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9滴目 月夜

輝夜

いつか君を
この手に
其の美しい命を
此の穢れた手に

あなたの寂しさを
一身に受け止め続けた
穢れ担当のこの私が
この  手に

あなたには
その美しい命を
養うという輝く責任があり

私には
あなたの汚れを
担うという昏い役割がある

私は鬱に沈み
あなたは労働に明け暮れ

貴方も労働に明け暮れ
私は放蕩を尽くす

そう私は影であり光
穢れであり美

くるりくるりと
陰ったり光ったり
月の者ですから

陽の貴方の光を
気持ちよく受けたり

陰のあなたの影として
付き纏ったり

くるりくるりと
回転をして

くるりくるりと
止(とど)まることなく

===

仮定

回転しているとしたのなら
この重さはなんでしょう

遠心力?

止(とど)まることがないとしたなら
この重さはなんでしょう

無重力?

思うように、動けない

兎の形をした
重たい岩戸がそこにはあって

私は怯えながらも
物陰からそっと
みんなの様子を、
懸命に
覗っているのです。

外界に
惹かれながら
焦がれながら

みんなが舞う外界を
羨みながら
しかし微笑んで

みんなが惑う外界を
驚きながら
しかし憂いて

踏み出したいと
見計らいながら

===
written by 古瀬詩織

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