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終バス

最終バスを見ると少し安心する。
特に理由はない。しかし何とも言えぬ魅力があるのだ。

我が街はホドホドの田舎である。
21時を過ぎれば公共交通機関は便を減らし、
街を出歩く人も少なくなる。

最寄り駅、といっても家から2km以上離れているが、
そこから6畳半の我が城方面へ向かうバスは、22時台の1本が最終である。

そのバスをお目にかかるとき、それは、
それはバイトが早く終わったときである。

お店の明かりも半数以上が消えた中で、
疲れたサラリーマンの姿を乗せるそのバスは、
まさに一日を締めくくるようにがら空きの道路を照らしている。

そのバスを見ると何となく、
「今日はこの街の終わりに取り残されずにすんだ」
と感じるのである。

駅近くの飲食店でのバイトを定刻で終え、
帰宅するとき、街はすでに帳を下ろしている。
コンビニと牛丼屋が明かりをともしているのみ、
多くの信号は点滅に切り替わっている。

道路の中央線の上を歩こうが関係なく、
フラフラと家路を急ぐ。
この時どうしても、すこし取りに残された気分になる。

一方で、まるでこの街が自分だけのモノのような気分にも陥る。
しかしバイト終わりで疲弊しているとその妄想ははかどらない。

バイトが早く終わった日、
早く終わったことでさえうれしいのに、
車外に燦燦と光を撒きながら進む最終バスに出会ったのなら、
それはもういい夢見れそうな、そんな夜になるのである。


…うん、疲れているな。


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