交差
盲導犬を連れた方がいた。降りる駅は同じだった。駅にはホームドアがない。気になってベンチに座って見守った。その方はホームに降りたあと、カバンを背負いスリングをしっかりと締めた。時間をかけたのは降車後の混雑を避けるためかもしれない。盲導犬がわたしの前を通り過ぎようとしたとき、同じくベンチに座っていた見知らぬ女性が立ち上がった。静かに盲導犬の後ろにつく。わたしはその後を追う。長いホームを歩き、長いエスカレーターに乗った。だれも声をかけることもなく、それは改札を抜けるまで続いた。1匹と3人が交差した夏の夜のはなしこの記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？