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映画感想文「あまろっく」ベタだが配役の勝利。ほろりとさせる、尼崎の家族の物語

結末見える、ベタベタなストーリー。

しかも舞台は兵庫県尼崎市。苦手な関西もの。

途中で眠くなるかも、と危惧したが、なんと最後まで飽きなかった。そして不覚にもほろりとさせられた。これは江口のりこの演技のおかげ。やっぱりうまい。

小さい頃から頑張り屋。融通の効かない真面目女子の優子(江口のりこ)。成績優秀だが、クラスメイトからは煙たがられてる。長じても会社で優秀な社員である証の全社表彰を受ける。一方で、同僚の誰からもランチにも誘われず人望がない。

そんな39歳の女性の頑なさと生真面目さをリアリティを持って演じてる。基本的にはすごく嫌なやつだ。それでも彼女の背景が見えるため、ところどころで共感し、彼女の肩を持ちたくなる。

これは他の人が演じたらもっと絵空事に見えてしまい、しらける感じになっただろう。この役に見事に体温を宿らせるのは、江口のりこにしかできない芸当である。

そして個性的でいい味を出すが、その個性が強すぎるが故に時に作品の邪魔をしてしまう笑福亭鶴瓶。彼が彼女の父親役を演じているが、出ずっぱりではなく、ピンポイントでうまく彼を使ってるのもバランスが良い。

また、意外な拾い物は優子のお見合い相手を演じた、中林大樹。全くノーマークであったが、とても良かった。

仕事一筋で女心の機微わからない、でもチャーミングな商社マン役。2枚目なんだがカッコ良すぎず。ちょっと抜けてて、不器用で。でも人の気持ちを理解しようと、寄り添える誠実な男。

絶妙な役を、この人しか演じられないのではないかと思うくらいぴったりに表現していた。

いそうでいないゾーン。古くは石黒賢とか、そんな感じか。

中条あやみも頑張っていた。美しいのは言わずもなが、フレッシュで元気。少し大味だが、ともかく彼女がスクリーンに登場すると華やかになる。それも才能。また地元関西弁が板についてるのも買いである。

ということで、ストーリーはベタであるが、配役の勝利。なかなか楽しめた。

タイトルにもなってる「尼ロック」は、海抜0メートル以下の尼崎を水害から守る実在する閘門のこと。これとの絡め方もうまい。

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