2023/12/23(土)のゾンビ論文 ゾンビ企業の定量的な定義
ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。
アラートの条件は次の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)
検索条件は次の意図をもって設定してある。
「zombie」:ゾンビ論文を探す
「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する
「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する
「-DDoS」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する
「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する
「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する
「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する
「-narrative」:ゾンビ映画・小説などを評論する論文を排除する
「-Netflix」:ネトフリ限定ゾンビドラマなどを引用する論文を排除する
「-network」:とにかく情報科学の論文を排除したい
検索条件2は、最後の三つの検索キーワードがないため、これらが排除した論文がねらい通りかどうか確かめる目的がある。また、検索条件3では「-philosophical」と「-gender」という一般性の高い検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。
今回、それぞれのヒット数は以下の通り。
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」五件
「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」六件(差分一件)
「zombie -firm -xylazine -biolegend -DDoS」七件(検索条件2との差分は一件)
検索条件1は経済学が三件、ゲームデザイン学、評論が一件ずつだった。
検索条件1「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender -narrative -Netflix -network」(ゼロ件)
なぜかゾンビ企業関連の論文が三件
"zombie firm"とタイトルにある論文が三件も引っ掛かった。「-firm」で排除しているはずなのに…。しかも三件とも同じ雑誌。当然、ジャンルはすべて経済学。
和題:ゾンビ企業の定義について
原題:On the identification of zombie firms
掲載:Aussenwirtschaft
著者:Luca Mingarelli と Jonas Wendelborn、 Tamarah Shakirの三名
一件目はタイトルの通りゾンビ企業の定義について。過去の報告を精査すると、財務的に脆弱なだけの企業がゾンビ企業にカウントされているらしい。ゾンビらしさの定量化という興味を引くフレーズが見られる。短いし、ちょっと読んでみようか。
和題:ポルトガルのゾンビ企業の再生と撤退: リメイク
原題:Recovery and exit of zombie firms in Portugal: A remake
掲載:Aussenwirtschaft
著者:Carlos Carreira と Paulino Teixeira、 Ernesto Nieto-Carrilloの三名
ポルトガルにおけるゾンビ企業から回復と撤退(=倒産?)や、回復・撤退に至る要因を検討する論文。経営や技術、財務の再編成が回復の要因であるとのこと。
和題:企業が死なないとき: 低金利環境におけるゾンビ企業を分析する
原題:When companies don't die: Analyzing zombie firms in a low interest rate environment
掲載:Aussenwirtschaft
著者:Angela De Martiis と Franziska J. Peter
経営不振な企業のゾンビになりやすさが金利に依存するかを調べた論文。短期金利になればゾンビ企業になりにくい。
Flame ゲーム開発
四件目。
原題:Flame Game Development
著者:Andrés Cruz Yoris
ジャンル:ゲームデザイン学
このタイトルの本のうち、"Game 3: Enemies", "Game 4: Plants vs. Zombies", "Game 4: Many Experiments"が検索に引っ掛かった。
ゾンビが出てくるゲームについて云々する論文であるから、本物のゾンビを扱うものではない。
ジャンルはゲームデザイン学。
アクセル・フリートマンおよびクリスティアン・ウェラー編『医療画像の解剖学: ルネサンスから今日までの知識の生産と変容』(書評)
五件目。
原題:Anatomy of the Medical Image: Knowledge Production and Transfiguration from the Renaissance to Today ed. by Axel Fliethmann and Christiane Weller (review)
掲載:Bulletin of the History of Medicine
著者:Jennifer Wallis
ジャンル:評論(書評)
Axel Fliethmann と Christiane Wellerによる『Anatomy of the Medical Image: Knowledge Production and Transfiguration from the Renaissance to Today』の書評。検索に引っ掛かったのは、この本が様々なメディアコンテンツを扱っており、その中にゾンビTVドラマがあったから。
ジャンルは評論。本全体の解説的立ち位置であるから、詳しくは書評。
「-network」という単語が入っているにもかかわらず、排除されなかった。
検索条件2「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」
検索条件1との差分を調べ、「-narrative」「-Netflix」「-network」が排除した論文がねらい通りだったか確認する。
Unity3D をベースにしたタワーディフェンス ゲームデザイン
原題:Tower Defense Game Design based on Unity3D
掲載:Frontiers in Computing and Intelligent Systems
著者:Shuohan Chen
ジャンル:ゲームデザイン学
「-network」で排除。「タワーディフェンスゲーム」というジャンルのゲームデザインについて論じる。このジャンルの中に"Plants vs. Zombies"が混じっているため検索に引っ掛かった。
検索条件3「zombie -firm -xylazine -biolegend」
上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。
ポスト真実時代の不純なリアリズム、純粋な出来事性、ホラー映画: 『カメラを止めるな!』のケーススタディ
原題:Impure Realism, Pure Eventness, and Horror Cinema in the Post-truth Era: A Case Study of One Cut of the Dead
掲載:Truth Claims Across Media
著者:Yeqi Zhu
ジャンル:評論
「-philosophical」および「-gender」、「-narrative」で排除。『カメラを止めるな!』の英題が『One Cut of the Dead』である。『カメラを止めるな!』がポスト真実時代の精神を反映していると主張する論文。
妄想をベースにポスト真実という別の集団的な妄想を批判するのが人文学の生業なのだろうか?どうしてこの手の人間は「私は『カメラを止めるな!』にポスト真実の精神を投影した」と正直に言えないのだろうか?アメリカのローカルな政治思想が日本の映画に反映されているといううぬぼれも大概にしてほしいものだ。
まとめ
検索条件1は経済学が三件、ゲームデザイン学、評論が一件ずつだった。
なぜゾンビ企業の論文が引っ掛かったのか、なぜ「-network」で排除されなかった論文があったのか、わからない。ただ、検索キーワードが適切に働いていない例は今までもよくあった。おそらくはGoogleの検索アルゴリズムが勝手なことをしているのだろう。たまにであれば別に構わないが。
今回はねらいの論文がなかった。
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