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図書館にいた「族」の話

中高一貫校のメリットは、付属の図書館がデカい。そして、中学校1年生の田舎娘にはちょっと対象年齢的に早い本も、普通に手に取ることができ、読めるところ。

それまで公立の小学校のこじんまりした図書館しか出入りしていなかった私の前に巨大な図書館が現れて、いわゆるちょっとクラス馴染めてない状態、となると、毎日昼休みにふらっと訪れる憩いの場になるのに、そう時間はかからなかった。薄暗いところ、結構落ち着くものよね。

ちらっと視線を移すと、図書館内には司書が何人もいて、いつも貸出カウンターの中で本をひたすら片付けたり、修理している。その横に級友たちが入って、なにやら楽しそうに話をしている。彼女たちは、各学期の始めにクラスで決める係で図書係に選ばれた人たちで、普段は生徒が入ることのできないはずの貸出カウンターの中にすっと入っていく謎の存在だった。

クラスで決める係というのは、クラス馴染めてない人間にはかなりハードルの高い制度で、級長や副級長といったクラスメイトの信頼を集めて"自然と”選ばれる係には全く縁がないだけでなく、陸上部やバスケ部のエースがみんなの期待を受けて立候補するスポーツ系の係にも到底右手を挙げられる状態でもなかった。
図書係になってみたいな、と思っても「図書係は〇〇ちゃんね」とクラスのエースが言うと、周りのみんなも「そうやんな」という流れになり、指名された本人も「では、まあやらせてもらいます」みたいな感じで、永年図書係になったままでいる。固定された川の流れには手を入れることすらできない。

永年図書係の彼女たちは、公称で「族」と呼ばれており、もともと図書館のことをセンターと呼んでいる我が母校では、いつしかそのセンターが消えて、「族」だけが残った、というルーツまでしっかりみんなに認識されている存在だった。各学年に「族」はいて、先輩のことを「お姉さん」と呼んであたかも家族のような組織を作り上げる彼女たちのしきたりは、今でも受け継がれていたりするのかな。

「族」にも負けないほど、本は読み漁っていた気がするし、そもそも、その独特な「族」に特別入りたかったわけでもないけれど、クラスで決める係はそんなもんでは決まらない。もっと大きなクラスを支配する流れで決まる。悲しいほどそのプロセスに入れない、自称一人「族」の田舎娘に、今なら言える、「案ずるな、今のままで生きろ」と。noteには野生文芸部、を名乗る方が結構いらっしゃる。風が吹いても良し、種が飛んできても、ご自由に、みたいな柔軟さを文章から感じている。

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