同期のカターレ #6 「チームになれず まさかの降格」

2014年。
北陸新幹線の金沢までの開業を控え、県内は盛り上がっていた。
カターレ富山もそれに乗っかり、「2015年にJ1昇格プレーオフ進出」という中間目標に向かって、この年は10位以内を目指していた。

選手では、足助、舩津、黒部といった中心選手が去ったが、白崎がレンタル期間を延長し、福岡からGK水谷、京都からDF秋本と実績のあるベテランを獲得、さらには札幌から三上、レンタルで清水から内田健太、中国人の期待の若手DF高准翼も加入し、補強は充実。
そして1月に入ってから、U21日本代表の中島翔哉(現日本代表)をFC東京からレンタルで獲得して期待は高まった。

開幕戦は同期の岡山戦。
この試合はGK水谷の活躍もあってスコアレスドローでのスタート。
そんなに悪くないのではとも思ったが、ここから思わぬ不振に陥ることになる。
次の試合から6連敗。1分けを挟んでさらに1敗し、9試合を終えて勝ち点2、得失点差−17という状態で最下位に転落していた。

続く4月最後の松本山雅戦。
ここで中島翔哉が移籍後初ゴールをあげると、高准翼と苔口のゴールで3−2で勝利した。

これで調子は上向くかと思われたが、そこからさらに9連敗。
この間には、最下位だった讃岐にもJ2初勝利を献上し、最下位に転落している。

当然これだけ負け続ければ監督の去就も話題になる。
しかし、ここで、安間監督が6月の湘南戦を前に、ここから5試合で3勝できなければ判断を会社に任せるという、謎の進退伺を出していたことが明らかに。
だが、そんなことが明らかになっても内容は変わらず、湘南戦からもあっさり3連敗を喫して、当然監督は交代するはずだった。

そんな中で迎えた長崎戦。
この試合は雨の中行われていて、カターレは何とか守って終盤まで相手を0点に抑えて来た。
しかし、得点は奪えず、アディショナルタイムに入る。
試合終盤からゴールに近づいていたがなかなか決められず、何とか引き分けで連敗はストップかと思っていたところだった。

怪我で6月からようやくメンバーに入って来た朝日が、この日も途中交代で入って来ていた。
そして、その朝日がCKからのこぼれ球から見事なミドルシュートを決めて1−0で試合は終了。
連敗は9でストップした。

ただ、この1勝があったとしても監督の当初の申し出は5試合で3勝できなかったらというもの。
3敗した時点で監督の交代があってもよかったのだが、そうはならなかった。
それどころかこの1勝をもって、安間監督が継続して指揮をとることが発表された。

これには正直失望した。
結局、次の栃木戦も敗れて、試された5試合は1勝4敗で終わったのだが、結局監督を代えてチームを変えようとはしなかった。

実はこの発表がなされる前、人気のあったソ・ヨンドクが退団し、韓国への帰国が急に発表されるということもあった。
チームはどこかチグハグだった。

その後、チームはシーズン途中に例年以上に強力な補強を図る。
京都からFW宮吉、甲府からMF井澤、FC東京からGK廣永、札幌からMF前、さらには韓国人DFパク・テホンが加入し、森泰次郎がレンタルから復帰した。
ただ、その一方で、ずっと出場はしていたが思うような結果が残せなかった中島翔哉がシーズン途中にFC東京に復帰、出番の少なかった村松や西川がレンタル移籍でチームを離れていた。

夏の補強があって以降は大敗は少なくなったが、依然としてなかなか勝つことができない。
長崎戦の後の3勝目は9月の東京ヴェルディ戦だった。
結局、監督を代えなかったため成績が上向くことはなかった。

10月に水戸戦で勝利するが、21位の讃岐との差も広がり、降格決定は目前に。
松本山雅との試合に敗れて、とうとう一つの負けも許されなくなった。

11月に入り、そこで迎えたのは昇格同期の栃木戦。
絶対に勝ちが求められる試合は、21位の讃岐の試合と1時間遅れで始まった。
前半栃木に攻められ、ゴール前でDFパク・テホンが相手FW大久保を倒したとしてPKを取られる。
絶体絶命のピンチ。
ゴールを守るのは久しぶりにスタメンとなったGK飯田だった。
カターレサポーターが陣取るゴールの前で行われたPK。
巻き起こる飯田コール。

これまでカターレの試合でPKを止める場面はあまり見たことがなかったが、大久保の蹴ったボールは見事に飯田が止めた。
まだこれからだ。
そう思いながら前半は終了した。

この試合はずっとラジオの実況を聞きながら見ていた。
ハーフタイム中、讃岐が引き分けたという情報が流れる。
これにより、J3への降格は決定した。
ラジオ中継の解説をしていたチーム創設時のメンバー長谷川満は泣いていた。

おそらく観客の人たちにも情報は入っていただろう。
だが、誰もその情報を口にしなかったように思う。
現実を受け入れたくないという気持ちと、ただ打ちひしがれてしまった気持ちと。

そんな状態の中で、後半は始まった。
前半同様に、サポーターは応援し、歓声を送った。
そしてMF前のゴールで先制する。

絶対に負けてはいけない試合。
勝ったとしても讃岐が勝ち点を取れば降格が決定する試合。
負けてはいけないと言いながら、そんな試合のほとんどをこの年は負けてきた。
せめてこの試合だけでも、という気持ちだったかもしれない。

思いは通じて、この1点を守りきり、シーズン5勝目をあげた。
だが、降格は決定したため、喜びはない。
その意味でも悲しい試合になった。

ただ、シーズンはここで終わりではない。
まだ3試合残っている。

続く京都戦は頑張ってアウェイで引き分けた。
上位を争っていた京都にとっては痛い引き分けになったはずだ。
次の相手は千葉。
宮吉のゴールで先制したものの逆転負けだった。

そして最終戦は同期の岡山戦。
せめてもの意地を見せて欲しかったが、実力差が大きく0−3の敗戦。
最後には相手GKの交代もあるという屈辱的な負けだった。
開幕戦では引き分けた相手に、最終戦では大敗する。
大きく差がついたことを実感する敗戦だった。

こうしてJ2での戦いはひとまず6年で幕を閉じた。
カターレは今もなおJ2復帰を果たせずにいる。
今年はまだ可能性があるので何とかなってほしいが、こればかりはわからない。

2009年に昇格してから6シーズン。
J2で多くの試合を戦って様々な体験をした。
勝ちよりも負けの方がはるかに多かったが、勝った試合は最高だった。
とはいえ、その記憶もどんどん昔のものになっていく。
一緒にJ2に上がった岡山や栃木との差も開いてしまった。
そして、結果的に現在も続いている事実がある。

今のところ、J2最後の白星は昇格同期の栃木であり、J2最後の黒星は昇格同期の岡山である。

2014年成績(全22チーム)
富山 22位 5勝8分29敗
栃木 12位 15勝10分17敗
岡山 8位 15勝16分11敗

直接対戦成績
富山 1勝1分2敗
栃木 1勝3敗
岡山 3勝1分

得点者
苔口卓也 8点
秋本倫孝 3点
宮吉拓実 3点
前貴之  3点

次回予告
同期のカターレ #7 「第2章 J3編 チームが目指しているのは何?」

※ドラマに追いついたので、以後は週一ペースで行きます。

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