2023/12/07(木)のゾンビ論文 自決権もゾンビアイデア?
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などを評論する論文を排除する
「-Netflix」:ネトフリ限定ゾンビドラマなどを引用する論文を排除する
「-network」:とにかく情報科学の論文を排除したい
検索条件2は、最後の三つの検索キーワードがないため、これらが排除した論文がねらい通りかどうか確かめる目的がある。また、検索条件3では「-philosophical」と「-gender」という一般性の高い検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。
今回、それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」二件
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」二件(差分ゼロ件)
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」二件(差分はゼロ件)
検索条件1は法学、文学が一件ずつだった。
検索条件1「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」
ゾンビ自己決定? ヨハネス・ソッヘル著『ロシアとソ連崩壊後の空間における自決権』(オックスフォード大学出版局、2021)
一件目。
原題:Zombie self-determination? Johannes Socher, Russia and the Right to Self-Determination in the Post-Soviet Space Oxford: Oxford University Press, 2021
掲載:Review of Central and East European Law
著者:Bill Bowring
ジャンル:法学(書評?)
Johannes Socherという弁護士(LinkedInでは弁護士。Twitterプロフィールでは「研究者兼国際コンサルタント」とある)が著した『Russia and the Right to Self-Determination in the Post-Soviet Space』を批判的に読み解く論文。
本著にはzombieの単語は見当たらず、Googleアラートのメールでも本文にzombieの単語はなさそうだ。つまりタイトルにのみzombieの単語が使われており、ゆえに"zombie self-determination"(ゾンビ自己決定)は本文内容から推測しなければならない。
まず、『Russia and the Right to Self-Determination in the Post-Soviet Space』は出版元であるOxford University Pressにて次のように紹介されており、ロシアの自己決定権について論じたものであるらしい。
また、本論文ではこの本の自決権について以下のように言及する。
自己決定の死というのは、次の記事のように第二次世界大戦後の民族自決主義がもたらした社会的混乱を指すのだろう。
つまり、民族自決権というのは本論文の著者の中ではゾンビアイデア(過去に否定されたにも関わらず、蘇って再び提案されるアイデア)なのだろう。ということで、ゾンビ自己決定というフレーズが生み出された、と。
ジャンルは法学。書評でもあるが、その方向性は法学的観点であるため。社会学や政治学でも良いかもしれない。
ハロー、ワールド! ハロー、ポエティックゾンビ!
二件目。
原題:Hello, World! Hello, Poetic Zombies!
掲載:Mapping the Posthuman
著者:Winnie SoonとSusan Scarlata
ジャンル:文学?
"spam poem"(スパムポエム)という指向性、制約、ランダム性、複数言語を組み合わせて作られるポエムがある。スパムメールが単語を適当に組み合わせて作った文章を指すのではなく、スパムポエムライターとでも呼ぶべき人間がきちんと作っているそうだ。過去にはスパムポエム大会まであったのだとか。と言われても、具体例を見ないことにはいまいちピンとこないが…。
本論文では、スパムポエムを通してスパムへの理解を促すことを目的とする。ゾンビを導入したのはその理解促進の一環らしい。具体的には、本物の人間が書いたスパムポエムとコンピュータ生成されたスパムポエムの違いを紹介するために、後者をゾンビが作ったものに喩えたと推測する。
ジャンルは文学。スパムを扱うなら情報科学でも良い気がするが、何となく文学の気が強いように思う。
検索条件2「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」(差分なし)
検索条件1との差分を調べ、「-narrative」「-Netflix」「-network」が排除した論文がねらい通りだったか確認する。
今回は差分がなかった。
検索条件3「zombie -firm -xylazine -biolegend」
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。
現象は機能的である: 意識と計算の統一理論
原題:The Phenomenal Is Functional: A Unified Theory of Consciousness and Computation
掲載:Research Gate
著者:Michael Timothy Bennett と Sean Welsh
ジャンル:哲学
「-philosophical」で排除。哲学的ゾンビを扱う論文。
まとめ
検索条件1は法学、文学が一件ずつだった。
今回はゾンビアイデアとしての「ゾンビ自己決定」にゾンビによるスパムポエムと愉快な概念に出会うことができた。
民族自決権が死を迎えていた事実はあまり愉快ではないが。調べずにものを言うが、ロシア・ウクライナ戦争やガザ地区の戦争も民族自決権が原因なのだろうか。確かプーチンが自国民を救出するとかなんとか言っていた気がするし、ガザ地区が民族ごとの自治権が問題になっていることくらいは知っている。
スパムポエムは愉快だがいまいちピンとこなかったのが難点だ。しかもゾンビとの関連が自分の推測通りだったか自信がない。いっそのことゾンビスパムとかゾンビポエムとかにしてくれればよかったのだが。
今回はねらいの論文がなかった。