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映画感想文「オッペンハイマー」原爆を作った男の苦悩の戦後が切ないヒューマンストーリー

広島と長崎の原爆投下。

小学校の教科書にも出てきた。いかに悲惨なことが起きたのか、何度も習った。

よって、日本人にとってタブーな感じがある原爆。

公開も危ぶまれた作品である。やっと映画館で観ることが出来た。

結論から言うと、かなり良かった。原爆どうこうというより、ひとりの研究者の生き様を描いたヒューマンストーリーであり、その苦悩が心に響いた。

才気走る、若き物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。

まだ未開拓の分野であった理論物理学の先駆者。博士号取得後にわずか30歳そこそこで大学で教授になり、興味深い授業で生徒を魅了。次々と新しい研究を成功させ、飛ぶ鳥を落とす勢い。

やがて始まった第二次世界大戦。政府主導の核爆弾開発の「マンハッタン計画」に加わる。

知的好奇心から研究に没頭。リーダーとして多くの研究者を牽引し、驚くべき指導力で計画を成功に導く。

そして、日本に投下される原爆。

そのあまりの威力に言葉を失う。そして彼に訪れる苦悩の日々。自らの血塗られた両手を前に茫然自失に追い詰められていく。

次に政府の手がけた水爆。原爆の後悔がそうさせたのか、これには反対の姿勢をとる。加えて赤狩りの時代に、理想化主義の弟や妻の共産主義活動。これらにより、段々と政府の心象を害し、はじに追いやられていく。

政府の一大事業、原爆の功労者にも関わらず、戦後の彼の人生は不遇である。それが、なにしろやりきれない。

そして戦後20年。たった62歳で亡くなった。

最後の時には、心の平穏は訪れたのだろうか。自分のしたことに疑問を持ち、苦悩したであろう人生。それを思うと限りなく切ない。

ひたすらヒューマンストーリーなので、主義主張さておき、人間ドラマ好きにはおすすめ。

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