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映画感想文「ビヨンド・ユートピア 脱北」目を逸らしてはいけない渾身のドキュメンタリー

ひたすら恐ろしく、震えた。現代に起きていることと思えぬ。

北朝鮮のとんでもない話は、拉致された人もいる日本人には身近だ。それでもどこか遠い国の出来事のように感じてた。でもこの映画のリアルさに、冷水を浴びせられた。

脱北する2家族に密着したドキュメンタリー映画である。

まずは家族5人連れのロー一家。80歳の老母と幼い子供2人を連れた夫婦。兄が先に脱北したため、粛清を恐れ、残された家族もやむなく脱北を決意する。

脱北者を出した家族は処刑されるか、一生の強制収容所暮らしになるという。

また脱北は、北朝鮮を出れば助かるのかと思いきや、違う。韓国との国境には地雷が埋められており通ることができない。

よって中国やラオスなど周辺の国々から抜け出さねばならない。しかし、北朝鮮に好意的な国もある。これらの国で見つかれば強制送還されてしまうという。もちろん、国に戻されれば、待ち受けるのは拷問か死である。

ここでブローカーを束ね指揮を取るのは韓国人のキム牧師だ。いままで1000名を超える人たちの脱北者を助けてきたという。自分自身も現地に出向き深夜の山超えなど危ない目にも身を晒す。

もうひと家族は母が先に脱北。10年会っていない一人息子を呼び寄せるケース。残っても地獄、脱北を試みても地獄。な中で、息子の脱北は成功するのか。

何が恐ろしいって、国を捨てるくらい悲惨な目にあっているのに、脱北の途中でも彼らが金正恩を褒めちぎることだ。

恐ろしや。思想教育とはここまで身にこびりついてしまうものなのか。それが最も怖かったかもしれない。

また北朝鮮の過去からの歴史を振り返って語っているのが良い。改めて日本が統治していたことを振り返り、そこからこの悲惨な現実は始まってるように思え胸が痛んだ。

再現ビデオを使っておらず、全て実際の撮影。見応えあり考えさせられる。決してスルーしてはいけない現実を突きつけられた。多くの人に見てほしい秀逸なドキュメンタリー映画である。

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