大衆迎合する政治家は度しがたい

式村比呂です。

4月が終わります。

コロナで崩壊した日本。

ことに政府が崩壊したために経済が回らず、医療が回らず、知恵も回らず。

新型コロナウイルス感染拡大がいつまでに終息すれば経営的に乗り切れるか、3月末に中小企業に聞いたところ「3月末」から「6月末」との回答が計6割に上ったことが26日、エヌエヌ生命保険(東京)が実施した全国の経営者への調査で明らかになった。

このままでは中小企業が破綻する

永江一石のITマーケティング日記:2020年4月28日のエントリーによると、

3月末 25万4000社倒産 229万人失業
4月末 98万社倒産 882万人失業

ここで緊急事態宣言が伸びると
5月末 157万4000社倒産 1426万人失業
さらに緊急事態宣言が1ヶ月延びると6月末 1915万人失業

というすさまじい試算が掲載されています。

また、京都大学の藤井聡教授の研究チームによると、現在の安倍政権による経済政策とコロナ対策が続くと、経済自殺者がリーマンショック時の

「16万人」

の水準に至ると警告しています。

国民的な危機を大衆迎合に使う政治家たち

それにもかかわらず、国会議員や地方の首長たちの中には、この未曾有の危機を正面から捉えず、ましてや、放置してしまえば自殺するかも知れぬ中小企業の経営者に寄り添わず、自身の政治力に利用しようとしています。

橋下氏は「この10万円は生活保障。給料、ボーナスがびた一文減らないことが確実な人には給付する必要はありません。生活保護受給権者も」とつづり「スピード実務のために全世帯に申請用紙を配布するにしても、受給禁止とルール設定するのが政治の役割。高額所得者には税で事後的に回収すればいい」と説いた。

生活保護者を叩いたところで、手痛い反撃がないと知るからこそ、こういう発言が出来ます。

千葉市長が、ナイトクラブに対し、休業補償もないままに休業要請し、その上で、警察を動かそうとしました。

大阪府知事は、パチンコ店に休業補償も出さず、群衆圧力を使って無理矢理に閉店させようとしました。

そして昨日。

維新の足立康史氏は家賃を減額した不動産所有者への補助の割合について記者団に「8割程度をイメージしている」と説明した。

また維新です。

家賃補償法案は大変結構。

しかし、よく考えてください。こんな状況だから家賃を下げてよって、正論ですか?

そもそもです。

コロナウイルスは国家的な災害ですが、非常事態宣言や外出自粛は政府の判断です。

であるならば、政策で経済が打撃を被ることを防ぐのは、政府の責任です。

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例えば、自由民主党の安藤裕衆議院議員の提案する経済対策ですが、政府の経済対策として、「粗利補償」を提案しています。

各企業の売上高から、仕入れ原価を引いた金額が粗利になります。

この総額を、日本のすべての企業に補償しようというのがこのプランの骨子になります。

なぜ粗利補償なのか?

それは、粗利を補償すれば、販売費と一般管理費、営業外損益、法人税と言ったいったすべての経費を補填することが可能になるからです。

一般管理費には、人件費、光熱費、賃料、リース料なども含まれるわけですから、今まさに問題になっている企業経営者の資金繰りにおいて、問題になり得るすべての支出が網羅的にカバー出来ることになります。

こうした方法であればまだしも、野党共同提案である「家賃補償法案」が、いかに現実を外した提案であるかが分かると思います。

しかも、日本維新の会の議員たちは、言うに事欠いて「家主は不労所得なんだから、家賃を下げろ」「家賃補償は出してやるが、8割で我慢しろ」などと主張します。

日本社会から見たら、家主や地主は確かに少数派でしょう。だからといって、このような仕打ちが許されるのでしょうか?

それに、家賃を下げると言うことは、言うまでもなく巨大なデフレ圧力を生み出します。

家主が、保有物件を担保に借入金を得て何らかの事業を行っている場合には、担保価値の減損を招きます。

さらに言うと、不動産投資というものは長期事業であり、20-30年というスパンで改築や新築の膨大なコストが発生する上、火災や震災と言った潜在リスクを補償するためのコストや保険が必要になる事業です。

物件価値の下落は不動産のデフレを招きますし、その衝撃は、めぐり巡ると行き着く先は、銀行などの金融不安や破綻となります。

私たちはもうすでに、バブル崩壊やリーマンショックなどで、そうした前例をいやというほど見てきませんでしたでしょうか?

市場の自然な動向で不動産価値が下がるならまだしも、このような政策不況を招くような政策を当たり前のように主張するのは理解出来ません。

さらに問題なのは

「家主や地主のようなブルジョア」

というレッテルを貼って、これを叩くことで大衆に迎合し、支持率の向上に利用しようとする姿勢です。

日本が自由主義・資本主義の国であるならば、他の経営者と同様に、不動産経営者も守るのが当然でしょう。

制度を変えたり、誰かの権利を抑圧するのであれば、それに見合った補償が必要になります。

他人の財産権を奪うのであれば、そしてその保障をしないのであれば、日本はもう、民主主義国ではありません。

ある朝、起きたら世界の姿がすっかり変わっていました。 漂流しつつある世界に、何事かをのこしつつ。