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ショートショート「眠れない夜はボクとお話しよう」

キミ、眠れないの?

じゃあボクとお話しようか。


ボクは猫。

その辺を歩いている猫とは違うよ。特別な猫なんだ。

ある日ボクの街に見慣れない女の子が歩いていて、

店の中のボクとガラス越しに目が合った。

どうも入るつもりはなかったようで、足早に歩いていたから

危うく通り過ぎそうになったんだって。

二、三歩後ずさりして、ボクをじっと見つめると、お店に入って来た。

女の子はボクに一目ぼれをしたみたい。

女の子にとってボクは特別な猫なんだ。

それで今ボクは女の子のところにいるってわけ。

名前?

名前はまだない。

ふふ、これ猫なら一度は言ってみたいセリフだよね!

え?猫は話せない?今もどうやってキミと話しているかって?

それはちょっと説明が難しくて、ボクの方が先に眠くなっちゃうからやめておくね。

女の子はね、ボクを見るたびに「可愛いなぁ」と言ってくれる。

嬉しいからボクは女の子の役に立ちたいのだけど、

ボクは女の子がお気に入りだというカゴに入れられてる。

猫はカゴが大好きだしね。

だけどやっぱり何だかつまらない。

どうにか役に立ちたいんだけど・・・。

たとえば小さいほうきをボクに持たせてみたらどうだろう。

ちょっと『魔女の宅急便』みたいになるかもしれないよ。

黒猫ではないんだけどね。

麦わら帽子はどうかな?

え?型崩れしそう??

全部、首を横に振ってた。残念。

あと「小判」っていうのはやめておいたよ。


この家のご主人が子供の頃から使っているという戸棚には

左側の側面の上方に釘が一本、打ちつけてある。

だから左側の壁には寄せられないんだ。

一体、何を引っ掛けていたんだろうね。

それにちょっと釘が下向いているのが気になるけど。

女の子もボクと同じ気持ちだったみたいで、

その”へんてこ”にも思える釘を見ては

いつも首をかしげてた。

そしてある時突然、

「あ、そうだ」

と、何か閃いたみたいだった。

そして、女の子は嬉しそうにその釘にボクを引っ掛けた。

ボクにはフックが付いているのだけど、

まずボクを引っ掛けてくれないと始まらないんだよね。

これでやっと女の子の役に立てる、とワクワクしてる。

ボクのフックはシッポに見えるんだけど、シッポじゃないんだよ。

シッポはピンと身体に沿って立っている。

下についているのはシッポじゃなくて、フック!

そう、ボクは特別な猫なんだ。

その辺りを歩いている猫じゃなくて、

ネコの形をした壁飾りで、フックが付いている!

そしてまだフックにかけるものが見つからないみたい。

名前もまだないけどね!

ね、ちょっと面白かったでしょう??

それに、きっとこれから先もフックにかけるものが見つからなくても

ずっと大事にしてくれる気がするんだ。

ボクはただ女の子のそばにいるだけで幸せ。それは女の子にとっても同じなんだって。

ひょっとしてそれが「特別な猫」ってことなのかな?

ねぇ、キミはどう思う?

・・・・・

あれ、寝ちゃってる・・・。

おやすみなさい☆良い夢を☆

おしまい。 1193文字

*****


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モデルはこの猫 ↑


凝りもせず2回目の投稿です(笑)。
他の方の素晴しい作品を読んで、自分の作品が恥ずかしくなったのだけど、なぜでしょう、寝ても覚めてもショートショートのことばかり考えてしまう。ついにはゆうべ夢にまで出てきてしまいました(笑)。それにここ二日間、寝ようとベッドに入るものの、思いついては起きてで、寝不足気味です・・・(笑)。応募要項が2作品までで良かった・・・。
やっとゆっくり眠れそうです(笑)。

*この記事はピリカ☆ルーキー賞に参加しています


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