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ある証明 (徒然日記2021.08.05)

夏のジメっとした夜は好きでも嫌いでもないね。

先日のライブ終わりの出来事。
帰宅の途に向けて翼を授けてもらうべくすぐ近くのコンビニエンスストアへ向かうと、コンビニ前の歩道に一台のチャリが滑り込んできた。真黒なスーツに不自然なくらい黒いショートヘアー、前髪は少しデカめのピンでとめてある。「就活生」。背負いたくもない称号をいきなり渡された彼女は、慣れない「正装」で自転車を降りるとコンビニ前の証明写真機の前へツカツカと歩き、それはそれは大きなため息をした。証明写真機から漏れる照明で照らされた彼女の顔は、全就活生の苦悩を表現していたといっても過言ではない。ここまでおよそ10秒。

その10秒に詰め込まれた感情は計り知れぬ。
ハァ~~~~。
それでも彼女は前髪をとめていたピン外して箱の中へと身を投じた。
同時に私もコンビニへ入った。

コンビニから出ると、彼女は自転車のカゴで撮ったばかりの証明写真を切っていた。そのまま新たな履歴書を提出しに行くのだろうか。初めて行く街の知らない少女の過去、ましてや未来に私が登場することはないけれど、外野からその履歴書に念を送ってその場を立ち去った。その履歴書の写真が如何様な表情をしていたかは知らないが、きっと彼女の素顔を証明してくれるすばらしき未来に出会えるだろう。就活の成功と明るい未来、湿気まみれの夜に乾杯。

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