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住宅不足と社会統合の壁

昨日、ストックホルム県の自治体でインテグレーション(社会統合)に関わる公務員向けの交流会のような会議がありました。
主催はLänsstyrelsen Stockholm㊟1
色々な自治体の話を聞いてみてやはり、

ストックホルム県におけるインテグレーションの最大の壁は、住宅不足!

と痛感。

Etableringsprogram

割り当て難民Kvotflyktingarは2-3年間、Etableringsprogram エスタブリッシュメント プログラムという、スウェーデン社会で生活を築くのを国が支援するプログラムに参加し、 
移民庁が割り当てた自治体で当該自治体が用意する住宅に住みます。
この期間、国が家賃と生活費を補償するため、割り当て難民Kvotflyktingarはスウェーデン語勉強と職業訓練に専念します。(理想です)
プログラムが終わった後は、割り当て難民Kvotflyktingarは自治体の住宅を出て、自分で見つけた別の住居に引っ越し、自分で家賃を払わなければなりません。
この「別の住宅を見つける」というのが、ストックホルム県では難しい!

スウェーデンの住宅事情

スウェーデンの人口は増加していますが、住宅市場が需要に追い付いていません。
(住宅市場の民営化に伴い、住宅価格が爆上がりしているというのも住宅難に拍車をかけています)
特に大都市は手頃な賃貸物件の不足が深刻です。
非移民のスウェーデン人も若い世代は安定した手ごろな住宅を手に入れるのが難しくなってきています。

手頃な賃貸物件を借りるためには、
①Bostadkö(住宅の順番待ち列)に並ぶ=Förstahand kontrakt 直接契約

②Blocket (ジモティーやメルカリのようなサイト)やFacebookで貸してくれる個人を探す=andrahand kontrakt 又貸し契約

②は短期契約や不安定な契約が多く、6か月で引っ越し、なんてことも。

自治体は①でちゃんとした賃貸を見つけることを応援します。
しかし①の場合、多くの難民の人たちはストックホルム県以外の県へ引っ越すことになります。
なぜなら、ストックホルム県は住宅の順番待ち列がめっちゃ長いため

(Bostadsförmedlingen .
Hur lång tid tar det att få en bostad genom oss? - Bostadsförmedlingen i Stockholm AB)

都心の方では16年、郊外だと6年。
順番待ちをしている間にetableringsprogram期間が終わってしまいます。

住宅難の影響→インテグレーションの長期化

結果として、
難民の人たちは2-3年かけて学校や語学カフェ、子供の保育園や学校を通して築いた社会的ネットワークを失うことになります。
スウェーデンのインテグレーション政策は、Självförsörjande経済的自立を重視ししています。
しかし、
難民の人がスウェーデンを自分の家と感じ、
この社会に参加しているなと実感する(社会的インテグレーション)ためには、社会的ネットワークが大切です。


他県への引っ越しにより、
難民の人たちは新しい土地でネットワークを一から作り直し、再び社会的インテグレーションを始めなければならないのですね。
つまり、インテグレーションにさらに時間がかかってしまいます。

(Boplats Göteborg
Boplats Göteborg - Boplats i siffror)

(Boplatssyd.se
boplats_syd_statistik_2020.pdf (boplatssyd.se)


㊟1 Länsstyrelsen は国の地方行政機関。詳しくは 財団法人自治体国際協会「スウェーデンの地方自治」9頁
http://www.clair.or.jp/j/forum/series/pdf/j15.pdf

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