグ掲げられており、お客さんのテンションが一気に高まりますね。イベントへの期待を膨らませるサービスとしては、とても良いですね。

会場の入り口では、様々なキャラクターのフラッグがお出迎え

②会場入り口の大きな看板
次に会場正面に到着すると、大きな看板!さらにお客さんのワクワクが上がります!

ATTACK FESの看板を、多くのお客さんが写真撮っていました。

③近くの階段にはコスプレイヤー
調査兵団の衣装を身にまとったコスプレイヤーがたくさんいて、「自由の翼のマント欲しい・・」と思わせるくらいイベントへの期待が高まりました。

「自由の翼」マント。カッコいい!

④そしてその奥にあるのがグッズ売り場へ。
会場限定のグッズもありテンションMAX!そして、グッズ売り場に到着すると長蛇の列が。ワクワクしながら列に並びます。

長蛇の列が、グッズへの期待を膨らませます。

⑤グッズ売り場についたけど・・・
順番が来た時には、イベント開始の1時間ほど前でしたが、すでに多くのグッズが売り切れ・・・後ろには、それを知らずにたくさんの人がどんどん並んできます。ガッカリ。イベントで使うペンライトも売り切れで、「イベントでペンライト使えないじゃん!」と、息子は超残念そう。

「SOLD OUT」のオンパレード

グッズ品切れ→メルカリで転売されていた

なんと3倍の値段で売りに出ていた

グッズの買えなかった息子の気持ちは不満でいっぱいに。イベント終了後、メルカリで何気なく進撃の巨人で検索したところ、なんと先ほど売り切れだったグッズが2~3倍の値段で売られているでありませんか!

転売ヤーの仕業かどうか、メルカリで販売していた目的は何なのか分かりませんが、イベントへの期待が下がってしまう結果となりました。
(フェスの内容自体は、大変盛り上がりました。)

グッズの売り切れ、転売への対策を考えてみた

今回の事例では、購入の前段階でお客さんへのニーズ対応の設計が不十分だったため、リスクが顕在化してしまい、イベントの価値や信用を落としてしまう結果となりました。もし、グッズ販売やイベントに参加するお客さんの経験価値を設計していれば「観覧チケットの抽選に当たり、チケット代を払って会場に来た人がグッズを買えない」という事態が発生しても、お客さんをがっかりさせない対策ができたかもしれません。
イベント主催側も売り上げ増加の機会を逸したことになります。

ではどのように対策すればよかったのでしょうか?イベント参加の過程にグッズ販売があると仮定した場合、以下の方法が考えられるのではないでしょうか。
①イベント会場の外ではなく会場の中だけで買えるようにする。(チケットを持っている人だけが購入可能)
②イベントの前にグッズを通販(会場でのワクワクはやや減ります)
③イベント終了後に販売(映画館と同じような方式ですね)
④グッズが欠品しないように在庫を抱えておく(売上予測が大事になります)
⑤売り切れになっても、お客さんの不満が高くならない仕掛けを考える(グッズの在庫状況がスマホでリアルタイムに分かるようにすることで、事前期待が高くなりすぎるのを抑制する、とか。)
などなど。。。

結論:顧客の経験や価値を「設計」しましょう。

今回は大型イベントであり、多少のミスがあってもイベント事態に深刻な状況はありませんが、これが中小企業のビジネスとなると、会社に与える損害は計り知れません。
ビジネスは単なる取引ではなく、顧客が感じる感動や満足が重要です。サービスや製品の提供だけでなく、顧客がどのような体験をするか、どんな価値を感じるかを「サービスマーケティング」の観点で計画し、工夫することが成功の鍵です。顧客のニーズや期待に合わせて、より良い経験や価値を提供することで、企業やブランドの信頼や忠誠心を築き上げましょう。


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