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映画感想文「ティル」自覚なき差別は今もある、忘れてはいけない事件の映画化

信じられない。

わずか数十年前に実際に起きた事件だなんて。

エメット・ティル事件。

1955年、アメリカシカゴ。夫が戦死し、女手ひとつで息子を育てていたメイミー(ダニエル・デッドワイラー)。

その息子は、14歳になったある日、ミシシッピーの親戚の家を訪ねる。都会のシカゴと異なり当時の南部では黒人と白人の境界線がはっきりと引かれていた。

そこで白人女性に賞賛の意味で口笛を吹いた息子は白人達の怒りを買ってしまう。そして公然の侮辱ととった白人達により、目玉を抉り出され身体中にリンチを受け、殺害され川に捨てられる。

数日後。身体中に傷を受けボロボロになり変わり果てた姿で発見された息子。

その姿を晒すことを決意したメイミーは、棺の蓋を開けたまま葬儀を行い、無惨な姿を記者に撮影させる。

その写真は全米を駆け巡り、のちに公民権運動に繋がっていく。

1人の母の怒りが世界を変えた事件。

無知なことに、映画を見るまで全く知らなかった。しかしアメリカでは彼の事件が歌になったり絵になったりしているらしい。

それくらい象徴的な事件だということだろう。

本作では、残虐な姿は映像には現れず、そこは良かった(正直惨すぎて静止できないと思うから)。それでも充分に惨さは伝わった。

あり得ない事件だと思う。そして、あらゆる差別が世の中から無くなればいいのに。と心から願う。

しかし、ふと、もしかしたら、自分の中にも無意識にあるかもしれない差別について考える。自覚なき差別はどこにでも潜んでいるはずである。自分自身も含め、常に懐疑的でいたい。

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