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大人はスーパーマリオの映画をどう観るべきか?ーー『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ーー

4月28日に日本で公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』。任天堂とアメリカのアニメ制作会社イルミネーションがタッグを組んで生み出されたこの映画は、すでに全世界で大ヒットしている。

ところが日本での盛り上がりはいまいち。街のカフェで耳をすませても、誰もマリオの話をしていない。これは、作品のおもしろさがきちんと伝わっていないからではないのか。

そう思った私は、この映画の楽しみ方を解説することにした。もちろん「私なりの楽しみ方」だが。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー

■全世界で大ヒット中


先行して4月5日に封切られたアメリカでは、4週連続全米No.1を記録。公開1ヶ月で全世界での興行収入が10億ドルの大台を超えた。(BoxOfficeMojoより)

2022年の超特大ヒット『トップガン・マーヴェリック』の公開1ヶ月後の世界興行収入が約10億ドルというから、マリオがトム・クルーズと余裕で肩を並べているのがわかる。(HYPERBEASTより)

ドルビーアトモスとMX3D

■ゲームが原作


『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、言うまでもなくコンピュータ・ゲーム『スーパーマリオ』シリーズの映画化だ。

ゲームの映画化は簡単ではない。そもそも映画化されるということは、原作のゲームは相当おもしろいはず。ファンはゲームのおもしろさに負けないレベルの映画を期待する。

それがどれほど難しいミッションかは、素人でも想像できるだろう。数少ない成功例のひとつはバイオハザードか。

バイオハザードとストリートファイター2

失敗例は……いや、スト2を持ち出すまでもなく、「映画の墓場」には無数のゲーム原作映画の残骸が転がっているに違いない。

■いざ、映画館へ

新宿TOHOシネマズ

私が行ったのは、公開初日4月28日(金)の深夜の部。上映方式はMX4D3D吹替。客席を見渡すと、もちろん子供はいない。にもかからず、ほぼ9割の席がうまっていた

4Dのため、座席がゆれたり、顔に風がふきつけてきたりといったアトラクションを体験できる。そのせいかカップルが多い。年齢層は20~50代といったところ。やがて場内が暗くなり、私はドキドキしてスクリーンを見つめた。

92分後……

■鑑賞して

ニンテンドーとイルミネーション

※以後、ストーリーのネタバレではないですが、内容バレを含みます

まず思ったのは、任天堂がイルミネーションと組んだのは正しいということ。

3Dゲームのマリオを見慣れている我々にとって、今さらセルアニメのマリオは違和感がある。実写となれば、もはやギャグ映画にしか見えない。

だが、イルミネーションの高い技術力によって、マリオやルイージは単なる3Dを超え、まるでパペットを実写で撮ったようなリアリティをそなえるまでになっていた。手を伸ばせば、人形の腕にふれられるとでもいった具合に。

マリオとルイージ

そういう「パペット」たちが、スクリーン上を自由自在に動きまくる。

登場するキャラクターたちだけではない。海水の質感、溶岩の照り、噴き出る煙。どれも実写にかなり近い。

これらリアリティのある3DCG映像が、ピンク屋根の城、クッパの姿をした空飛ぶ船、レインボーカラーのサーキットとともに視界に飛びこんできたとき、ポップな色彩にあふれたマリオ・ワールドが目の前にあらわれる。

ポップな色彩にあふれたマリオ・ワールド

つまり、1981年の『ドンキー・コング』以来、40年強の歳月をかけて任天堂が創りあげてきたマリオ・ワールドの全景が、この映画で表現されている。

その一点だけでも、観る価値がある。

海外ではひねりが欠けているという指摘(BBCレビューより)もあるようだが、私はそうは思わない。クッパの二面性は映画の心理描写に深みを与えているし、ところどころのコメディ要素は、物語が一本調子になるのを防いでいる。

大魔王クッパ

ただ、「マリオ・ゲームに親しんだことのある人向けの映画だ」という意見には賛成する部分もある。正確には「マリオ・ゲームに夢中になったことのある人は、より楽しめる」ということだが。

私はリアルタイムで『スーパーマリオブラザーズ』をプレイした。1-1がスタートすると同時に鳴ったメロディが、この映画内でも流れたとき、私の頭にひとつの景色が浮かんできた

それは、テレビとファミコンと子供の頃の私が同じ空間にいた、懐かしいリビングの光景だ。

ファミコンのある光景

『スーパーマリオカート』『スーパーマリオ64』『スーパーマリオギャラクシー』などなど、遊んだゲームによって、それぞれがそれぞれに過去の楽しかった記憶を呼びさまされるに違いない。

これは、この映画からもらえたすばらしいギフトだ。

スーパーマリオカートのレインボーサーキット

とはいえ、マリオゲームにはまったことのない人も、この映画をきっと十二分に楽しめる。任天堂が長い時間をかけて創りあげてきたマリオ・ワールドが、そんじょそこらの映画世界に負けるわけがない。今後のさまざまな展開を可能にする実力も、しっかりそなえている。どうか安心して映画館へ足を運んでほしい。

■最後に

3D  メガネ

すでに鑑賞した者として、アドバイスを言いたい。料金は倍にはねあがるけれども、できれば3Dか4Dで観てほしい。その方が映画に入りこめるはず。

その際は字幕ではなく、吹替で。空中に浮かんだ3D字幕を読むのは、けっこうつらいと思うので。

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