2023/09/23(土)のゾンビ論文 ゾンビは二重の奴隷の証

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」

  4. 「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)

  5. 「zombie -firm -consciousness」(取りこぼし確認その2)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」/「-consciousness」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」/「-botnet」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、検索条件4と5では、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -botnett -xylazine -biolegend -gender」一件

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -viability -gender」一件

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDoS -xylazine -biolegend -gender」一件

  4. 「zombie -firm -philosophical」一件(差分ゼロ件)

  5. 「zombie -firm -consciousness」一件(条件4との差分ゼロ件)

検索条件1-3は評論が一件だった。


検索条件1「zombie -firm -philosophical -botnet -xylazine -biolegend -gender」

植民地化された道徳の仕組み: Telltale の『ウォーキング・デッド』における善良になるための闘争

一件目。

原題:Colonized Morality Mechanics: The Struggle to Be Good in Telltale's The Walking Dead
掲載:JOURNAL OF GAMES CRITICISM
著者:Jess Erion
ジャンル:評論(ポストコロニアル批評)

白人が生み出すフィクションにおけるゾンビの扱いについて、植民地批判の文脈で読み解く論文。曰く、ゾンビは白人が奴隷にしたハイチの人々がシンボル化したものであったが、白人が盗み、自分たちの文化としてシンボル化してしまったとのこと。

その観点がもっともわかりやすく記述されている文章を引用しておく。

As a colonial construct rather than an element of slaves’ internal culture, the figure of the zombie disempowers the colonized subject, which Raphael Hoermann asserts in an issue of Atlantic Studies: “The figure of the zombie seems to re-enslave the Haitians […] The zombie embodies the slaves’ utter alienation, their total lack of freedom and the loss of all their rights” (Hoermann, 2016).
(奴隷たち自身の文化の要素ではなく、植民地時代に構築されたものとして、ゾンビという表象は植民地化された主体の権利を剥奪します。それは、Atlantic Studies 内でRaphael Hoermannが主張した「ゾンビという表象は、ハイチ人を再び奴隷化しているように見えます […] ゾンビは、奴隷の完全な疎外感、完全な自由の欠如、すべての権利の喪失を体現しています。」)

JOURNAL OF GAMES CRITICISM掲載
Jess Erion著
『Colonized Morality Mechanics: The Struggle to Be Good in Telltale's The Walking Dead』

この観点・文脈から、『ウォーキング・デッド』とゲームのストーリー構成を批判的に読み解く。

もちろん私の求める本物のゾンビが出てくる論文ではないが、ゾンビが奴隷云々というのはゾンビ映画批評で非常によく見る読み解き方である。さらっと読んだ感じでは基本的な考え方に触れている上に、『恐怖城』を具体例に出して読み解いているため、ゾンビ映画批評を堪能するために読んでおいた方がよいかもしれない。興味がわいてきた。

ジャンルは評論。植民地主義を批判するので、詳細にはポストコロニアル批評。



検索条件1-3の差分(差分なし)

「DDoS/botnet」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。

今回は差分がなかった。



検索条件4と5「zombie -firm -philosophical / consciousness」(差分なし)

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。

また、哲学的ゾンビのみを排除するには「-philosphical」(哲学的な)と「-cousciousness」(意識)のどちらが良いかを探るために、検索条件の4と5を比較する。

前者は哲学的ゾンビが英語でphilosophical zombieとつづることから、後者は哲学的ゾンビが人間の意識の有無に注目した概念であることから、それぞれ排除可能と想定している。

今回は、検索条件4も5も、検索条件1-3と差分がなかった。



まとめ

検索条件1-3は科評論が一件だった。

言いたいことは論文紹介の項で書いてしまったので、ここに書くべきことがない。詳細を確認する論文が一本だけだとチェックは楽に素早く済ませることができるが、差分が一本もないと張り合いがない。面白くない。

今回はねらいの論文がなかった。


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