2023/03/25(土)のゾンビ論文

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件を「zombie -firm -company」として、三件がヒットした。三件中、医学が二件、文学が一件だった。

また、差分を見るために「zombie」の条件でもアラートを設定しており、こちらでは追加で三件がヒットしていた。

検索キーワード「zombie -firm -company」

Mummified Thyroid Nodules

一件目。タイトルを直訳すると「ミイラ化した甲状腺結節」。掲載誌はPitfalls in Ultrasound of Thyroid Nodules。著者はGaosong WuとQianqian Yuan、Rui Zhou。

zombieの単語は次のフレーズに現れる。ほかにはない。

The cystic components of the nodule are gradually absorbed over time, resulting in atrophy of the lesion, internal fibrosis, and microcalcification, forming “zombie” nodules, …
(結節の嚢胞成分は時間の経過とともに徐々に吸収され、病変の萎縮、内部線維症、および微小石灰化を引き起こし、「ゾンビ」結節を形成し、…)

Mummified Thyroid Nodules
アブストラクトより

ゾンビかミイラかどちらかにしてくれないものか。

ちなみに"Mummified Thyroid Nodule"で検索する結構の数がヒットする。どうやらこの言い回しはこの分野で定着しているものらしい。だったらなおさらゾンビではなくてミイラで統一してもらえないものですかね。

ちなみに甲状腺は喉にある内臓の一種。日本語で「甲状腺 ミイラ」と入れてもそのものズバリなヒットはなかったが、ミイラ化は血管閉塞によって足指が壊死に陥り,感染を受けることなく,その部位が乾燥して黒色になることらしいので、甲状腺結節とかいうものが閉塞して乾燥・黒色化するのだろう。ゾンビはどちらかと言えば湿っているので、やはりなぜゾンビの単語を出したのか、理解に苦しむ。

ジャンルは医学。


" The Ambiguous Horror of Modern Life": An Interview with Paul Tremblay

二件目。タイトルの直訳は「「現代生活のあいまいな恐怖」: ポール・トレンブレイへのインタビュー」。掲載誌はStudies in the Fantastic。執筆者はChristina ConnorとPaul Tremblay。

ポール・トレンブレイはおそらく以下のWikipediaで紹介している人間。”アメリカのホラー、ダーク ファンタジー、サイエンス フィクションの作家兼編集者”らしい。

論文の本文にzombieの単語が出てくるのは次の一文。

…but it wasn't until Tremblay's 2020 rabies-zombie pandemic novel, Survivor Song, was released during the height of COVID that I found myself cracking open one of his books.
(…しかしトレンブレイの2020年の狂犬病ゾンビパンデミック小説、サバイバーソングがCOVIDの最盛期にリリースされるまで、彼の本の1つを開いていることに気づきませんでした)

" The Ambiguous Horror of Modern Life": An Interview with Paul Tremblay
本文より

『サバイバーソング』は残念ながら日本語版がない。しかしWikipediaを読む限り、”狂犬病ゾンビパンデミック小説”以上に表現のしようはなさそうだ。

で、その作者にインタビューをしたのがこの論文であると。掲載誌名を直訳すると、ファンタジーにおける学問。ファンタジー学とするわけにもいかないので、ちょっと大雑把だが文学としておこう。


Saturated fatty acids dampen the immunogenicity of cancer by suppressing STING

三件目。タイトルの直訳は「飽和脂肪酸はSTINGを抑制することでがんの免疫原性を弱める」。掲載誌はCell Reports。著者はBlake R. Heathを筆頭著者として17名。すごい。

見るからに医学の論文。そしてもちろん、zombieの単語は"Zombie Aqua"という文字列で現れた。

これ以上、この論文を読むのは、ちょっと。


検索キーワード「zombie」(差分のみ紹介)

3月からはアラートのキーワードをzombieだけではなく、-firmと-companyも追加した。各単語の前のハイフンは”含まない”を意味するため、『zombieという単語を含み、かつfirmとcompanyという単語は含まない』という検索条件になっている。この節では差分を見ることを目的とするため、各論文の内容には立ち入らない。

Prepped for harvest: Monstrous metaphors of capital in the young adult dystopian film, The Maze Runner: The Scorch Trials

一件目。タイトルの直訳は「収穫の準備: ヤング アダルト向けディストピア映画『メイズ ランナー: スコーチ トライアル』における巨大な資本の比喩」。掲載誌はReview of Education, Pedagogy, and Cultural Studies。著者はNicholas G. Rickards。

アブストラクトが面白かったので多めに引用する。

… By using a contextual cultural studies approach, which reads film as embedded in cultural politics, and a “monsterology,” which captures capital as a specter within the film, this essay will serve as an intervention surrounding discourse on The Maze Runner: The Scorch Trials. In doing so, this analysis will make the case that films targeted at students and young adults are important sites of pedagogy that contribute to an understanding of how capital alienates us from ourselves, each other, and social democratic structures.
(…映画を文化政治に埋め込まれたものとして解釈する文脈文化研究アプローチと、資本を映画内の亡霊としてとらえる「怪物学」を使用することにより、このエッセイはメイズ ランナー: スコーチ トライアルに関する言説を取り巻く介入としての役割を果たします。そうすることで、この分析は、学生と若者を対象とした映画が教育学の重要な場であり、資本が私たちを自分自身、お互い、そして社会民主主義構造からどのように疎外するかを理解するのに役立つことを証明します)

Prepped for harvest: Monstrous metaphors of capital in the young adult dystopian film, The Maze Runner: The Scorch Trials
アブストラクトより

メイズランナーをネタに映画を教育の教材として使うらしい。まあ、私も外国の文化や思想は映画から学んだし、言いたいことはわかる。しかし資本の仕組み?の教材や社会民主主義をシミュレーションする見本としてメイズランナーを使うのはどうなのだろう。もっといいものがあると思うのだが。

検索結果に関しては、メイズランナーにはゾンビ(らしきもの)が出てくるのでzombieに引っかかり、”巨大な資本”について論述するためにcompanyにも引っかかった、と。


" Alternate Presents": An Interview with Daryl Gregory

二件目。タイトルの直訳は「「代替プレゼント」: ダリル・グレゴリーへのインタビュー」。掲載誌はStudies in the Fantastic。著者はChristina ConnortとDaryl Gregory。

掲載誌は「zombie -firm -company」でも出てきた。しかもまたインタビューの論文だ。またホラーかSFの作家へのインタビューだろう。そこで所属する会社か何かでcompanyという単語が出てくる、と。


Route 666: A Guided Tour Through American Road Trip Horror

三件目。タイトルの直訳は「Route 666: アメリカのロードトリップの恐怖を巡るガイド付きツアー」。Washington Universityが開催しているWWU Graduate and Undergraduate Scholarshipにて実施した活動の報告。報告はGrace Fiser。

”恐怖を巡る”一環でzombieが出てくる。企業の紹介もするので、そこでcompanyの単語に引っかかった。


まとめ

「zombie -firm -company」では、三件中、医学が二件、文学が一件だった。

差分として「zombie」では、三件だった。

今日の論文からは特に目新しいものは見つからなかった。医学者のくせにミイラとゾンビの区別もつかないのかと愚痴が出てくるくらいだ。全体的にコメントに困る。

ということで、今日はヒットなし。


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