終わらないで欲しい試合って、本当にあったんだ
パリパラリンピックの男子車いすテニス決勝の話をいい加減しておきたい。
いま自分が一番応援している小田凱人選手と、何度もいろんな大会で戦ってきているアルフィー・ヒューエット選手の対戦カード。
テレビでEテレのサブチャンネル、手元のスマホでYouTubeのライブ配信を流しながら食い入るように観た。
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わたしが小田選手を知ったのは今年の年明け。とんねるずのスポーツ王は俺だ!!が顔馴染みのバーで流れていたのを偶然見たことからだった。
オンエアより前に出ていたテレ朝公式の動画
サーブで修造(ごめんね呼び捨てで)の日めくりカレンダーを見事に撃ち抜いた彼に、釘付けになったのである。同じ場にいた国枝さんだって当てられなかったのに当てちゃうの!?すごすぎる!!みたいな。
即座にインスタをフォローして彼を追い始めた。
オンエア日だった1月2日は、このあと夫から羽田で事故が起きたという連絡をもらってお店を出たということもあって、それも込みでかなり印象的なものとして残っている。
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パラリンピックは、地上波で放送される前の試合はYouTubeのパラリンピックチャンネルのライブ配信を見たりしながら応援していた。地上波で放送された試合も、テレビで国枝さんの解説を聞きながらYouTubeのライブ配信のチャットの盛り上がりを見て楽しんだりして。
いやーやっぱ実況楽しいんだよね!わかる!ついTwitter(今はXだけど)連投しちゃうんだよ、わかるううう。
男子シングルスの決勝は娘の寝かしつけを夫に託して観た。もうテレビとスマホの画面を行き来するめちゃくちゃ忙しない時間だった。
第1セットの第1ゲーム終盤に相手のヒューエット選手が痛そうな顔をして、しばらくタイムアウトになった時には「まさかここで棄権して終わっちゃうなんてことは……」と少し不安になったけれど、その後コートに戻ってきてからの死闘、死闘ベリー死闘ですよ(なんだよベリー死闘って)
すごかった。もうその一言。
たぶん今回のパリのオリパラ通じて一番ドキドキした。
まだアーカイブ観られます。試合開始の頭出ししたのがこちら↓
もう、2週間近く経つけど、未だに作業中にアーカイブを飽きもせず流している。たぶん再生回数の100回くらいは自分。
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途中「いつまで続くんだこのデュース……!」と息を呑んで画面を見つめる時間(たぶん第2セットの第4ゲーム)。
第2セットを取り返されてゲームカウント5-3、相手のマッチポイントでの崖っぷちを、相手のミスで乗り切ってからの怒涛の追い上げ。
小田選手の勝ちを試合通じて疑っていなかったけど、それでもマッチポイントまで追い詰められていく様子を見ながら「まあ、まだ若いしこれから先もあるだろうしな……」とちょっと諦めがよぎったりもした。
そこからの勝ちがドラマティック過ぎて。あれはリアルタイムで試合を追っていなければ絶対味わえなかった感覚だった。本当にリアタイしてよかった。録画していなかったことが悔やまれる。国枝さんの解説を聞き直したかった。
第3セットの終盤は「ああ、このままこの熱い戦いがずっと続いたら良いのにな」と思っていた。
ハイキュー!!の春高での音駒戦みたいなもんですよ。本当にずっと続いて欲しいなと思ってしまった。物語じゃなくてだよ、現実にだよ。すごいよ。
心が震えた。もしかしたら魂から震えたかもしれない。本当に激闘だった。リアルタイムで目撃できたことは、とても幸運だったと思う。
試合が終わって喜びを爆発させる小田選手と、なんとも言えない表情をしているヒューエット選手のアップの抜きが交互に映し出された時(この辺から)の、この喜びと切なさを行き来する不安定な情緒!もうヒューエット選手の顔が見ていて辛くて、胸をギュッと締め付けられるのですよ。ちなみにここで小田選手が上の方を両手で指さしていた先には解説席の国枝さんがいた模様。
