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【映画】『RRR』がこんなにもヒットする理由

映画館へは半年に1度足を運ぶぐらいの人でも、2022年10月21日に公開されたインド映画『RRR』の話題は聞いているだろう。

2/25配信の『AREAdot.』の記事によると、

公開当初全国210館でスタート。12週で64館まで徐々に減ったが、13週で86館に復活。14週で108館、15週で112館と息を吹き返した。
『AREAdot.』より

という状況らしい。つまり、最初は一部の映画好きだけが観に行っていたのだが、口コミで一般層まで人気が広がり、観客が増えた、と考えられる。

筆者も何人かの知り合いに「絶対に観た方がいい」と言われたし、ネット上でも「これは観るべき」という声があふれているのは知っていた。にもかかわらず、実際に観たのは、年が明けて2か月が過ぎようとしていた2/24。重い腰をあげた理由は、そろそろ劇場公開が終わりそうな予感がしたからだ。

映画RRR看板新宿ピカデリー

いまいち足が向かない人の気持ちはよくわかる。なにしろ上映時間が3時間だ。3時間といったら、カレールーの中のジャガイモが完全に煮崩れて消え失せているぐらいの時間。

映画RRRチケット新宿ピカデリー

さらに、万人受けするよう趣向をこらされたハリウッド映画ではなく、インド映画。つまり『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年)で焼きついた、「インド版ミュージカル」のイメージ。これまでにおもしろいミュージカルを一度も観たためしのない筆者にとっては、それも足が遠のく理由だった。

しかし今回、実際に観て、『RRR』はマーヴェラス(すばらしい)だと言いたい。

心配していた上映時間だが、3時間でグッド! むしろ、あれより短くするのはムリ。体感は2時間といったところ。短く感じる原因は、おそらくストーリーにある。展開が早いうえに、二転三転どころか、五転六転、いや七転び八起きしている。普通の映画だったら起承転結の「転」にあたるレベルの山場が、それこそ7、8回あるのだ。これでは退屈しようがない

炎を飛び越えるラーマとビーム映画RRR

簡単にあらすじをいうと、次のようになる。

時代は1920年代の英国圧政下のインド。横暴な英国総督の妻に幼い妹をつれさられた兄が、首都デリーで妹をとりもどそうとする。その過程でひとりのインド人と仲良くなるのだが、その男は英国側の警察官で……

インドを苦しめる英国をやっつけたい気持ちは同じ。しかし、それぞれの事情から誤解し、裏切り、血が流れる。とにかく、観る人の感情をゆさぶるシーンが多い。顔をそむけたくなるシーン、感動するシーン、そして大笑いするシーン。

そう、3時間あると、胸を打つシーンのあとに、観客を大笑いさせるシーンを入れる余裕がある。『RRR』のアクションシーンは、思わず笑ってしまうくらいオーバーだ。たとえるなら、『少林サッカー』(2001年)ぐらいむちゃくちゃ。『RRR』の中で、主人公たちが完全に人間の動きを超えたジャンプをしたとき、S・S・ラージャマウリ監督が観客を笑わせにきてる、と筆者は確信した。

それから気になっていたもうひとつの点、ミュージカル要素。これは、まったく違和感ない形で挿入されていた。違和感ないどころか、W主演の二人は一流のダンサーでもあるらしく、劇中の二人によるキレキレダンスがYouTubeで公開されるや、2.5億回再生される人気ぶり。しかもこの動画(↓)は、言語ごとに別バージョンもあるので、合計した総再生数は天文学的数字になりそうだ。

頭の固い人の言うように、確かに荒唐無稽の側面はある。ご都合主義もある。しかし、そういう型にはまった指摘を「だからどうした?」とぶっ飛ばすパワーにあふれている。大ヒットも当然だ。

劇場パンフレット

というわけで、筆者は「観てよかった」と断言する。劇場パンフレットによると、ラージャマウリ監督は続編制作に興味がないらしいが、今回の特大ホームラン級ヒットをうけて、さっそく主要スタッフが動き出したとのこと。監督の気が変わるのも時間の問題だろう。というか、今頃ノリノリで次回作の構想を練っているかもしれない。

続編がたとえ上映時間6時間でも、筆者は観るつもり。その価値はあると思わせるに十分な映画だった。


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