2023/03/04(土)のゾンビ論文

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件を「zombie」として、六件がヒットした。六件中、哲学が二件、情報科学、医学、デザイン工学が一件ずつ。そして不明が一件だった。

The Zombie/The Brothers

一件目。タイトルは和訳せずにそのまま「The Zombie/The Brothers」。Ball State Universityに提出された卒業論文。著者はAllen Warren。

ちょっとだけ時間を作ってリンク先のアブストラクトを読んでみてほしいのだが、一体何を卒論として出したのか理解できる人間はいるだろうか。それとも"novel"に小説以外の意味があるのだろうか。

曰く、The Zombieというnovel(小説)を書いていたが、途中でThe Brothersというタイトルの小説に変えた。そこに至るまでの変遷を追跡する、と。小説の体で卒業論文を提出するならまだわかるが、小説を作る際の変遷を卒論として提出するというのは一体…?

よくわからないため、ジャンルは不明。


The Conceivability of Consciousness-Kirk's and Chalmers's Zombie Thought Experiments

二件目。タイトルの直訳は「意識の可能性 - カークとチャーマーズのゾンビ思考実験」。掲載誌はLondon Journal of Research in Computer Science and Technology。執筆者はC. P. Hertogh。

意識、思考実験と来たからにはジャンルは哲学。たぶん、哲学的ゾンビをどうこう議論するのだろう。わからないが。


Tag of the Dead: How Terminated SaaS Tags Become Zombies

三件目。タイトルの直訳は「タグ・オブ・ザ・デッド: 終了した SaaS タグがゾンビになる方法」。Network and Distributed
System Security (NDSS) Symposiumで報告された。報告者はTakahito SakamotoとTakuya Murozono。

報告者が日本名だったのでちょっと検索してみたら、株式会社DataSignがHPに情報を掲載していた。

ただ、これだけ読んでも内容を理解できないし、SaaSが何か検索してもみたがいまいち理解ができなかった。PCをウイルス感染させて乗っ取り、思うがままに操る『PCのゾンビ化』に関係あるとはわかるのだが。

ジャンルは情報科学。


A comprehensive multiparameter flow cytometry panel for immune profiling and functional studies of frozen tissue, bone marrow, and spleen

四件目。タイトルの直訳は「凍結組織、骨髄、および脾臓の免疫プロファイリングおよび機能研究のための包括的なマルチパラメータ フローサイトメトリー パネル」。掲載誌はJournal of Immunological Methods。著者はYi-Chu WuとMichael Kissner、Fatemeh Momen-Heraviの3名。

zombieは"Zombie Aqua"の文字列で使われる。Zombie Aquaは死んだ細胞を光らせるための試薬であり、医学論文によく出てくる。よってジャンルは医学。内容には立ち入らない。


Exoanthropology: Dialogues with AI

五件目。タイトルの直訳は「地球外人類学:AIとの対話」。このタイトルの本が存在する。著者はRobert Leib。

地球外人類学。この論文の著者でもあるRobert Leib(とSophie Kermit?)の造語であるらしく、Exoanthropologyで検索すると彼のブログや著作(この本)がヒットする。

zombieは"philosophical zombie"あるいは単に"p-zombie"の文字列で使われる。哲学的ゾンビのことである。また、著者のRobertは大学で哲学を教えているらしく、Reserch Gateのページをのぞくと、経歴や著作がわかる。確かに哲学っぽいことをしているようだ。

ということで、ジャンルは哲学。Exoanthropologyという単語には惹かれるものがあるが、何せ500ページもある真面目な哲学の本だ。つまみ食いすらする気が起きない。


Materiality of the immaterial: Embodied interaction in virtual reality gaming

六件目。タイトルの直訳は「非物質の物質性: 仮想現実ゲームにおける具現化された相互作用」。Middle East Technical UniversityのThe Graduate School of Natural and Applied Sciencesに提出された修士論文。著者はBURAK KÖK。

タイトルは抽象的だが、VRゲームが現実に与える影響をどうこう議論する論文だと推測する。zombieの単語はArizona Sunshineというゲームについて論じる章で出てくる。

アリゾナ・サンシャインというゲームはPS VRでプレイでき、襲いくるゾンビを様々な武器を使って撃退するゲームのようだ。

HPには『没入型ゾンビサバイバル』と紹介されている。私はゾンビサバイバルするならショッピングモールで「ドーン・オブ・ザ・デッド」のような暮らしをして、ビクビクしながら毎日を生きていきたい派なのだが、それはさておき、VRを使ってゲームに没入することで肉体に与える影響を探るのがこの論文の目的だろう。

となればジャンルは情報科学がふさわしそうに思えるが、この修論につく学位はindustrial design(工業デザイン、あるいはデザイン工学)。デザイン工学って何?と疑問に思ったが、実際にある学部らしい。ならば迷わず、ジャンルはデザイン工学。

ねらいの論文ではなかったが、ちょっと興味はある。100ページ超えの異分野でなければ読むのだが…。


まとめ

六件中、哲学が二件、情報科学、医学、デザイン工学が一件ずつ。そして不明が一件だった。

今回は六件中二件が学生による論文だった。自作小説?の解説に、VRがプレイヤーに与える影響(相互作用とあったので、あるいはプレイヤーがゲームにも与える影響もあるのか)を調査した論文。どちらも自分には全く馴染みのない内容で、知らない世界を垣間見たようで大変興味深い。

ただ、自作小説?の方は本当に自作小説の解説なのだろうか。私がアブストラクトすらまともに読めないくらいに異分野なのだろうか。背景・目的くらいは読めるようにしてくれればと、惜しい気持ちを隠すことができない。

しかし、今日はヒットなし。


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