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映画感想文「ブルックリンでオペラを」唐突な展開が最後に大円団を迎える、正にオペラで心地よい

なんてチャーミングな映画なんだ。

こういうの、めちゃくちゃ好き。唐突な展開だが最後に全てが集約されてうまくまとまっていくところ、正にオペラ的だ。

NYのブルックリンに住むセレブカップル、精神科医のパトリシア(アン・ハサウェイ)とオペラ作曲家のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)。

平穏に暮らしているが、それぞれ悩みを抱えていた。

スティーブンは5年間も新曲を書くことができず、長い大スランプに陥っている。毎日家で悶々としていたが、ある日、妻のパトリシアに励まされ出かけた散歩でカトリーヌ(マリサ・トメイ)と出会う。ギクシャクした始まりであったが、不意に訪れた彼女との出逢いにより、やがてスランプから抜け出していく。

一方で、妻のパトリシアにも人知れず抱えている悩みがあった。

大人達のドタバタに、夫妻の高校生の息子ジュリアン(エバン・エリソン)とテレザ(ハーロウ・ジェーン)の恋模様も絡んだ群像劇。

それぞれが悩みながらも前を向き自分の気持ちに正直に果敢に進む様子に励まされる。

分別ある大人が怯えながらも自らの心に従い一歩踏み出す様もよし。また大人に待ったをかけられた若者2人が、きっぱりと自分達の道を選んでいく様も瑞々しい。このフレッシュさが物語を更に印象付けている。

欲を言えばパトリシアをもう少し掘り下げて描いて欲しかった。そしたらもっと深みを増すお話になったはずだ。が、主人公は夫のスティーブンなのでやむなしか。

監督は劇作家アーサー・ミラーの娘、レベッカ・ミラー。なるほど、そっか、やっぱりねと納得。ひねりある展開はなんだか演劇っぽい。

疲れた心に染み入る大人のおとぎ話である。

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