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移住2日目にしてディープな田舎体験!

 昨日の疲れはどこへやら、朝早くに目が覚めたのは、やはり慣れない地での緊張によるものでしょうか。
 
 なんてそれっぽく言ってみたものの、じつは違うんです。単に年齢からくる早起き、ってだけなんです。50を越えて、めっきり朝が早くなってしまいました…。

 そんなことはさておき、朝--。
 快晴です。
 居間から見える玄妙な妙義の山容には、いつも心が洗われます(扉の写真をご参照あれ!)。

 このところの雨模様続きと、移住のどさくさで溜まってしまった洗濯物を、洗濯機を2回転させて一気に片付け、湿っぽい布団やシーツをベランダや庭に干すところから1日が始まりました。

 これまで別荘として使っていただけでしたが、それでも近所づきあいはあって、小高い丘の中腹にあるわが新居の、さらに上。丘のてっぺん付近に住まう方(煩瑣なので以降「上のひと」とでも呼んでおきましょうか)とは、それなりに交流がありました。

 数日前まで別荘として休暇を楽しんでいた兄夫婦が話しておいてくれたのでしょう。昨晩挨拶に伺った際にも20分ほどひきとめられ、「引っ越してくるんですってね」「何でもいってくださいね」と、品のいいお母さんが「畑で取れた」と、サツマイモとカボチャとネギを包んでくれました。

 そして今朝も、上のお母さんが玄関先から声をかけてくれました。

「この地域では6軒で隣組を作って、いろんな活動をしてるの。年に1回『道普請』といって、この地区内の道沿いの雑草を刈ったり、木の枝を払ったりする作業があって、それが来月頭にあるのよ。でね、そこで皆さんに紹介使しようと思ってるの。だって、これからしばらく暮らすとして、不審者がいると思われたりするのもイヤでしょ。やっぱり田舎だから、余所から来た人を警戒しちゃうひとが多いのよ」

 うれしいことに、ご近所さんへの顔つなぎをしてくれる、というお申し出だったわけです。おしゃべりの導入だったのでしょう。昨晩に続いて、こんどは自作のピーマンを置いていってくれました。

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 にしても地域でたった6軒! 過疎ぶりをあらためて知ると同時に、隣組とか道普請などと、いまだ昭和と江戸の名残が香っているような、そんな新鮮な驚きがありました。

濃厚なつきあいへの警戒と期待と

 移住元である文京区本郷は下町で、道で知り合いに会えば、横断歩道の真ん中でも近況の問合せや噂話がはじまってしまう、いわば「東京のいなか」な側面がありました。

 だから、ご近所さんとの濃厚な交流といったものには慣れていました。居心地がいい一方で、面倒くさい側面があることも知っていたつもりでした。

 そんな濃厚接触が、ここでも始まろうとしています。

 上のお母さんは、もちろん善意です。それどころか、なじみのない土地での道案内を買って出てくれたわけで、こんなにありがたい話はありません。

 でも、その一方で、「ジモティー同士のつきあいが否応なく始まる」といった、若干警戒感を含んだ想いもないわけではありません。

 しかもお母さん、
「もし時間があって興味があるならで構わないんだけど、きょうウチの息子が畑にイモを堀りにいくの。それを手伝ってみませんか」
 との、かなり意外なお誘いもかけてくれました。

 いきなりディープなお付き合いがはじまる予感…。でも、こちらもいい年齢を経たオッサンです。多少の重荷感はありながら、
「こうなったら乗りかかった船だ。よし、流されてみよう!」
 と、即座に覚悟はきまりました。田舎生活をとことん楽しんでやろうという思い入れです。

 顔つなぎと、芋掘りの、ふたつのお申し出を、ありがたくお受けした次第です。

感動の芋掘り

 午後の約束の時間までに、やることをすませなくてはなりません。洗濯の次は、移住に伴う家財整理ででた大量のゴミ類の処分です。

 さいわいこの地域では市の清掃施設にもちこめば、従量制で処分ができるとのこと。さっそく車にあれやこれやのゴミを載せて、市のクリーンセンターへ。

 50kgまでは無料で、超過分は10kgごとに165円がかかるところ、結果的に10キロ分165円で済みました。165円で、軽自動車のトランク一杯の鉄製品、割れた植木鉢に、あれやこれやのプラスチックゴミがまとめて処分できたのですから、さっそくに地元の恩恵を受けた気分です。

