2023/05/02(火)のゾンビ論文 ゾンビキノコを参考に柔らかい材料を作ろう

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -company -philosophical」(経済学・哲学のゾンビ論文避け)

  2. 「zombie」(取りこぼしがないか確認する目的)

このうち、「zombie -firm -company -philosophical」の内容を主に紹介する。ただし、この検索キーワードできちんと経済学と哲学のゾンビ論文がよけられているか確認するために、差分を簡潔に紹介する。

4月の総括で設定した検索条件と異なるが、私のミスが原因である。次のチェックからは5月用の新しい検索条件が適用される。

それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -company -philosophical」三件

  2. 「zombie」七件(差分四件)

「zombie -firm -company -philosophical」の三件は社会学、ソフトマター物理学、水産学一件ずつだった。


検索キーワード「zombie -firm -company -philosophical」


28週間後-28日後: 没落と個人的な黙示録

一件目。

原題:28 Weeks Later-28 Days Later: Downfall and Personal Apocalypse
掲載:Examinations and Analysis of Sequels and Serials in the Film Industry
著者:Gülin Terek Ünal
ジャンル:社会学

アブストラクトに完璧な概要が書いてある。さすがアブストラクトだ。

This study aims to examine zombies in 28 Days Later and 28 Weeks Later films within the framework of topics such as ideology, surveillance society, military and war, ethical values, and family relations.
(この研究は、イデオロギー、監視社会、軍事と戦争、倫理的価値観、家族関係などのトピックの枠組みの中で、28 日後と 28 週間後の映画のゾンビを調べることを目的としています。)

28 Weeks Later-28 Days Later: Downfall and Personal Apocalypse
アブストラクトより

28日後と28週間後は、それぞれゾンビ映画の『28日後…』と『28週間後…』のことを指している。その映画の中において、ゾンビが上記の観点からどのように描かれているかを探る、というのが目的だろう。

フィクション内のゾンビについて論じるものであるから、もちろんねらいの論文ではないのだが、ゾンビを論じる際の観点に軍事と戦争がある点が私の興味を引いている。ゾンビが実際に現れた場合を想定した国際政治学の本、『ゾンビ襲来』を想起させるからだ。

この本は、本物の国際政治学者がよくあるゾンビ映画をベースにして、政治的思想・姿勢ごとに人間がゾンビに対してどのような反応を示すかを考察した名著である。ただ、専門用語が多いため、政治的な知識がないとすらすら読むのは難しい。

もしかしたら、この節で紹介している論文は特定の映画を舞台にしている分だけ『ゾンビ襲来』よりも平易かもしれない。であれば、きっと読む価値はある。…専門分野ではない長い本を英語で読むのは勘弁願いたいが。

ジャンルは、国際政治学よりも広範を対象としているため、社会学。


バイオネットワークに着想を得た創発原理による柔らかい材料のコーディング

二件目。

原題:Coding soft matter with bionetworks-inspired emergent principles
掲載:SPIE Smart Structures + Nondestructive EvaluationのProceedings
著者:Farshad GhanbariとJoe Sgarrella、Christian Pecoの三名
ジャンル:ソフトマター物理学

粘菌の持つ「バイオネットワーク」から着想を得て「柔らかい材料」で何かを作るらしい。参考にした粘菌というのが、どうやらゾンビキノコ。”zombie ant”の文字列があったため、間違いないだろう。

ジャンルはソフトマター(柔らかい材料)物理学。どうもそういう分野があるらしい。初めて知った。ゾンビ論文は私に色々なことを教えてくれる。ありがとう、ゾンビ。

粘菌を参考にしたとして、それを基にした何かをどうやって作るのか個人的な興味はある。ただ、本文にアクセスできないため、ここでおわりとする。


病気にかかったウナギシロエビ Exopalaemon carinicauda から分離された病原性 Metschnikowia bicuspidata MQ2101 株の完全なゲノム解析

三件目。

原題:Complete genome analysis of pathogenic Metschnikowia bicuspidata strain MQ2101 isolated from diseased ridgetail white prawn, Exopalaemon carinicauda
掲載:BMC Microbiology
著者:Wen-jun Shiを筆頭著者として、7名
ジャンル:水産学

3/30にチェックしたものと同じ、ゾンビ病に罹ったエビに関する論文。よって、ジャンルは同じく水産学とする。

過去に触れた論文の続報があるとちょっとだけワクワクするが、これをレビューするとゾンビではなくエビに関するレビューになってしまう。目的から外れるため、内容には触れない。


検索キーワード「zombie」

このキーワードでは経済学・哲学のゾンビ論文がアラートに入ってくる。誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。

固定資産投資に対するゾンビ企業のクラウディングアウト効果:中国からの証拠

原題:The crowding-out effect of zombie companies on fixed asset investment: Evidence from China
掲載:Research in International Business and Finance
著者:Meixu RenとJingmei Zhao、Jinxuan Zhaoの三名
ジャンル:経済学

タイトルの通り、ゾンビ企業に関する論文。


障害の優生学:変容、未来、そして障害者の怪物体

原題:A EUGENICS OF DISABILITY: TRANSFORMATION, FUTURITY, AND THE DISABLED MONSTER BODY
掲載:Project(ing) Human: Representations of Disability in Science Fiction
著者:Elliot Mason
ジャンル:社会学

ゾンビ論文あるあるの「誰かをゾンビなどのモンスターとして描写することの分析」。


「グロッシー・グリーン」の銀行: 環境開示と融資活動の断絶

原題:“Glossy Green” Banks: The Disconnect Between Environmental Disclosures and Lending Activities
掲載:European Central BankのPress
著者:Mariassunta Giannettiを筆頭著者として、四名
ジャンル:経済学

”zombie firm”や"zombie lending"などの文字列が見られるため、ゾンビ企業に関する論文。


無意識:現代の紹介

原題:The Unconscious: A Contemporary Introduction
掲載:このタイトルの本がある
著者:Joseph Newirth
ジャンル:心理学

無意識というからにはジャンルは哲学かと思いきや、著者の専門は心理学。また、引っかかった検索キーワードが「-company」で「-philosophical」ではなかったため、それでよいだろう。「zombie」は概ね"zombie film"という文字列で現れていた。


まとめ

「zombie -firm -company -philosophical」の三件は社会学、ソフトマター物理学、水産学一件ずつだった。

ソフトマター物理学の論文はゾンビ論文と呼んでは違和感があるものの、私の興味を強く引き寄せた。単なる興味。何がどうなっているのか知りたいという気持ちが学生時代ぶりに蘇った気がする。

そんなことないか。ゾンビ論文のチェックをしているとしょっちゅうある。ただそれでも、今回はその気持ちもひとしおだった。

今日はねらいのゾンビ論文なし。


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