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住む場所を自由に選ぶ、越境するデジタルノマドの存在感

コロナで働き方が、世界中で大きく変わっています。日本でもテレワークは普及し、コロナ以降もIT業界や中小企業から、NTTグループのような大企業までテレワーク継続の方針を次々と打ち出しています。

拡がる越境リモートワーク

海外では、シリコンバレー離れが進み、「働くために住む場所を選ぶ」という価値観から、「住む場所を選んだ上で働く」という選択をする人が増えています。さらには、国境を越えてリモートワークが拡がり、住む場所を自由に選択する人、またそれにあわせる企業が続々と増えています。

上記記事にある通り、フリーランスも大幅に増え、副業人材やシェアエコで稼ぐ人も急増しています。アメリカでは移民へのビザ発給も急減。人口の移動にも影響を与えています。

企業側もオフショアや現地にオフィスや工場を作るのとも違って、世界中のテレワーク・リモートワーク、遠隔でのマネジメントスタイルに代わり、この環境の変化をむしろ競争力として、優秀な人材採用やコストダウンに活かしています。

当社も1年以上前からフルリモートワークに切り替え、事業構造がマネジメントスタイルまで大きく変化し、今では東京だけでなく、静岡、大阪、島根など各地域に暮らす優秀な人材を採用し、むしろその地域に住んでいることを活かしてそのエリアの開拓・運営サポートを任せています。

(瀬戸内海の無人島でのエクストリームワーケーション)

島根県は津和野町には、自治体のサポートを得てオフィスも設立し、現地採用にも成功するとともに、住まいをどこでもOKにしたことで通常だと採用しずらい開発系の社員も群馬に移住した人材やこれから東京から地方に移住するという人材までスムーズに採用することができています。

当社の取り組みやテレワークの課題については、以前書いた下記記事もご参照ください。

出遅れる日本、企業と社員で大きなギャップも

それでは、日本の状況はどうかというと、パーソル総研がコロナウイルス対策によるテレワークの影響に関する調査レポートを発表されており、そのデータを見ると、企業と個人の意識のギャップが明白な状況です。

「図表4.コロナ収束後のテレワーク継続希望率」では、調査する度に継続希望率が上がっており、最新のデータでは何と78.6%もの社員が継続を希望しています。

一方、「図表9.ワクチン普及前後の企業のテレワーク方針」では、ワクチン普及後にテレワークを継続する予定の企業は、わずか25.5%。43.4%もの企業が方針すら決まっていない状況です。

いち早くテレワーク継続の方針を発表した会社の社員は、引っ越し・移住、多拠点生活など、住まいを自由に選べるようになりました。

このギャップの背景には、「図表1.テレワークの生産性」に表れている通り、テレワークによって全体平均で84.1%と生産性が落ちているのです。当社も経験しましたが、テレワークを導入するだけでは生産性が上がるどころか、普通はむしろ下がります。様々なデジタルツールやシステムを導入し、業務フローも変更し、マネジメントスタイルや就業規則も変更する必要があります。社員だけでなく、様々な雇用形態のスタッフと信頼構築や雑談、1on1やビジョンの共有、実際に会う機会を増やすなど、様々なテレワークシフトが必要です。簡単ではないですが、真剣に向き合った企業は、その結果、業務効率が上がり、生産性も幸福度も高まります。

(島根県津和野町でのエクストリームワーケーション)

フルリモートワークではなくとも、ハイブリッドで出社する機会を増やしたり、工場勤務など出社がマストな職種の場合は、ユニリーバ社のように職種にあった働き方を考えて、工場勤務は1日当たりの労働時間を少し増やす代わりに週休3日制を導入する企業もあります。

同社の人事担当役員の島田由香さんは、

「平等と公平は違う。日本の組織は、出社しないといけない職種の人たちがいるので、平等にリモートワークで切る人たちも出社させようとする。私たちは一人ひとりのウェルビーイングを重視し、出社しないといけない工場勤務の人たちが話し合った結果、週休3日制という提案がボトムアップで生まれた。私たちはこれを公平と呼んでいます。」

と言ってました。まさに日本は教育機関も企業も行政も、平等にし過ぎて、一人ひとりを見ていない。結果みんなで我慢しないといけない状況を自分たちで作ってしまっています。

「図表2.コロナ禍によるキャリア・就業意識の変化」では、「テレワークできる会社・職種に転職したい」思いが強まった人は17.6%います。一部の人として捉えるのか、上位20%の生産性高い人や成長著しい若手社員の声として捉えるのか、ワクチン普及後の日本企業が向き合う現実が迫ってきています。

世界で拡がるデジタルノマドビザ

最後に、海外に話を戻すと、住む場所を選ぶ人たちの中には、多拠点生活を楽しむ人たちが増え、デジタルノマドと呼ばれています。彼らはクリエイティビティが高い傾向にあるため、コロナ以降は世界中でその人材の誘致合戦が始まっています。

電子国家として注目されているエストニアは、2020年8月デジタルノマドビザの発行を開始しました。通常ビザは、30日から90日程度ですが、エストニアのデジタルノマドビザは、最長1年間滞在できます。その条件として、

・エストニア国内で場所を選ばずリモートワークできること
・申請の半年前に3,504ユーロ(約43万円)以上の月収を証明できること

が挙げられています。同様に上記記事にも紹介されていますが、フリーランスに人気が出つつあるジョージアも月収2000ドル(約21万円)以上などの取得条件をクリアするこで、1年間滞在できる就労ビザの発給を始めました。

カリブ海諸国のバルバドスでは、年収5万ドル(約530万円)以上の人を対象に、1年間滞在できるテレワーク用ビザの発給を始め、2020年夏以降、何千人もの当該からのデジタルノマドの誘致に成功しています。

またタイでは、長期滞在する外国人富裕層向けに、タイ観光庁傘下のタイランド・プリビレッジ・カードが運営する会員プログラム「タイランドエリート」というVIP向けの特典カードを開始されています。

1000万バーツ(約3500万円)以上の提携物件を購入すると、5年間タイに滞在できる特別査証(ビザ)のほか、空港でのラウンジ使用や専用レーンでの優先的な入国審査、百貨店やゴルフ場での割引といった「最重要人物(VIP)待遇」が受けられるとのこと。

今、デジタルノマドは2030年代に人口の11%を越えるという予測があります。日本で言うと1000万人以上がそうなる未来がきても不思議ではありません。国内での多拠点居住や関係人口の増大はもちろん、海外のデジタルノマド人材を誘致できるかどうか、観光が落ち込む中、すでに競争は始まっています。

国内で人口減少が進むなか、各自治体が移住定住者の奪い合いをして疲弊している場合ではなく、いかに関係人口やデジタルノマドを増やし、誘致できるか、観光でもなく移住でもない働く場所を自由に選ぶ彼らが暮らしやすい仕組みを整える必要があります。


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