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林檎の小説

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書いた小説のまとめ
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記事一覧

【短編小説】水辺の猫

 圧縮していただけだった。その広さに限りのある『心』という空間に、喜びや幸福感という動き…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】柄のシミ

 薄暗く冷たい倉庫の中で積み上げられた段ボールのプリントが、にやりとして、私のことを嘲笑…

鯖林檎。
1年前
8

【短編小説】バス停の行列

※以前に書いた以下の物語と同じ世界の話です  市営の美術館で行われている名も知らぬアーテ…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】起きたイベント、起こすイベント

「68円のお返しです」  真夏の昼下がり。都内某所のコーヒーチェーン店内で小銭とレジスター…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】お嬢ちゃんと呼ばれたくて

 私は何故そのようなことをしてしまったのだろうかと深く後悔していた。  目の前には四方80…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】茶碗蒸しの筍

※以前に書いた以下の物語と同じ世界の話です  BGMの流れない喫茶店ではブレンドを啜る音だ…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】Detonator

「これじゃあ火薬が足りないよ」  アーサーは目の前で覚束なくめらめらと燃える1本の細い枯れ木を見ながらそう言った。  冬の乾燥した空気が炎を手伝っていたので、鎮火させるのは決して容易ではなさそうだったが、片田舎の河原に寂しくそびえ立つそれがただそこで燃え尽きていくことは、この小さな町において許容の範囲内の出来事でもあった。 「フィン。君は僕がバカになったと思うか」  親友のアーサーが決して気が狂ってしまったわけではないことをフィンはよく知っていた。ビー玉を口に入れれば飲

【短編小説】均一かつ日替わりのジャム

 ーーメモ1 テーブルの上の青いノートを見ろ。  アラームが鳴り響いた寝室の部屋の天井に…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】ワイシャツの皺

 晴天のもとでアイドリングしている車とその運転手である編集者が、約束の時間を過ぎてもそこ…

鯖林檎。
1年前
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【短編小説】消滅のプロセス

 「こっちに投げろ」  どこからともなくそんな声が聞こえてきたので、まずは辺りを見回すこ…

鯖林檎。
1年前
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