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記者会見の動画も何回も再生して聞いてる(そしてダブルスのペアだった三木選手が色んな意味で自分の好きなタイプに当てはまってしまってこれまた動画を漁ったりした)。
あのマッチポイントを乗り切る瞬間まで負けが頭をよぎっていたという話を聞いて、本人も試合しててずっと自分の勝ちを信じ続けられていたわけではなかったのか、と少し意外に思ったのだけれど、その後でメンタルについて質問された時に、「演じて自分を勘違いさせることが大事だと思う。それができなければ現実的な考えしかできない。夢を見ることは批判されるが、夢を見なければ世界は獲れない、一度夢からさめて現実に戻ってしまえばそこからまた火をつけるのは難しいと思っていたから、小さなことは気にせずやってきた」という感じのことを答えていた。
あと、news23だったか、やはりメンタルについて聞かれていた時に、「メンタルが強いわけではなくメンタルをコントロールするのがうまいのだと思う」のだという話もしていて、あーー自分に足りないのはこれ!これだわ!となった。勘違いさせきれてない。どこかでさめてしまっていて、自分を騙しきれていない。仮面をかぶらなくては!(北島マヤ)
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些細なことで試合の流れが大きく変わるのだなあというのを実際のものとして見て思ったのは、果たして小田選手があのピンチを乗り越えて勝利できた要因はなんだったのだろう、ということ。
チャンスの神様は前髪しかない、というけれど、たぶんあれはチャンスの神様の前髪を掴んだとか、そういうものではなかったと個人的には思う。
勝ちまであと1ポイントの状況で「相手も緊張していたと思う」という話もしていた。そう、ヒューエット選手が弱かったわけでは決してない。めちゃくちゃ強かった。勝ちたい気持ちが足りなかったとか、そういうことでもないんだろう。だって四大大会+パラ優勝のゴールデンスラムがかかっていたんだもの。あのドロップショットが入っていれば勝てていたのだ。
小田選手はその流れの変化にきちんと乗った。変化を起こしたわけではなく、起こった変化に乗った。あのミスで勝つ気持ちを取り戻した小田選手の勢いが、ヒューエット選手を上回った。
ほんのわずかな潮目。その変化に乗った結果、勝てた。そんな気がしている。流れに乗りそびれなかったのは、小田選手のメンタルの強さなんだろうなと思う(実際英語の実況もmental shiftって言っててやっぱ気持ちなんだなと感じた)
ただ、勝ちたい気持ちがあっても、国枝さんと戦った時に勝てそうな状況で「勝ちビビりした」っていう話もしていて(こちらの動画)、勝ちビビリってものがあるのか!面白いな!なんて。
え?どんだけ関連動画見てるんだって?いや、めっちゃ見てるよ今わたしに必要なのはメンタルの強さだから。ヒントをつかめたらと思って見漁ってる。
大谷選手がやっていたマンダラチャートもやっていたりして、目標設定ってやっぱりものすごく大事なんだなと痛感したりしているよ。メンタル鍛えるよ、頑張るよ。
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で、勝った直後のインタビューはめちゃくちゃテンション高くてちょっと叩かれたりしてたけど、もうあれですよ、産後ハイでアドレナリン出まくった経験がある自分には「わかるーわかるよー」としか思えず。
その後の国枝さんのインタビューはある程度落ち着いて話せていて、もうそれだけですごいじゃーん、みたいな気持ちになった。自分が娘を生んだときはそんなすぐにはおさまらんかったよ……。
小田選手にはこれからも夢を語って欲しいし、たくさん夢を実現させて欲しい。その姿を長く見ていたい。
ヒューエット選手ともこれからまだまだ戦うんだろう。でも、今回の試合はベストマッチの数本に入るだろうし、競技人生を振り返る日が来た時に「パリパラの決勝」は外せない試合になるだろう。
そんな試合をリアルタイムで目撃して、あれこれ感じられたことは、わたしの今年の十大トピックにきっと入る。そんな素敵な試合を見せてくれて、本当にありがとう。