 買い物をしに隣の市まで足を伸ばしいったん帰宅。夕方前に、上のひととの待ち合わせ場所まで出向きました。上のお母さんと息子さんと一緒に畑までいくというので、これまでの感覚で、てっきり車に同乗させてもらえると思っていました。だから歩いて待ち合わせ場所に向かったら、

「あ、車できてほしいんです」

 と、息子さん。よくみればその軽トラには農作業グッズがつまれ、荷台にはトラクター(詳しい名称が分かりません…)様のものが載っています。

「お母さんは?」ときくと、

「自分の車で後からきます」とのこと。

 これも新しい発見でした。ひとつところに向かうのに、3人が別々の車で向かう。それが田舎暮らしの常識なのでしょう。

 上の家が借りているという畑は、安中市の中心部ちかくの住宅地にありました。息子さんいわく、
「これで1ちょうぶあります」

 ちょうぶが町歩であることは分かりました。それが約9917.4平方メートルで、約1ヘクタールであることも調べれば分かります。ただ、それが実際にどれくらいの広さなのかについては、今日はじめて知りました。言葉で知っていたものの実態をはじめて知ったのです。ちょっとした感動でした…。

 さて、サツマイモの芋掘りです。むかし遠足でいった芋掘り同様、畑でツルを引っ張ってゴロゴロ出てきたのを収穫…なのかと思っていたら、まるで違いました!

 まず、地上に出てる葉っぱや茎を切り払って、芋だけが土の中にある状態にして、また何日か置くんだそうです。つまり収穫ではないんですね。その準備段階。

 チャッチャと済ませてしまおうと意気込んではみたものの、その切り払うべき葉や茎が、これまたものすごい緻密に生えていて、互いに絡まっていて、かつ重いんです! 芋を傷つけないように鎌でカットして、ある程度の量になったら平坦な場所に運ぶ。

 じつに単純な作業ではあるのですが、これが都会育ちのひ弱さなんでしょうね…。お母さんと息子さんが溌剌と作業をしているなか、長時間にわたる中腰の姿勢が腰にきて、はやくもひとり息が上がってしまい、見かねた2人が予定外の休憩時間を作ってくれるという…。

 情けなかったなぁ…。手伝うどころじゃない、邪魔しにいったようなものだもんなぁ…。

 それでも作業は進み、集めた茎や葉っぱを、息子さんが運び込んだ「自走式草刈り機」(←これも正しい呼び名かどうかは不明です。農業について何も知らないことを知らされました…)で粉々に砕いていきます。その操作方法を教えてもらい、もう子供のように楽しんでしまいました。

 足は引っ張るわ、自分だけ楽しむわ…。目も当てられませんが、でも作業のあいだ、とても楽しかったのは間違いありません。

 全身泥まみれになったことも、バッタを触ったのも久しぶりだし、黙々とひたすら作業に没頭できたことも新しい発見でした。それに、ときどき土の中から姿を見せるサツマイモと出会うと、「はじめまして」なんて声をかけたくなって、おもわず笑みがこぼれてしまうんです。

 自分で育てたわけじゃないのに、なにか生まれたての生命に出会ったような喜びを感じてしまったんです。

 農家ってスゲェ!

 それがこの日の作業終了時に心底感じたことでした。

豊富な野菜、ゆたかな生活

 別々の車で来ているので、家は近くながらその場で解散。ちょっと寂しい気もしますが、これも車社会のあり方なんでしょうね。

 帰り際に、お母さんが「今日の報酬」といって、土からはみ出てしまったサツマイモと、その脇で収穫されたナスを、数本ずつ持たせてくれました。

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 昨日からの頂き物だけで、サツマイモ(紅あずまと紅はるか)、ネギ、カボチャ、ピーマン、ナスと色とりどりです。

 さて、どんな料理を作ろうか…。帰り道はそんなことで頭がいっぱいです。つまり、まだ軽い興奮状態にあるわけです。

 けっきょく夕食のメニューはこうなりました。
  ・ネギ、ピーマン、ナスと、冷蔵庫のキャベツを使った回鍋肉。
  ・紅はるかをふんだんにつかったサツマイモのレモン煮。

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 いやぁ、疲れはしたものの豊富な野菜で食卓は賑やかになり、いきなり始まったご近所さんとの濃厚接触で、気苦労はあろうとも、これからの生活は豊かになりそうな、そんな感触を得た一日でした。


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