ブドウと地球温暖化

 地球の気候変動が、各地の農業をはじめとし、私たちの文明社会に大きな影響があることはいうまでもない。
 人類の総論として今後いっそうの気候変動は回避するように動いていきたいよね、という世間様の立場に否やはない。とはいえ気候変動で可能性がひらけた農業というものもあるわけで、完全に「いかんでしょ」とは言い切れない気がするのだ。

 勘のいい方はお気づきかもしれない、ブドウである。
 北海道はワインの産地として知られているし、最近はイギリスのワインもいたく評判がいいですよね。
 とはいえブドウはもともと暖かいところの作物であるからして、北の地で植えるのには向いていない作物だ。そこを強引に植えて育てちゃってテロワールがーとのたまうのだから人類は業が深い。
 閑話休題、さりとてブドウにはブドウの都合ってものがあって、「そもそもこんな土地じゃ寒すぎて生きられねーよ!」ってことになれば当然枯れる。
 枯れやしないが生きられるギリギリを見極めるのが、北の地でブドウを育てるにあたってのキモである。読んで字のごとくブドウの北限というらしい。

 で、このブドウの北限、歴史とともに地球の気候変動によって上下してきた。昨今はエラい温暖化をしているので北限は上がりに上がって、イギリスでいい感じのブドウが出来ちゃうくらいあったかいらしい。
 北海道もたぶん、従来のヨーロッパ北の方系さむい地域のブドウじゃなくても育つようになってきちゃってるのではないだろうか。

 ただこれ、現在時点があまりに顕著に温暖化しているので論点がブレるんだけど、仮に人類の活動がなかったとしても、地球は暖かくなったり寒くなったりしてきた。世界は確か400年くらいのスパンで暖まったり冷めたりしてきた。
 暖かい時期には当然植生の北限は上がるので、ブドウの北限も上がる。ドイツとかイギリスはこのあったかい時期にローマ帝国によってブドウがもたらされて、いい感じにワインをつくってうまいことやっていたらしい。
 ところがこの暖かさは永遠に続きしないから、いずれは寒くなってきてブドウが生きられなくなる。ブドウは育たないし農業全体的に大打撃だしえらい騒ぎになって文明が後退したりする。(あまりに乱暴な要約。

 そんな次第で、「あんまり短時間で、甚だしく暖まってしまうのは当然大問題」であることには論を俟たないんだけれど、ゆるやかに地球が暖まったり冷めたりすることは自然の摂理でしょうがないし、ここに乗っかってうまいことやった産業ってものもある。
 気候変動に限らず、いろいろな外力によって環境が「これまで通りでなくなる」ことは大いに警戒する気持ちは理解できるし、この変化が人為的なもので、人の営為によってなんとかできるならなんとかすべきだと思う。それはそう。
 その一方で、絶対に昔から一ミリも変化しないという立場や考え方が正しいものとも、ちょっと思えないんだよな。

 まぁ話があっちこっちいったけどあれだ。
 出来ちゃったワインに罪はないのでおいしく飲もう。

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