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『翔んで埼玉Part II(仮題)』の公開が2023年なのでPARTⅠのすごさを再確認

■話題になった前作

SNSでバズったという理由で、30年前の漫画がいきなり復刊。作者は『パタリロ』で有名な漫画家・魔夜峰央氏。その勢いのまま、映画化までされたとの逸話を持つシンデレラ・ムービー『翔んで埼玉』

興行収入は、ヒットの条件といわれる10億円を余裕で超える37.6億円。日本アカデミー賞では、最優秀賞3つを含む12部門で優秀賞をゲット。こうなったら、どんなに厳しい映画会社もパート2制作にゴーサインを出さざるをえない。

事実、2021年夏に続編制作が発表され、撮影が進んでいた。だがW主演の1人GACKT氏の体調不良により中断。それから約1年の時がたち、フジテレビ系列でパート1がノーカット放送された。その番組内でGACKT氏の口から撮影再開が発表されるやいなや、各SNSにて喜びの声があふれたのは記憶に新しい。

ノーカット放送時に、筆者はテレビでパート1をあらためて観た。そして、大ヒットも当然のおもしろさを持っていると、再認識した。

■大ヒットには理由がある

映画の舞台は、埼玉県民が理由もなくしいたげられている、架空の関東地方。「埼玉県人には草でも食わせとけ!」「生まれが埼玉だなんて、おぞましい」などの差別発言がポンポン出てくる。そんな胸の悪くなるような状況の日本を、GACKT氏演じる麻実麗が……というストーリー。

くわしく言うと、その「埼玉が差別される世界を描いた物語」が朗読されるのを、現実世界の埼玉に住む一家がラジオで聴いて、怒ったり感動したり、という入れ子構造になっている。

とにかく映像のテンポがいい。あと、シンプルに笑える。埼玉の悪口が言われている場面は、観ていて心がチクッとするけれども、主役が輝くための前ふりだからしょうがない。さげすまれた埼玉のために、麻実麗(GACKT氏)が立ち上がってからは、いちいちカッコいいし、いちいちキザだし、いちいち笑える

W主演の二階堂ふみ(壇ノ浦百美役)も、バカらしいくらいにクールな麗に恋する、けなげな美少年役を見事にこなしている。オーバーなように見えて、抑えるべきところはきっちり抑えた演技は、二重丸。

左からブラザートム、島崎遥香、麻生久美子

現実世界に住む家族の場面も抜かりはない。一家の娘役は、元AKB48の島崎遥香。塩対応で有名な、ただのアイドルだと思っていた筆者の固定観念がくつがえされた。両親に口うるさく文句を言う、年頃の女の子をものすごくリアルに演じている。 

そして、これらの映像を1本の映画にまとめ上げた監督の武内英樹、編集の河村信二などの手腕も見逃せない。観客を笑わせる映画を作るのは、とてつもなく難しい。登場人物たちがワチャワチャやっているだけでは、もちろん笑いは起こらない。

そこには「間」と呼ばれる、会話のテンポが必要だ。しかし、いくつもの角度から撮った映像を組み合わせて1つのシーンを形作る映画という表現形式においては、「間」は編集で作ることも多い。その「間」が、今作品ではしっかり機能している。筆者は何度も笑わせられた。

翔んで埼玉原作マンガ
『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 (Konomanga ga Sugoi!COMICS)』

ちなみに、「埼玉ディスり」ばかりがとりざたされる原作。だが実際に読んでみると、差別される側の気持ちが丁寧に描かれていて、良作。原作が先でも、映画が先でもガッカリしない、めずらしいケースだろう。

■『翔んで埼玉Part II(仮題)』へ……

コメディ映画は日本ではヒットしないと言われているらしいが、『翔んで埼玉』はそのジンクスを破った。同じ監督、同じスタッフ、同じ出演者なら、PART2も笑えるに違いない

『翔んで埼玉』公式HP

だが「笑いのハードルはできるだけ下げるべき」という、「間を大事にする」と同じく重要な笑いの法則がある。それにしたがい、こう言って当記事をしめたいと思う。

パート2も観にいって損しない映画だと思う、たぶん。



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